019
なんだって言うんだ……どうして、この女神はこうやって僕たちの不幸を喜ぶのか。
どうして、この世界は僕たちをこんなに貶めようとするのか……。
ああ……。
――僕は、なんで何もできなんだ!
自分の無力さが悔しい、悲劇的な現実が虚しい、可能であるならば、この真実を捻じ曲げてやりたい……。そう願えども、何もできない。
何故なら、
「――事実よ」
ミレアがその事実を告げたからだ。
決定的な、肯定。
この場で最も、確証に迫った者の答え。
神が語る――それは、間違えようのない事実であることを示す。
僕は……。
僕は歯を食いしばり、ミレアへの憎しみを押し殺す。
なんで、今それを言う、どうしてそんなこと……。アンジェを悲しませるようなこと……。
ミレアの答えにアンジェはピクリと反応して、
ほら――歪んだアンジェの顔がもっと崩れていくじゃないか……。
やめてくれ……やめてくれよ……そんな顔……。
「うそ……」
「ホントだよ?」
この期に及んで、フィーは何食わぬ顔で言ってくれる。何も感じないのだろうか。目の前で泣いている女の子を前にして、そんなことをいうのは。
きっと、フィーにとっては軽く返事をしただけのつもりだったんだろう。
けれども、アンジェを狂わせるにはそれで十分だった。
十分すぎるほどに、残酷な事実だった。
「うそ………うそだああああああああああああああ」
アンジェの纏う想いは最大限まで引き出され、紅い魔力がにじみ出る、まるで何かが、爆発したかのように、叫びと共にソレは突然大きくなり紅いオーラは噴き出て、
瞬間――姿をスッっと衝撃と共に消した!
そして――
「――おっと!?」
ガキンッ――!!
ナイフとナイフがぶつかり合う音が響く。
瞬間的に姿をフィーの目の前で表し、アンジェはナイフをフィーへと突き入れそれをフィーが受けて止めていた。
ことは秒をも下回る。コンマの世界、いや――もしかしたらそれ以下かなのかもしれない。
それほどまでにアンジェは早い。
なんども、なんども姿を消しは荒らしナイフをフィーへと斬りこむ。そのたびにフィーに弾かれては姿を消す。
常人では目で追うことはできない、物理限界を圧倒的に超えた速度でそれは繰り返された。
「アンジェ……!」
胸を凍らされ手当て中の僕は、目の前のやり取りにようやく声を出すことができた。
重苦しかった、あの緊張はは消えている。
アンジェを止めないと。
そう思い、動こうとする。
とっ――それをミレアは止めた。
凍った僕の胸を抱き着くように抑える手に力をこめ、僕を引き留めた。
「ミレア?」
「――きゃはは。少年が行ってどうするの?アナタは何もできない。アナタはさっき何も言えなかったじゃないの。それに――アナタじゃあの中かに入れりこめないでしょう?」




