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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
78/175

018

 挑発する可能ように薄い笑みを浮かべ、フィーは最後にそうつけ足し、告げた。

 

 アンジェ……。

 

「うそ……」


「嘘じゃないよ。あいつをやったのは間違いなくフィー。でも――その反応だとアンジェちゃんの探してるお母さんって、本当にローゼリアだったんだね。確証はなかったけど……持っているナイフにそのペンダント。それは紛れもないあいつのものだった。世界に二つとない魔晶石に、ティーソナーの刃の欠片で作られたナイフ。それはフィーとあいつしか持っていないはずのもの。それに――フィーと似た見た目。マコトさんはなんでか知らないけど、あの様子だと知っていた見たいだけど……。まさか――あのローゼリアに子供が居たなんて思いもよらなかったよ」


 淡々と、ただ真実を告げるフィー。

 

 そうだ、間違いはない。

 

 間違いない。そう――僕もクレリアさんから訊から。なによりも、それを女神であるラナが太鼓判を押した。その上、今僕の後ろで楽し気に、きゃははと笑うミレアは、この局面を今までずっと待っていたかのように楽しんでいる。

 その彼女もまた、そうと言っていた。気分やでよく分からないミレアでさえ、その真実を認めていた。

 

 だから、僕は確信をしていたし、だからこそ――止めようとした。

 

「うそ……ですよね……」

 

「嘘じゃないよ。なんにも知らないんだね。まあ――フィーもアンジェちゃんのこと昨日まで知らなかったけど」

 

 やめろ……。


「にしても……。なんの因果だろうね、こんなところでたまたま出会うなんて」


 やめろ……。


「おにいさん……」


 恐る恐る僕の方へ振り帰り問うアンジェ。

 

 まるで、嘘と言ってほしそうな、僕に救いを求めるように、こわばった声で。

 

 いや、嘘と言ってほしいのだろう。ああ――言えることなら、僕だって言いたいけれど。

 

「嘘ですよね?おにいさん……」

 

「フィーは嘘ついてないんだけどなぁ」


 やめろ……。

 

「おにいさん……」


 ああ……くそう……。

 

 僕はアンジェに声をかけることができなかった。

 泣き出しそうなその顔を見て、僕は何も言うことも……。

 

 アンジェの顔がゆっくりと、ゆっくりと崩れていく。

 

 そうして……。

 

「……おにいさん!」



 叫んだ。涙を流し、僕へ向けて、僕に否定してほしくて……。

 

 どうして僕は言ってあげられない?ただ一言、フィーの言っていることは嘘だと、僕が嘘をつけばいいだけの話なのに。そうすればアンジェはきっと僕のことを信じる。

 真実がどうであろうと、目を背け、僕のことを信じる。

 けれど……。

 

 僕はアンジェの為に、何でもするんじゃなかったのか?

 アンジェに憎まれてもいいそう、思ったんじゃないのか?

 これは……。

 

 また、僕の……。

 

 僕の偽善なのか?

 

「きゃはは――」


 戸惑う僕の傷を治しながら、ミレアが不意に笑い声を上げた。

 

 楽しそうだ。これでもかってほどの楽しそうだ。

 

 目の前で、驚愕し、悲しむアンジェをみてはこいつは楽しんでいる。

 

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