013
なにする気なんでしょうか?
「ドーン!」
「ひゃ!?」
突然お湯を溜めた桶を振るい、フィーちゃんはぶっかけ来ました。
「何するんですか!」
お湯を頭から受け、くせ毛だったフワッとした髪はがしなッとして、全身びっしょりに湿ったアンジェは叫びます。
「アハハ――ッ」
このっ!なんだかムカつきました。
アンジェもお湯を溜め、ブンと桶を振りフィーちゃんはへとぶっかけてります。
バシャりと笑うフィーちゃんの顔面に、お湯が降りかかり、笑っていたフィーちゃんも、ひゃっと声出し身をかがめました。そして、楽しそうに笑うのです。
「楽しいね!」
笑いながら、本当に楽しそうに言うフィーちゃん。
なんだか、こうまで素直に楽しんでいるフィーちゃんになんだかムカつきます。
「むう――アンジェは楽しくないです!」
「まあまあ」
「もう――」
膨れるアンジェに、フィーちゃんが抱き着きます。アハハと楽しそうに、なんだか、それに怒っているこっちですら楽しくなるみたいに。
そうして、ふと目の前の鏡を見るのです。映るのはアンジェとフィーちゃん。まるで瓜二つの顔がそこにはありました。最初に会った時に思っていましたが、似ています。髪と服装が違ったのでそう見えるだけかと思ってもいましたが、こうして、結った髪を解き、お互いにお湯を被って濡れると、よく分かります。同じなのです。雰囲気はもちろん違います。ですが――あの、殺人衝動みたいな、アンジェの中のもう一人の自分が、今ここにいるような感じです。それが、なんだか怖くも感じました。
「どったの?」
鏡をじっと見つめていたアンジェに、抱き着いたままのフィーちゃんが言いました。
言って。似てるねっと笑いかけています。
不安も吹きとばすぐらいの笑顔。なんだか、こんなに似てるなんて、
「フィーちゃんがお姉さんみたいです」
そんな感じがしました。
「ん~。フィーはお姉さんより、妹が良いなぁ」
なんだか複雑そうな顔をして、アンジェから離れます。
「なんでですか?」
なんか、気に障るような事を言ったのでしょうか?なんだか嫌がってる感じはないようでしたが、ちょっとフィーちゃんのテンションが下がった気がします。
離れ、隣に座りお湯を出し、石鹸を取り始めたフィーちゃんにアンジェが訊きます。
「ん~。お姉さんってなんか、こう――あまりいい思い出ないんだよね」
いい思い出がない?アンジェにはいないのでよく分からないのですが。ふむ……。
「はあ。お姉さんがいるんですか?」
石鹸を取って体を洗い出すフィーちゃん。訊き、アンジェも同じように洗い始めます。
「――居るっていうか。居たかな?」
「居た?」
「喧嘩別れしちゃって――それっきり。ん~、だから――」
突然フィーちゃんが体をあわあわにした状態で、
「とうっ――」
「ひゃっ」
飛びついてきました。お互いにあわあわだったので、あわが飛び散り、突然だったのでアンジェの体は、そのままフィーちゃんの勢いに耐え切れず押し倒されました。
いだっ――。勢いよく倒れたので、その衝撃が背中に響きます。
「もーなんなんですか急に」
仰向けにフィーちゃんがアンジェを押し倒す状態になったまま、アンジェが訊きます。訊くと、アンジェにのっかったフィーちゃんがにししと笑って、
「おねえちゃーん!」
「へえ!?」
抱き着いてきました。
「フィーは妹がいいから。アンジェちゃんがお姉ちゃん!お姉ちゃ~ん」
抱き着いてきて、くねくねとアンジェの体にすり合わせきます。
ちょ――もう、なんなんですか、この人は!
「あっ……ひゃっ」
くねくねと、石鹸のぬるぬると柔らかなフィーの体が、擦り合わさりって、すごくこしょぐったくて。んもー。
「胸もまないで!」
すりすりと手を動かして、アンジェの胸に手を乗せ、ソレをすりすりします。
暴れますが、フィーちゃんの力は強くほどけません。その間にもほどけないアンジェの体をあちらこちらスリスリ、スリスリと。
やっ――あっ――。
「や、やめてく、くださーい!」
「アハハ――!」
その後、楽しそうに笑って、アンジェの体は隅々まで洗いまわされました。




