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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
79/175

019

 なんだって言うんだ……どうして、この女神はこうやって僕たちの不幸を喜ぶのか。

 どうして、この世界は僕たちをこんなに貶めようとするのか……。

 

 ああ……。

 

 ――僕は、なんで何もできなんだ!

 

 自分の無力さが悔しい、悲劇的な現実が虚しい、可能であるならば、この真実を捻じ曲げてやりたい……。そう願えども、何もできない。

 

 何故なら、

 

「――事実よ」


 ミレアがその事実を告げたからだ。

 

 決定的な、肯定。

 

 この場で最も、確証に迫った者の答え。

 神が語る――それは、間違えようのない事実であることを示す。

 

 僕は……。

 

 僕は歯を食いしばり、ミレアへの憎しみを押し殺す。

 なんで、今それを言う、どうしてそんなこと……。アンジェを悲しませるようなこと……。

 

 ミレアの答えにアンジェはピクリと反応して、

 

 ほら――歪んだアンジェの顔がもっと崩れていくじゃないか……。

 

 やめてくれ……やめてくれよ……そんな顔……。

 

「うそ……」


「ホントだよ?」


 この期に及んで、フィーは何食わぬ顔で言ってくれる。何も感じないのだろうか。目の前で泣いている女の子を前にして、そんなことをいうのは。

 

 きっと、フィーにとっては軽く返事をしただけのつもりだったんだろう。

 

 けれども、アンジェを狂わせるにはそれで十分だった。

 

 十分すぎるほどに、残酷な事実だった。

 

「うそ………うそだああああああああああああああ」


 アンジェの纏う想いは最大限まで引き出され、紅い魔力がにじみ出る、まるで何かが、爆発したかのように、叫びと共にソレは突然大きくなり紅いオーラは噴き出て、

 瞬間――姿をスッっと衝撃と共に消した!

 

 そして――

 

「――おっと!?」


 ガキンッ――!!

 

 ナイフとナイフがぶつかり合う音が響く。

 

 瞬間的に姿をフィーの目の前で表し、アンジェはナイフをフィーへと突き入れそれをフィーが受けて止めていた。

 ことは秒をも下回る。コンマの世界、いや――もしかしたらそれ以下かなのかもしれない。

 

 それほどまでにアンジェは早い。

 

 なんども、なんども姿を消しは荒らしナイフをフィーへと斬りこむ。そのたびにフィーに弾かれては姿を消す。

 

 常人では目で追うことはできない、物理限界を圧倒的に超えた速度でそれは繰り返された。

 

「アンジェ……!」


 胸を凍らされ手当て中の僕は、目の前のやり取りにようやく声を出すことができた。

 重苦しかった、あの緊張はは消えている。


 アンジェを止めないと。

 

 そう思い、動こうとする。


 とっ――それをミレアは止めた。

 凍った僕の胸を抱き着くように抑える手に力をこめ、僕を引き留めた。


「ミレア?」


「――きゃはは。少年が行ってどうするの?アナタは何もできない。アナタはさっき何も言えなかったじゃないの。それに――アナタじゃあの中かに入れりこめないでしょう?」



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