018
挑発する可能ように薄い笑みを浮かべ、フィーは最後にそうつけ足し、告げた。
アンジェ……。
「うそ……」
「嘘じゃないよ。あいつをやったのは間違いなくフィー。でも――その反応だとアンジェちゃんの探してるお母さんって、本当にローゼリアだったんだね。確証はなかったけど……持っているナイフにそのペンダント。それは紛れもないあいつのものだった。世界に二つとない魔晶石に、ティーソナーの刃の欠片で作られたナイフ。それはフィーとあいつしか持っていないはずのもの。それに――フィーと似た見た目。マコトさんはなんでか知らないけど、あの様子だと知っていた見たいだけど……。まさか――あのローゼリアに子供が居たなんて思いもよらなかったよ」
淡々と、ただ真実を告げるフィー。
そうだ、間違いはない。
間違いない。そう――僕もクレリアさんから訊から。なによりも、それを女神であるラナが太鼓判を押した。その上、今僕の後ろで楽し気に、きゃははと笑うミレアは、この局面を今までずっと待っていたかのように楽しんでいる。
その彼女もまた、そうと言っていた。気分やでよく分からないミレアでさえ、その真実を認めていた。
だから、僕は確信をしていたし、だからこそ――止めようとした。
「うそ……ですよね……」
「嘘じゃないよ。なんにも知らないんだね。まあ――フィーもアンジェちゃんのこと昨日まで知らなかったけど」
やめろ……。
「にしても……。なんの因果だろうね、こんなところでたまたま出会うなんて」
やめろ……。
「おにいさん……」
恐る恐る僕の方へ振り帰り問うアンジェ。
まるで、嘘と言ってほしそうな、僕に救いを求めるように、こわばった声で。
いや、嘘と言ってほしいのだろう。ああ――言えることなら、僕だって言いたいけれど。
「嘘ですよね?おにいさん……」
「フィーは嘘ついてないんだけどなぁ」
やめろ……。
「おにいさん……」
ああ……くそう……。
僕はアンジェに声をかけることができなかった。
泣き出しそうなその顔を見て、僕は何も言うことも……。
アンジェの顔がゆっくりと、ゆっくりと崩れていく。
そうして……。
「……おにいさん!」
叫んだ。涙を流し、僕へ向けて、僕に否定してほしくて……。
どうして僕は言ってあげられない?ただ一言、フィーの言っていることは嘘だと、僕が嘘をつけばいいだけの話なのに。そうすればアンジェはきっと僕のことを信じる。
真実がどうであろうと、目を背け、僕のことを信じる。
けれど……。
僕はアンジェの為に、何でもするんじゃなかったのか?
アンジェに憎まれてもいいそう、思ったんじゃないのか?
これは……。
また、僕の……。
僕の偽善なのか?
「きゃはは――」
戸惑う僕の傷を治しながら、ミレアが不意に笑い声を上げた。
楽しそうだ。これでもかってほどの楽しそうだ。
目の前で、驚愕し、悲しむアンジェをみてはこいつは楽しんでいる。




