003
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場面は移り変わり火の国、ベルクホルンの港だ。
ロゼラリアから魔動船で2時間程、語る為に速度基準を変換をすると、およそ最高速度80キロ飛ばし急ぎ火の国へと渡り、俺とフィーは装備をこしらえてベルクホルンのコンクリートで固められた港へと降りた。
いくつもの工場のようなトタンの壁でできた建物が並んでおり、その中で、木箱や鉄の箱といったものから、魚が荷下ろしされていたりする。多くの人がだだっ広い港で作業をしている。
急ぎでと、薬の輸送目的で来たため、観光地のような美しい場所というよりも、船着き場は工場のような場所だ。今回は目的が目的なため、港の水業側へと着ている。
ちなみに、目的は教団の鎮圧。ついでに他の世界から来たという人間について聞くこと。ついでにフィーのおつかい。フィーのお使いについては途中で別行動になるが……。本来の目的である教団の鎮圧はフィーに協力してもらうので、フィーにもそれなりの装備をしてもらっている。
装備と言っても、血みどろな荒事になることが前提なので、つまるとこ武器なのだが……。
現に俺も、黒く鞘と柄どちらにも銃のトリガーが着いた刀を腰に身に付け、そのベルトには予備のマガジンのホルスターがいくつか着けている。
一足先に降りた俺は、乗ってきた輸送用の魔道船を見て苦笑する。いや、べつに船がおかしいという訳ではない。船はただの魔道船であり、鉄と木できた帆を張らないタイプ。いわゆるスクリュープロペラを回転させて進む機械化が進んだ船である。しかし、その船から降りてくるフィーに、苦笑いしざる負えなかった。
背に、黒光りするライフル銃を背負うフィーが、よろよろと力なさげに船と地面をつなぐ橋を割って降りてくる。その顔は、物凄く青白く気分が悪いのがあからさまにうかがえる。
「大丈夫か?フィー」
一歩間違えば海に落ちそうな、フラフラの足取りのフィーを見て、俺は声をかけた。
「だいじょう……ぶじゃないぃ……」
そう言って、体調が割るそうなフィーようやく橋を渡り切り、俺の元へとただり着くと、俺の胸へと顔面から沈めもたれかかった。
これは、またえらい酷いのようで……。ようするに、船酔いだ。とはいえ、船に限ったことではなく、フィーは乗り物に弱い。それも重度の酔いやすい体質らしく、馬車や荷車といった、すごく簡単な乗り物でもかなり体調を悪うしてその場でうずくまってしまうぐらいである。
なので、それもあり普段は国から出ることもなく。出たとしても自力で飛んで出かけたりしていた。けれど、今回は薬を届けるため、それの輸送こみの移動であり乗り物は必須。避けては通れなかったのだ。
「エリザから酔い止めもらってないのか?」
エリザベートなら、どんなことが起きても酔いなんてならないようにする薬ぐらい作れそうなのだが……。
胸の中で伸びているフィーの背を擦り、俺は聞く。
「もらったけど……効かなかった……」
胸の中でむがむがと答えるフィー。
「ちなみに、酔い直しとかは?」
「よけい、気分悪くなった……えりざあ……ぜったいへんなくすりしこんだよぉ……」
ダメだったか……。
薬には自信と誇りを持っているエリザベートのことなので、よくケンカしているとはいえ、フィーにこんな遠回りな嫌がらせをするために薬を盛ることはないと思うが……。
しかし……まあ。エリザベートの薬が効かないとなるとどうしよもない。しばらくフィーには我慢してもらおう。
「いくぞ?」
「えぇ……」
寄り掛かる顔色の悪いフィーを離し、俺は船着き場で、乗ってきた船の輸送品についてチェックをしている男の元へと向かった。
「おお、勇者様。船旅ご苦労様でした」
近づくと、青いのつなぎを着た四十程の中年の男から声をかけてきた。
「いえ、こちらこそ。急な申し出でを受けていただきありがとうございました」
かるく頭を下げ、挨拶をする。
木箱の積み荷はクレーンで降ろされ、そのまま奥へと運ばれていく。俺達が載ってきた船には何も薬だけではなく、他の輸送物も乗っているので、それなりに数が多い。既にいくつもの木箱が、船からおろされ積まれていた。
「フィーちゃんは相変わらずだね」
しゃがみ、フィーへと背丈を合わせ、男はフィーへと笑顔であいさつをする。
「あう……うるさい……あたまひびく……」
男のあいさつに、苦悩したかのように肩で手で頭を押さえる、言い捨てるフィー。
「はっはっはっはっは。なに、しばらく我慢してれば治るさ」
フィーの悪態に気を、悪くせず、むしろ子供を茶化すように男は笑って言った。
この人とはかなりの顔見知りで、港を使用して輸送する際、毎回この人がロゼラリアからの荷物を担当してくれる。俺も輸送には何度かつきあうのよく顔を合わせることもあり。フィーは俺ほど数はないが、ごくたまーに船で来るきかいがある。そのたびに、こうして体調を悪くしているので、合わせる回数は格段にすくなくても、毎回船酔いする子供として覚えられてしまっているのだろう。