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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
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005

 蝶が誘導してくれる元、歩き出し少ししたところで先導するフィーがこちらを向く。


「それにしても……なんか、フィー嫌われてる?」


 器用に、後ろ向きに歩きながら、僕の前を歩くフィーは、僕の後ろに見え隠れるするアンジェを見ると、怪訝そうに言ってきた。

 アンジェはアンジェで、言われて、僕の後ろへと小さく小動物のように縮こまる。

 

 はははっ……。

 カラ笑いがこぼれる。

 多分、嫌われれる訳じゃないんだろうけど……。基本的に僕以外にはこうやって隠れるんだよね……。砦の世話役のメイドさんに限っては、流れで無理やりにでも慣れたみたいだけど。――フィーとは年も近いみたいだし、どうにかならないかな。

 

 思い、アンジェを前に出るように促し、前に押してみるも、嫌がり、再び僕の後ろに隠れ首を振るアンジェ。

 

「ありゃ~。結構傷つくね……」


(ガサツだから)


「あっ、ひどーい!――っと、わっ!?」


 蝶の精霊に言われ、前に向き直りツッコミを入れようとした瞬間、フィーが足元にあった小石に躓き、バランスを崩す。

 長い金髪が揺れ、フィーはその場に尻餅を――つかなかった。

 

 ――アンジェ?

 

 フィーが足を取られ、倒れようとした時、アンジェは反射的に僕の後ろからでとっさにフィーの腕を右手で掴んでいた。

 

「大丈夫ですか?」


「あ――うん……」


 腕を引かれ、あははっと照れくさそうに言うフィー。

 そのフィーを、アンジェは不安そうな表情のまま、じっと見る。

 

「………」

 

 どうしたんだろう?

 ジッと見つめたままのアンジェのただならない雰囲気に、僕は、また砦の時のように、おかしくなってしまったのかと、少し警戒をする。

 また――あの時のように、なったら……と。そう――どこかで僕は怖がっていた。

 

「えっと、なに?」


 見つめ続けるアンジェに、フィーもおかしく思い、訊いた。

 

「――お兄さんはアンジェのです!」


 力強くそう言うと、アンジェはスタスタと僕の後ろへと素早く戻り、また隠れてしまう。

 

 ………。


 フィーが目を点にしている。

 僕も目を点にしている。

 アンジェは僕の後ろで、ぷくーっと膨れている。

 

 どうも、僕も警戒はいらない配慮だったらしい。というのも、多分。僕は察した。アンジェが僕の後ろに隠れ小動物のように威嚇し、警戒しているのも。

 なんというか、子供っぽいというか。気持ちは分からないでもないけどね。同い年ぐらいの、見た目ほぼ同じの子がいきなり来て、僕とこんなに親しく話せば。

 

 僕は小さく笑って、

 

「フッ――アンジェ、もしかして妬いてるの?」


 僕の問いにアンジェの、頬が更にぷくーっと大きくなる。


「なんですか!アンジェは真剣なんです!」


 怒るアンジェに、僕はしゃがみ、アンジェの身長に合わせ、


「大丈夫だよ、僕が好きなのは君だけだから」


 言って頭をなでてあげる。

 言われ、赤くなり、膨れるアンジェ。

 恥ずかしいのか、それとも、悔しいのか。分からないけれど。妬いてくれてたのか。そう思うと、なんだか僕は嬉しくなる。

 

「いやー愛っていいよねぇ」


(ばばくさい)


「うるさい。――アンジェちゃん、だっけ。大丈夫大丈夫。フィーには、こーんな善良ぶった普通の顔の人なんてタイプじゃないし、マスターがいるしね。なんか嫌われると思ったけどよかったよー」


 普通の顔って……。確かに善人ぶっていはいるけど、そこまでストレートに普通と言われるとなんだか傷つく。

 

 立ち上がった、僕に続いて、フィーは言い、アンジェの顔を覗いた。

 

「いま嫌いになりました」


「ガーン!なんで?」


「兄さんの事を悪く言いました。嫌いです」


「えぇ――まあいいや、行こ、もう真っ暗になるし」


 言って、笑顔でアンジェの手をフィーが引く。

 フィーが転びかけたところで、足を止めていたが、それで僕たちはようやくまた進み始める。

 先導して、進む蝶に連れられ、フィーがアンジェの腕を引き、進む。アンジェも膨れてはいるが、どうやら嫌ではなさそうだ。この子と会えたのは、アンジェにとってかなりいいことだな、と思いながら。

 二人の金髪の少女二人を追うように、僕は森の中を進んだ。

 

 けど……。ふと思う。

 

 似ている。

 

 アンジェとフィーは似ている。それも似すぎているというほどに。髪型や、着ている服、瞳の色、性格は違えど、まるで、ドッペルゲンガーとでも言わんばかりに。

 こうして、二人並んで見ると、それはさらに良く分かる。瓜二つ。

 

 なんだか、嫌な予感がしてならない。二人の少女は笑顔で進むが、その美しさが逆に恐ろしいそんな気がした。

 

 フィー。突然、現れたこの子の事を僕たちはよくしらない。ましてやこんな森の中でだ。僕は幽霊でも見ているのだろうか?

 

「ほらーマコトさん!早く早くー!」


 考え込み、俯き歩く速度が遅くなって、少し離れていた僕にフィーが右腕を振る。逆の手はアンジェの手を掴んだままだ。

 

 言われて、答え、僕は小走りで進んだのだった。

 

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