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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
72/175

012

 手に取ったナイフを見ていると、背後から上着を脱いだ状態のフィーちゃんが抱き着いてきて、アンジェの頭の横から顔を出し、突然声をかけてきました。

 なんなんですか、まったく……。驚きますよそりゃ。

 

「まあまあ、そう怒らない怒らない。いやー、ずっと気になってたんだよねー金色でピカピカのナイフ。そんなの持ってるってどこかの貴族なのかなーって」


 笑顔のフィーちゃんはアンジェから離れ、言います。

 

 言われて、アンジェはナイフに目を落とし、

 

「これは、おかあさんの形見なんです」


「形見?」


 っと、首を傾げるフィーちゃん。よく分かっていないようです。

 

「はい。おかあさんは昔居なくなってしまいました。このナイフとこの首飾りは居なくなる前、おかあさんがくれたものなんです」


 ふーん。っと興味なさげに返事をするフィーちゃん。でも、なんでいなくなったの?っと。

 

「アンジェもいなくなった理由は分かりません。だから――今は探しているんですよ。お兄さんと一緒に」


「そっか――とうっ」

 

「はわっ。なんですか急に!」


 にかっと笑って、フィーちゃんはアンジェに抱き着いてきます。

 離れて、なんとなーくと。そして、


「やっぱり。こんないい子。アンジェちゃんとはいい友達になれたかもしれないね」


 笑顔で、嬉しいこと言ってくれます。目覚めてから、同い年の子なんて会いませんでしたし……。怖がりなアンジェでも、不思議と、フィーちゃんとは自然に喋ることができます。


「――アンジェも、フィーちゃん見たいな賑やかな子は得意じゃないですけど……。喋っていて楽しいです」


 まあ――アンジェはあんまり賑やかなには得意ではありませんが……。フィーちゃん見たいな子がもっと早く友達になっていれば、教団なんかに入ることはなかったのでしょう。……そういえば、アンジェはどうやって教団に入ったんでしたっけ?。

 ふと思いついたものの。そこの記憶がどうにもありません。ふむ……。ただ、今はそんなこといいかなって。こんなに楽しいのは、なんだか久しぶりで懐かしいですから。

 

「さっ――早く入りましょう」


「そうだね!」


 アンジェの提案に、フィーちゃんは元気よく返事をして、くるっと自分の服の場所に戻っていきます。

 アンジェも準備しますか。

 

「服を脱いでっと……。いこっかー」


 はやっ!今さっき戻ったはずな、もう!?アンジェも慌ててナイフと首飾りを置き、服を脱ぎ、髪留めをとります。

 

「よーしいこうこう」


「ちょっと危ないですよ」


 準備できたアンジェの様子を見るなり、フィーちゃんはアンジェの右腕を掴み、ガラス張りの扉へと小走りで引きます。そして、そののままガラッと扉を開けました。

 ――開けた先は外でした。といっても、木の板で囲われてはいますが。上をみると夜の星空が広がっています。その外で、大きな石で丸く組まれた、数人は余裕で入れそうな湯船が見えます。石の床石張りの湯船。その手前には砦のお風呂と同じように、左右壁際に鏡がと、お湯が出る蛇口がついています。

 

「すごいでしょー。露天風呂なんだよ!しかも、温泉掘って、地下からそのお湯をくみ上げてるんだって。疲労とかに効くらしいよ?」


 すごい綺麗でした。淡い炎の光が照らすその露天風呂は、のんびりとできそうな雰囲気をだしています。そのお風呂でにフィーちゃんは、入って生きた扉を閉め、再びアンジェの手を引いて小走りします。

 

「――だから危ないですって」


 湿った地面で、滑りそうでこわいです。


「まあまあ。ほら座って」


 木の椅子にアンジェを座るように促します。それから、自分も座って。お湯を出し、桶に溜め。

 

「ん?」


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