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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
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024

 まるで忍者だ。

 

 

 去ったフィーにそんなことを思うも、すぐにアンジェのことを思い出し僕はアンジェの方を見た。

 

 アンジェ……。


 アンジェはフィーは消えた方向をジッと睨んでいる。

 フィーが去った後でもアンジェの呪いは消えていない。

 いや、消えるはずがないのだ。フィーをその手で殺すまで。

 

 だから――思いが吹き荒れる。アンジェを起点につむじ風のごとく紅い想いは荒れ吹き、僕はその勢いで飛ばされそうになり一瞬目を離した瞬間、アンジェの姿も消えていた。

 

 

「アンジェ!」



 くっそ、こんな時に――!

 

 

 声をかけて止める余裕もなかった、ほんの一瞬目を離した瞬間に。多分――フィーを追ってしまったんだろう。ただ、殺すために。

 

 行先はフィーのところ、街の方へ行ったのは分かっている。けれどまだ森の結界は消えていない。

 ここに来る際もよく分からない道順で右へ行ったり左に行ったりした。

 

 きっとアンジェならこの森から抜け出す道は分かるのだろう。けど、僕には分からない。

 追おうにも道が分からなければ……。

 

 突然の緊急事態だろうが、アンジェは関係ない。お構いなし。けれど僕の嫌な予感では街は多分……。

 

 

 ………。

 

 

 どうしたらいいなんて分かってる。

 

 

 こんなやばい状況なのに意地なんか張っている場合じゃない!!

 すべては直感的な予測に過ぎない。それでも恐怖を感じる。

 そう――この時僕は初めてここに来て恐怖をした。

 

 もしかしたらこれが僕のトラウマなのかもしれない。

 

 アンジェが男の兵士を恐れるのと同じように。なぜか酷く、僕は自分の酷い予想が当たってしまうのが怖く感じる。

 

 

 怖いんだ。

 

 

 また、あの砦の時のようにアンジェがみんな殺してしまったら、そう思うと。

 

 そう思うと怖い。

 

 今の今まですべて自分の手でアンジェの為に尽くそうとした。全部自分でできると思ったからだ。その余裕があったからだ。

 けど――できないと感じると途端に怖くなる。

 

 

 僕は勢いよく振り返る。

 奇怪な笑みを浮かべ、僕を見るミレアへ向けて。


 

「ミレア!!」



 僕の自己満足もここまでだ。

 

 本当にアンジェを助けたいなら誰にも何にも頼りたくなかった。増してやこんな疫病神に。いい加減支離滅裂なんてやめよう。

 

 たった一つ。ずっと想ってきたことは一つだろうに。

 怖いからずっと意地を張っていた。怖がらないために。

 

 

「…………」

 

 

「少年」



 間を置くように止まった僕に、笑わらない笑みを浮かべながら、ミレアが問う。

 

 

 ……考えがまとまらない。

 

 

 いや、もういい加減に一つにまとめよう。

 

 

 「このっ――」

 

 

 僕は右腕で自分の頭をコついた。

 鈍い、震動が僕の頭を伝う。

 

 

 ――決めた思いはなんだ?

 それはアンジェの為に。

 

 ――想うのはなんだ?

 アンジェへ愛しさ。

 

 ――願うのはなんだ?

 平和と二人での幸せ。

 

 

 いや――アンジェを救う力。

 

 

 ならば、答えは出ているだろう。

 意地を張るな、気張るな、何スカしてるんだ。僕はそんなキャラじゃないだろう?

 もっと真面目に、もっと正しく。

 僕の今の正しさは一般で言う善じゃない。悪だ。なら――一度やったんだからできるはずだ。

 恐怖は怒りに、戸惑と困惑は勇気にして。

 


 ミレアへと僕は近づく。


 

 ――これは正しい事だ!

 

 

「ミレア、アンジェはどこに行った!」


 右腕でミレアの胸ぐらを掴み上げ、僕は女神を再び脅迫した。

 

 

「きゃはは」



 僕に胸ぐらを掴み上げられたミレアは笑い声を上げる。

 そのミレアを僕はつッとばし離す。

 

「こりゃ驚いたわ。きゃはは」



 言葉とは裏腹に、どこも驚いている様子なんて見せていない。

 

 

「きゃはは――さっきまで無茶苦茶なことばかりしていたのに、こんなタイミングで思い切るなんて……。これだから少年は愚か……。でも――幾分かマシにな面構えになったじゃない。きゃはは――」



 きゃはは。

 きゃははは。目の笑わない女神は壊れた機械ののように楽しそうに笑う。

 

 

 だから、怖いんだよその笑い方。

 だいたい、こんなことする僕の顔なんてマシなもんか。

 間違いなく酷い顔をしている。

 

「あっちよ。きゃはは――」



 笑ったまま言って指だけをフィーの消えた森の方を指さし、ミレアは水になり僕の右眼へと戻った。

 

 

(さあて――愚かな少年。その思い切りに免じて誘導してあげるわ)


 ミレアの声が僕の頭に響き。僕は走り出しだす。

 

 

 もう――一つに想いも気持ちもまとめた。

 なんでも利用する。何でもする。アンジェの為ならば……意地なんてはらない。僕は僕だけの(せいぎ)なれ。

 目の前にある力は酷使しろ。

 

 そうまとめ、僕はただ、走り続ける。


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