004
「それでは、荷物はいつも通りお願い致します」
二人のほほえまし様子をみて、男へと言った。すると――男は、笑った顔から一転してまじめな顔つきになり、
「それがですね勇者様。実は少し問題が起きてまして……」
「問題?」
「ええ。なんでも、南の国境際の砦で何かあったらしく。どうやら警戒の為に迷いの森の結界が強くされているようです。そのせいで、木の国への輸出や輸入は一時的に止まってしまって……。話では、砦の者が木の国のものに危害を食えていたとか……。それに起こった木の国が閉鎖をしたようです。騎士団の隊長であるブレン様が様子を見行っているそうですが……」
砦の話からは耳打ちする形で、俺へと伝えた。
この人は、港で仕事をしているので、よく各国から色んな情報を聞くことがあるのらしい。その情報は輸送の話やよくない噂など、また、各国の裏話も聞くこともある。その上、情報の正確性は確かであり、ここにこうして来るたび何かしら俺も情報を提供してもらっていることもあるが……。その人が言うのだから、話には間違いはないのだろう。
だが、ブレンは一体何をしているんだ?俺への手紙の話と合わせると、その砦に向かう途中もしくは砦で別世界から来た者を見つけた可能性が高いが……。まあ、それはおいおい分かることだろう。ただ――森の結界が強化されているとなると荷物の輸送はできないな……。
あの森は魔物がうようよいる森でもある。その上、迷いの森といわゆる、正解のルート以外は全て入口に戻り迷う結界だ。ただでさえ専門の案内人がいないと解けない迷路なのに、それを余計難しくされては、木の国にたどり着けっこない。そこに馬車を引いて向かうのは難しい……。
「フィー。いったん荷物はこの国に置いて、先に木の国の様子を見に行けるか?」
「ん……?」
顔色の悪いままフィーは首を傾げる。
フィーは魔力に敏感な妖精であり、精霊と話をすることができる。そんなフィーであれば迷わず木の国にたどり着くことができる。なので、先に行き、木の国の王に直接話をつける方が早いと思った。なによりも、木の国の王はフィーとも仲が良い。エリザの薬についてもいい関係を築づいてのものなのだから。そうそう、突然門前払いとはならない。
「いいけど……。教団は……?」
「もちろん。そっちも頼む。今日中には終わらせるつもりだから。終わったら、行ってくれ」
「えぇ……わかった……」
何を嫌がっているのかは知らないが、若干嫌な顔をしてフィーが頷いた。
「そんな訳なので、申し訳ありませんが、荷物は一度積み荷のまま保管しといて貰えないでしょうか?」
「ええ、構いません。それでは」
俺と男はお互いに頭を下げ挨拶をしてから。
俺はフィーと共に港を後にした。




