014
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結論から言うと、僕は必要な情報は殆ど詳しくは訊けなかった。
フィーとアンジェがお風呂に入っている短い間というのもあったし、何よりも、僕とアンジェが砦に居て何があったのから説明を始めた。
僕はそういう説明は得意ではなかったので、意外と細部までクレリアさんには訊かれたため、殆どそれに時間を要してしまった。まあ――国を王であるクレリアさんだからこそ、砦の件は見過ごすことはできなかっただろうし、僕もあの砦の事を話したかったというのも少しあった。
なにも自慢ではない。それたただ――僕とアンジェがあそこで何をされたのか、どんな思いをしたのか、一種の憐れみをかけて欲しかったのかもしれない。
だからこそ、訊かれれば答えらずにはいられなかった。
まあ――、あの砦の一件が無駄ではなかった。そうなって欲し。
悲劇的で、過激的で、絶望的。そんな出来事を僕はただの不幸で終わらせたくなかったんだろう……。
それで――その砦の話を深くまで話していたら、結構な時間、話こんでしまった。
それでも、訊きたいことと言うよりは、重大な事を僕はクレリアさん達から訊くことできた。
それは――女神について。
この世界の女神は、元々七人の女神は各国に仕え守護してたと言う、それがちょうど300年ほど前。所謂、魔王が倒されるまでのことだ。
勇者は魔王を倒す際、その女神の力を借りていたらしい。全員ではないが複数人。正確には魔王も女神の力を借りていた。こう説明すると話がややこしいくなるが、魔王はもとより魔王ではなかったらしい。
300年前の魔王は所謂、勇者でもある。どういうことかというと、いってしまえば、魔王と勇者の戦いは国盗り。国同士の争いだった。勇者の有する国と、魔王の有する国、そのどちらが世界を取るかの戦いだった。
魔王が魔王と言われるゆえんは、なにも邪悪な魔物とか、悪魔の力を使っていた、人間じゃないとか、そういった類のものではなかった。
なぜなら――勇者も魔王も、女神の力を集めそれを使い戦っていたのだから……。
ただ、一つ魔王が魔王と呼ばれる理由となったこことすれば。先に世界へ攻撃を仕掛けたのは彼らであり、勇者がそれに立ち向かって勝利したに過ぎない。
それが――300年後に口伝えで伝わり僕が呼んだ童話の本みたいになっているのだという。
ハッキリ言って、どう考えても違和感のある改変だ。丸ごと実際に起きた事とは異なる程に改変が加えられてしまっている。それがなに者の手によってされているのかはさておき、その戦いの際、使われた女神の力は絶対無二の最強の力といってもおかしくなかった。
だからこそ、勇者はその危険な力をもう二度と個人の手に渡らないようにと女神たちを封じた。
世界の外、この世界を守るフィルターなる異界部分へと。
それは――女神たちの同意の元行われたことで、各国は勿論、世界は丸く収まっているのだという。
これが、ミレア達女神が封印されていたという理由と、300年前の勇者の話だそうだ。細かい部分まで訊きたかったが、当事者であるクレリアさんであっても、女神が封じられて世界に革命が起きた際に、世界その物に記憶操作なるものがされているため、全てを思い出して完全には語れないという。
それとは別に、とうの女神二人はこの件に関しは口を割らなかった。ラナ曰く――そういうルールだという。
だから答えられない。それだけを僕は訊かされた。
では、何故その封じられた女神たちは今こうして、僕の目の前に居るのかと言うと、それも同様。答えなかった。これはラナ曰く、言えば怒られるから――大好きなあの子をまだ傷つけたくないといってこたなかった。
ちなみに、あの子と言うのは勇者のことらしい。どうも、300年前、勇者側についていた女神は勇者にご執心のことらしい。
ミレアはどうなのだろうか?――彼女は最後まで、きゃはは――そう笑うだけであって質問には何一つ答えなかった。
まあ、いずれにしてもミレアの今の目的は僕に悪い事をさせること。それだけは、気味の悪いあの笑いと共に一言だけ言ってくた。
それと、訊けたことをはもう一つ……。
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僕は夜明け前の薄暗い時間に、蒼白く光るアゲハ蝶のような蝶の光で目が覚めた。そして、その蝶はヒラヒラと舞い僕を誘導する。きて……。そんな脳にささやく声につられ、寝ているアンジェを胸の上からそっと降ろし、着替え城を抜け出していた。
話の後、戻ってきたアンジェ達を加え食事を用意された。その食事はまるで旅館で食べる豪勢な物の様で、何よりも驚いたのは米が出た事だった。
まさか、異世界にきて米が食えるなんて思わなかったし。僕も日本人うが故に、ご飯が恋しかった。それはなんというか、食べたいものを食べることができて、満足できた気分だった。
そしてその夕食後、僕はお風呂に入りアンジェと共に就寝。
そして今に至る。
木の国の外は、実際に歩くと江戸時代もしくはそれより少しの先の時代背景の街並みと言うのがよく分かった。崖と森に囲まれた都。ここが、あのエルフの街だというのだから、異世界であるというのがなおさら信じられない感じだった。
その街並みを見ながら、僕は蝶に導かれるまま、崖を上がる木製のエレベータで崖を上がり迷いの森へ再び入った。
そうして――僕は、たどり着いた。
大樹の根元に広がる小さな湖、そこは二つある月の光の入る場所で、透明な水が光を反射していた。そして、そこは僕を導いた蝶と同じ蝶が何匹も、地面や木の枝を埋め尽くすように止まっており、まるで蒼く輝く雪原のようになっている。
その――神秘的な世界の中に、彼女は、湖の前に立ち蝶を右手の指さきに止め微笑んでいた。
僕を導いたいた蝶が彼女のところへと飛び、そして手に止まる。
それにより、僕が訪れたことに彼女は気づく。
「遅かったね」
「フィー……」
僕の方を振り向いた彼女は、笑みのままそう呟いた。