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正しき魔王の旅記  作者: テケ
三章 ふぃーフェアリー
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004

「そう――。でもなんでこんなところに?」


 まあ、確かに。森の中で会うなんて普通ありえないよな。それも僕とアンジェみたいな子供と。それは、この子にも言えるのだけど……。

 

「僕たちは水の国に行く途中で――橋が落ちてたから、木の国を経由して行こうかと。ただ迷子になっちゃって……」


 その答えに、アンジェは僕の背後でぷくーと頬を膨らませ、迷子じゃないですと反論する。いや――かなり迷子だよ?

 

「それより君もどうしたの?」


 こんなところに小さな子でひとりで……。迷いの森なんかに?と、僕は訊く。不思議だった――この理不尽な世界でこんな女の子一人で、それも迷いの森だ。なんだろう。アンジェもそうだったけど、この世界では女の子を一人で旅をさせるのが流行ってるのかな?


「ん~。フィーはマスターのおつかいかな?でも、そっか――橋が落ちてた……。それは大変だ。でも――ってことは火の国側から来たってことだよね?」


「そうだけど?」


 不意の質問に、僕はついそのまま何も考えず答えた。答えてしまった――フィーと名乗った女の子をの視線が小さく鋭く僕を睨んだ。

 それに、アンジェがなにか怖いものを感じたのか、僕の後ろに顔を隠くす。

 

「へー――フィーここにくる前、すぐそこの砦に寄ったんだけど……。あなたたちは寄らなかったの?」


 砦……。立ち寄ったって……。じゃあこの子はあの惨状を見たのか……、それを僕たちのせいだと疑っている?いや――こんな小さな子がそんないきなり僕たちのことを疑う訳がない。落ち着け……動揺するな。アンジェは、完全に僕の後ろに隠れてしまっている。僕がしっかりしなくては――。

 

「寄らなかったよ。それに――ただの旅行で、砦なんていかないと思うけど……」


「ん~――それは確かに……。でも旅行か……災難なのか、運がいいのか不思議だね」


 それは一体?

 疑うようなまなざしをやめ、にぱっと笑顔で笑い言うフィー。でも、運がいいって?首を傾げた僕に、フィーは笑顔で答える。

 

「橋が落ちてるなんて災難だったと思うけど……。途中、砦に寄ってフィは友達に会いに砦に行ったんだ、悲惨だったよー。なんだって、皆殺し――誰だか知らないけど砦を襲撃してみんな殺されちゃってたんだからー。よかったね!もし、あなたたちが砦にでも寄って泊まりでもしてたら、一緒に殺人鬼に殺されてたかもね!」


 アンジェが僕の掴む服に力がこもる。


「へ、へぇ……」


 笑顔でとんでもない事を言ってくれる。しかもその殺人鬼たちに……。不本意であるが、アンジェがやってしまったこと。フィーが見たのはそれなのだろう。あの惨状を……。

 これ以上は、この話をしない方が良い、アンジェにとって良くない。

 

「――それより、もう日も暮れちゃうよ」


 そう言って、僕は辺りを見渡してフィーに言う。砦の話はここで切ろうと、促す。

 

「あ~――そうだね。ねえ、暗くなりそうなんだけど」


 フィーも僕と同じように辺りを見渡し、それから――近くをヒラヒラと飛んでいた蝶の方を向き訊いた。

 

 とりあえず、フィーは僕たちが砦の惨状を起こした犯人とは疑ってい居ないようだ。なんだか掴めない感じの性格だが、陽気な感じのフィーに、僕は安堵に思う。そもそも、普通に考えたら、ただの旅人になっている僕たちが砦の人間全員を殺すなんて思わないだろうし。さっきのフィーの視線も、警戒のしすぎている僕たちの勘違いに違いない。だぶん、慣れないことで僕はもちろんアンジェも神経質になりすぎているのだろう……。

 

 僕がそうこう思っていると、蝶はヒラヒラと蒼の光の粉を散らし、僕たちより先の道へ進む。

 

(こっち。いまならくらくなる前につける)


 蝶から声が、僕の頭に届く。

 

「ホントォ?」


(ホント)


 どうもここまで来るためにとんでもない道を通ってきた様子のフィーが、蝶を疑い顔をしかめる。

 

「道――分かるのかい?」


(うん)


 問うと、蝶は僕へ返事を返した。やっぱりこの蝶が話していたのか……。光喋る蝶。初めて見るそれに僕は不思議なものを感じた。これが魔法の世界。いままで見たことのない蝶は美しく羽ばたいている。

 

「この子は微妙な魔力の道を感じ取れるの。いくら入り組んでいても、この森は流石に誰も寄せ付けないなんてことはないと思うからね。道しるべみたいな?それをたどってくれるんだけど……。なんかさっきから変な道ばっかなんだよね」


「へぇ……」


 じゃあ、一応正解ルートみたいなのはあるのか……。後ろで、アンジェだってわかりますもん!っと呟いているのが聞こえる。なんか、向きになってる?アンジェ。

 

「ん?――というより、あなたはこの子の声が聞こえるの?」


 何かに気づいたフィーが首を傾げ、僕に訊く。

 ――そうだけど?どうしたのだろう?

 

「ふーん。普通、精霊とは話せないけど……たまにいるんだよね。そういう人?」


 あー……。そうなのか……それはおそらくミレアの変なところでめんどくさがりなところが問題なのだろう。僕がこの世界に来るときに、この世界の言語を理解できるようにしてくれた。さしずめ翻訳機のように、喋ったことは普通に僕の分かる言葉として聞こえるように。ただ、それをどこまで翻訳するかを、ミレアは設定するのがめんどくさくて、意思疎通が可能な生命対であれば普通に会話できるようにしてくれた。それが原因なんだろう。だから、僕には無自覚だけれども……そうか、普通は離せない。でも、フィーは普通に喋っている。これはどういうことなのか……。

 

 後ろでアンジェも話せます……と小さく聞こえる。

 

 アンジェも?どういうことだ?

 

(はやく)


 不意に、立ち止まって話す僕たちに、前を飛ぶ蝶が急かした。

 

「なんかよくわかんないけど。取り合えず歩きながら話そうか」


 僕が言うと、フィーはだね!っと返事をして僕たちは歩き始める。アンジェはまだ僕を立てにフィ―から隠れている。

 

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