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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
67/175

007

「ああああああああああああああああああああああ!」


 カフェセトの空を舞い、僕たちは弾丸のように城へと一目散にとんだ。

 そうして、突っ込んだのだった。

 

 城の最上階、庄子壁ごと突き破り、城の和室へと壁の木材を粉々に散らしながら、中の和室へと突っ込んだ。

 

「あははは――はぁ、楽しかった」


 突っ込み転がった、フィーが楽し気に立ち上がり言った。

 

「いっつ……たくない……」


「さいあくです……」


 あれだけ派手に吹っ飛んできて、壁に激突して、こんなにボロボロしといて、痛くない。

 立ち上がりながら、壊れた庄子壁を見ながら、その不思議さを噛み締める。アンジェも、特に外傷みたいなものはないようだ。

 多分、フィーの魔法で着地?は上手く?できたのだろう。

 

「おやおや、なんじゃ?急に騒ぎ立ててきたと思えば、フィーか。火の国でも攻めてきたと思うたぞ?」


 頭がぐあんぐあんする僕とアンジェとはよそに、そんな声が聞こえた。

 

「こんばんわ~!遊びに来たよ?」


 フィーが挨拶をする。

 

 誰?

 フィーが挨拶をしたのは女性だった。

 正方形の室内に、座を取り、そこで横になってキセルをふかすいくつもの色とりどりの和服を羽織る、長い銀髪に長い耳、着崩れた着物は大きな胸元が露出している。

 そこには、美しく美形なお姉さんとでもいえよう人がくつろいでいた。


 途端、廊下をドタドタと走る音が聞こえ、場内が騒がしくなる。

 

「やれやれ、せっかくワシが夜月を楽しんでおったのに、騒がしいのぉ」


 次第に、その音は近くなり、

 

「クレリア様ッ!」


 ドタドタッ、バサーッ!

 ふすまが勢いよく開かれ、数人の白いハチマキに青い羽織をした青い男達が、ランプを片手に入り込んできた。

 

「ッ――?」


 アンジェがその勢いに驚き、入ってきた男たちを見ると、僕の後ろに隠れ制服を強くつかみ小さくうずくまって震える。

 

「くせ者!であえであえ!」


 一人の声に続いて、更に数人の同じ服装をした男たちが集まり、携えていた刀を腰から抜いた。

 この光景、砦の牢から逃げ出したあの時とすごくデジャブを感じる。僕はアンジェをかばいながら、男達へと向き合う。

 

 その瞬間、

 

「やめぬかっ!」


 衝撃が走った。

 部屋を揺らす大きな声が響いた。

 

 その声に、僕も、男達もあっけに取られしばらくしてはっと我を取り戻す。

 

「そのもの達はワシの客じゃよ。よう見て見?」


 姫様が言うと、男たちは僕たち三人を見た。しばらくして――、

 

「フィー様?では、他二人は?」


 一人の男が訊く。

 

「フィーの連れだよ?」


 言うと、男たちは刀を収めた。


「まったく。来るたびに、奇襲をするような訪ね方はやめてくださいとあれほど……」


 呆れる男に、フィーがごめんね~っというと、男たちは呆れた顔で下の階へと降りていき、部屋はまた暗がりへと戻る。

 

 やっぱり、フィーはどっかの姫様なのか?――それよりも、そんなことはどうでもいい。

 

「アンジェ……」


 僕の後ろに隠れるように、アンジェが今にも泣きそうでいる。どうにかしないとな……。

 

 ――カンッ!

 

 そこで、キセルの灰を叩いて落とす音と共に部屋に光が灯る。天井、部屋の中央にあるランプが白く光り、今までの暗がりが嘘のように、明るくなる。

 

「ふむ。どうやら怖がらせてしもうたの。まあ、いきなり突っ込んできたお主らも悪いけどもな。じゃが、安心しなよ、悪いようにはせぬわ」


「アンジェちゃん大丈夫?」


 明らかに大げさすぎる僕に抱き着くアンジェを見ると、フィーが心配して伺った。

 

「ああ、ちょっとね――訳あって僕以外の男の人は苦手なんだよ」


 僕はしゃがみ、アンジェを抱きしめる。小さく、お兄さんとアンジェの呟きが聞こえる。それと共に、少しすすり泣く声も。

 相当怖かったのか、震えている。そりゃまあ確かに、あれだけの人数が押し寄せれば相当怖い。刀を抜かれた時は僕も一瞬ヒヤッとした。

 けどまあ、ここにアンジェを苦しめる不安はない。


「大丈夫?」


「はい……」


 しばらくして、アンジェの震えは止まり、僕からアンジェは離れた。

 

「本当に大丈夫?アンジェちゃん」


「はい、大丈夫です。お騒がせしました」


 僕から離れたアンジェがペコリとフィーに向かって頭をさげた。

 アンジェもアンジェで、申し訳ないという気持ちがあるのだろう。かしこまっている。あんまり、無理をしないといいけど……。少し不安というか、心配だ。

 

「お兄さんも、大丈夫ですよ」


 僕の不安な顔に気づき、アンジェがはにかんで見せる。

 

「心配せぬともよい。それより、フィー。またこんな時になにしにきたのじゃ?」


「ん~?なんだっけ?」


 おとぼけた顔で首を傾げるフィー。いくら何でも、自由すぎるでしょ。

 

「あー、そうそう。エリザの代わりに薬を届けにこようと思ったんだけど、森の結界が強くなってて、馬車も通れないじゃん?だからそのクレーム言いに来たんだけど?」


「ふむ……」


 

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