009
『ああああああああああああああああ――――』
地下内に、教団達の悲鳴が響き渡ったのだ。
魔法陣からは無数に蒼い光が流星群のごとく飛び出し、教団達へと降り注ぎ、彼らを容赦なく貫いた。
悲鳴と共に彼らは倒れていき、受けた傷から血を流す。あっという間に地下は死体の山となる。そして、彼らが魔力を注いでいた、赤黒い球体も鼓動と共にはじけ散り、その姿を消す。
「………」
新しい、鉄の混じったような匂いが鼻につく。
一瞬か……。
だが、一人だけ生き残っている者がいる。
司祭だ。
あの一瞬で魔力の供給をやめ、防御壁でも作ったか。
全ての信者が倒れ、血を流す中で、司祭だけはその場に立っていた。その顔は驚愕に歪んでいるが。
次第に怒の顔へと変わり。
「だれだ!我らが聖なる儀式の邪魔をする者はっ!」
叫びは吐いた。地下へとその叫びはこだまする。
「なにが聖なる儀式だ」
物陰から出て、俺は言う。
俺に気づいた司祭が、この世の終わりのような表情を浮かべる。そこから直ぐに憎しみの表情へと変わった。
「勇者――貴様ぁ」
俺顔を知っているのか……。
俺は有名人だが、顔を知っている人間はそういないはずなんだが……。
「お前、なぜあんなことをする?」
淡々と俺は訊く。
「あんなことぉ。我らの儀式を愚ろうするか?だが勇者、貴様こそなんだこれはあ、このザマはっ。これが勇者のすることなのか?これでは無差別な虐殺ではないのか?」
確かに……。こんなこと勇者のする事じゃない……。
転がる死体を見て俺は思う。
こんなこと、どちらかというと魔王のやりかただろうな……。
だが、そんなこと――、
「お前の知ったことじゃない。質問しているのはこちらだ。答える気がないのであればここで殺す」
俺は刀に手をかけ、抜刀の構えを取った。
「怖い怖い。いいだろおぉお――我らは女神様を迎えるのだ!そのための儀式、悪に手を染め女神様に愛想すかされた勇者とは違うのだ!そして新なる世界で女神様の元、魔王の復活を……、この歪んだ世界を救済するのだああああ―――!」
瞬間、司祭の首が落ちる。
鞘に着いたトリガーを引き、俺は刀を抜刀したしたのだった。
首からは血が噴き出、首に続いて、体も前へとドチャリと嫌な音を立てて倒れた。
刀から血を払い収める。
「フィー。撃ち残しはないか?」
ひらひらと飛ぶ蒼い蝶へと問う。
「うんいない。これからどうするの?」
問われ、改めて俺は辺りを見渡した。
地面一面には百を超える死体がことがって、大量の血が地面を濡らしている。
見ていて、物凄く嫌になる風景だった。
これが勇者のすることか、か……。言われないでも分かっている。俺はもう人々を守る勇者じゃない。もう、世界の道化に過ぎないことなんて……。
分かっている。
そんなことを考えるのすら、もはやアホらしい。
「後のことはこの国に任せる」
『分かった。じゃあお城で合流?』
死体を避け、俺は階段へと向かい、フィーへと答える。
「いや、先にもう木の国に向かってくれ。俺はいま多分……ひどく悪い顔をしてる」
『そっか……』
答え、横目で最後死体の山を見て、来た階段を上る。
そんな俺に、フィーは一言だけ言ってあとは何も言わず蝶は光の粒子をまき散らして消え去った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆