表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
77/175

017

 銃を向けている手とは別、左手で後ろ腰からフィーは何かを抜き取る。

 

 そうして、その抜いたもの襲い掛かった僕の胸へと突き刺したのだった。


 身長の位置からちょど僕の胸当たり、そこにサファイヤの刃が刺さった。

 

 そして――それを素早き抜くと、フィは僕の胸へと蹴りを大きく入れ、僕の体は宙に舞い、ミレアの前へと仰向けに転がった。

 

 っ―――!

 

 刺された痛みと、蹴られた痛みで僕は顔を歪めながら、天を見る。

 

 きゃはは――そんな笑い声と共に、あの奇妙な笑わない笑顔で僕をミレアは見下ろしていた。

 

 くそっ……。やっぱり僕じゃなにも……。

 

 己が無力さを呪う。

 小さな女の子相手でさえ、僕は何も止めることはできない。

 

 こんなことで、アンジェの為に生きるなんて……。

 

「おにいさん!――どうして!どうして?フィーちゃん!」


 胸を突かれ、吹き飛んだ僕を見てアンジェはナイフを構え直してフィーへと向き直る。

 真剣に、許せないという表情で。

 

 ダメだ……。このままだとまたアンジェの呪いが……。

 

 呪いが発動し、暴走をする。

 

 できる事なら、アンジェが友達と思ったフィーとは戦わせたくない。殺し合いなんてしてほしくない。

 

 必死に立ち上がろうと、傷の痛みに耐える。

 傷なんてすぐに治ると……。

 

「――なんで……?」


 立ち上がり、見下ろした胸は傷は治っていなかった。

 赤く染まるワイシャツ。そこから血はにじみ出ている。

 

 痛みも引かない。

 僕の体は、自動的に傷が癒えるのよになっている。それはミレアの加護であり呪い。だからこうして刺されたりしても大丈夫な羽津だが。それなのに、治らない。治っていない。

 

 っと――よろりとふらつき、後ろにいたミレアに持たれかかり抑えられる。

 

「きゃはは――ああ。ダメよあのナイフは」


 ナイフ?

 

 言いながら、僕の傷口を凍らして塞ぐミレアの言葉にフィーの左てに持つナイフを見た。

 

 サファイヤの宝石でできたかの刃。金色の柄。そこには見えないが、何か文様が刻まれている。そんなフィーの小さな手には余る大きさのナイフ。

 まるで――

 

「アンジェのナイフと同じ……」


 僕が答えを出す前に、アンジェが告げた。

 

 そう、それはまさしくアンジェのナイフと同じだ。形大きさ。刃の色はアンジェはルビー。フィーはサファイヤとことなるが、その二つは全く同じものと言っていい。

 

 なによりも、その効果さえも同じ。

 

 アンジェが砦で、暴走し僕を殺そうとしたその時、僕はアンジェのナイフに刺された。その時も今みたいに傷がすぐには癒えず、ミレアの直接の処置によって回復した。

 僕だけの回復力では回復でできなかった。

 それが、今こうして同じように起きている。

 

 だからこそ分かる。フィーのナイフとアンジェのナイフは同じものだと……。

 

「なんで!どうして?――アンジェと似てて!アンジェと同じナイフ持ってて!フィーちゃんなんなの!?」


 僕がやられたことによって、動揺も最大へと達し、錯乱をすら始めたアンジェは叫ぶ。

 

 当たり前だ。自分と瓜二つな上に同じナイフを持っている。そんなものが目の前に居るのだから。まともでは居られるわけがない

 

 他に共通点を上げるなら妖精や妖精と話せるのも同じだ。

 

 まるでドッペルゲンガー。

 

 だからこそ、困惑している。アンジェ――にはなにが何なのか分からないから。

 

「なんでって――そっか、知らないんだ。このナイフのこともフィーのことも。薔薇のことも。妖精のことも。お母さんのことも」


「えっ……?」


 お母さん。その言葉を訊いた瞬間。アンジェから闘志や錯乱のようなモノは消え、静止したように感じる。

 

 ダメだ――アンジェ……。

 

 このことをキミは訊くべきではない。

 

 訊いてしまったら、きっとキミは……。

 

「やめろおおおおおおおお!」


 痛みに耐えながら、ミレアに抑えられながら叫ぶ。

 いけないと!

 アンジェが悲しむ様子何て見たくない。

 何故なら――

 

 フィーが笑みを浮かべ、

 

 何故なら――。

 

「フィーの名前はフィーナ・フェアリーライフ。最愛なるマスターの赤薔薇の守護者。最初の契約者にして妖精の王。――それと、魔王に付いたバカ姉、ローゼリア・フェアリーライフを殺したのはフィーだよ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ