012
手に取ったナイフを見ていると、背後から上着を脱いだ状態のフィーちゃんが抱き着いてきて、アンジェの頭の横から顔を出し、突然声をかけてきました。
なんなんですか、まったく……。驚きますよそりゃ。
「まあまあ、そう怒らない怒らない。いやー、ずっと気になってたんだよねー金色でピカピカのナイフ。そんなの持ってるってどこかの貴族なのかなーって」
笑顔のフィーちゃんはアンジェから離れ、言います。
言われて、アンジェはナイフに目を落とし、
「これは、おかあさんの形見なんです」
「形見?」
っと、首を傾げるフィーちゃん。よく分かっていないようです。
「はい。おかあさんは昔居なくなってしまいました。このナイフとこの首飾りは居なくなる前、おかあさんがくれたものなんです」
ふーん。っと興味なさげに返事をするフィーちゃん。でも、なんでいなくなったの?っと。
「アンジェもいなくなった理由は分かりません。だから――今は探しているんですよ。お兄さんと一緒に」
「そっか――とうっ」
「はわっ。なんですか急に!」
にかっと笑って、フィーちゃんはアンジェに抱き着いてきます。
離れて、なんとなーくと。そして、
「やっぱり。こんないい子。アンジェちゃんとはいい友達になれたかもしれないね」
笑顔で、嬉しいこと言ってくれます。目覚めてから、同い年の子なんて会いませんでしたし……。怖がりなアンジェでも、不思議と、フィーちゃんとは自然に喋ることができます。
「――アンジェも、フィーちゃん見たいな賑やかな子は得意じゃないですけど……。喋っていて楽しいです」
まあ――アンジェはあんまり賑やかなには得意ではありませんが……。フィーちゃん見たいな子がもっと早く友達になっていれば、教団なんかに入ることはなかったのでしょう。……そういえば、アンジェはどうやって教団に入ったんでしたっけ?。
ふと思いついたものの。そこの記憶がどうにもありません。ふむ……。ただ、今はそんなこといいかなって。こんなに楽しいのは、なんだか久しぶりで懐かしいですから。
「さっ――早く入りましょう」
「そうだね!」
アンジェの提案に、フィーちゃんは元気よく返事をして、くるっと自分の服の場所に戻っていきます。
アンジェも準備しますか。
「服を脱いでっと……。いこっかー」
はやっ!今さっき戻ったはずな、もう!?アンジェも慌ててナイフと首飾りを置き、服を脱ぎ、髪留めをとります。
「よーしいこうこう」
「ちょっと危ないですよ」
準備できたアンジェの様子を見るなり、フィーちゃんはアンジェの右腕を掴み、ガラス張りの扉へと小走りで引きます。そして、そののままガラッと扉を開けました。
――開けた先は外でした。といっても、木の板で囲われてはいますが。上をみると夜の星空が広がっています。その外で、大きな石で丸く組まれた、数人は余裕で入れそうな湯船が見えます。石の床石張りの湯船。その手前には砦のお風呂と同じように、左右壁際に鏡がと、お湯が出る蛇口がついています。
「すごいでしょー。露天風呂なんだよ!しかも、温泉掘って、地下からそのお湯をくみ上げてるんだって。疲労とかに効くらしいよ?」
すごい綺麗でした。淡い炎の光が照らすその露天風呂は、のんびりとできそうな雰囲気をだしています。そのお風呂でにフィーちゃんは、入って生きた扉を閉め、再びアンジェの手を引いて小走りします。
「――だから危ないですって」
湿った地面で、滑りそうでこわいです。
「まあまあ。ほら座って」
木の椅子にアンジェを座るように促します。それから、自分も座って。お湯を出し、桶に溜め。
「ん?」




