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正しき魔王の旅記  作者: テケ
断章 ゆうしゃチュートリアル
52/175

002

 俺は元々何かを自分でしたがる正確ではない。それはもちろん、数百年たった今でも変わらない。ただ暇があればこうしてのんびり丘で睡眠を楽しむ。なによりも、まあ――退屈な人生に飽きてしまったというのが本音なのだろう。いくたもの冒険をしたからこそ、その刺激は甘未だった。いくつもの異世界を回り、知らない土地で知らない人や神様に会う。普通では体験できないことを体験した。だからこそ、今の生活は退屈なのかもしれない。

 

 とは言え、俺もそこまでプー太郎をしている訳でもないのだが……。そんな俺の答えに、フィーはムッとして、俺の横っ腹を蹴り飛ばした。

 

「いっつ――」

 

 痛みに顔をゆがめながら、俺はその場で起き上がる。

 

 この使い魔――最近、俺への扱い酷くないか?

 

「酷くないよ。ほら、マスター。手紙が来てるよ。それも速達で」


 そう言って、涙を漏らす俺に、フィーは一通の手紙を手渡す。

 

 見た目なんのへんてつもない真っ白の手紙。受けっとった俺はその両面を見ると……。

 

 火の国の印?手紙の便を閉じるロウには火の国王家の紋章が刻まれていた。

 

 速達で、火の国の王から何なんだ?おそるおそる開けて、中の手紙を取り出し、その中身を確認する。

 

 ………。手紙を見るにどうやら。火の国にある教団の潜伏先が分かったということだが……。それとは別に書かれていることに、俺は一つの目を引いた。

 『異界から来た少年を、ブレン騎士団長が保護した』

 あのオッサンなにやってんだよ……。けれど……この一節はおかしい。なぜなら、そんなこと起こりはしないのだ。というのも、この世界に、別の世界。つまりは次元から侵入するには4っつのプロセスを通らなければいけない。それは、言うならばこの世界に入る為に絶対に通らなければいけない門であり、その門は外部からの侵入を防ぐセキュリティでもある。もし、外部から何者かが侵入しているのなら、それが正常に作動していないことになが……。それもあり得ない。

 それぞれの領域(門)に配置された守護者立は、しっかりと役目を担っている。第一の層ミレラ、第二の層フロレリカ、庭園――申子チルドレン、最終の層サラ、ユーリ。全ての守護者が動作をとめた様子もない。なのに何故……。

 心当たりがあるかと聞かれれば、ないとは言わないが……女神の半数が消えたことに何か……。もしくは教団とのつながりも?

 

「マスター?大丈夫?そんなに考え込むことだった?」


「あ、いや――そういうことでもないが……」


 考え込んでいると、いつの間にかしゃがんでいたフィーが俺の顔を覗いて言った。

 

 とりあえず、原因は分からないが、今すぐにでも行ってみる必要はある。どちらにしても、教団の潜伏先が見つかった以上。俺が行くべきだろうし。

 

「フィー。すぐにベルクホルンに行くぞ」


「あーそれなんだけど、フィー。お使い頼まれてて」


「お使い?」


 屈んでいたフィーが立ち上がり、めんどくさそうに肩を降ろし、

 

「毎月エリザが木の国に作った薬運んで、その素材もらってきてるでしょ?いま、よく分からないけど忙しいからいけないんだって。だから、その代わりにフィーに行ってくるように頼んできて……」


 へー。普段喧嘩ばかりしてるのにな。こういう時は素直に協力すのか……。仲が悪いのかいいのか……。うちの姫様も素直になったもんだな……。

 

 黒薔薇の薬師エリザベート。うちの国では色々な開発を行って、それを他国へ売ったり配ったりしている。

 それがいわゆる、フィーが言ったものの一つな訳だが……。森におおわれた木の国には珍しい魔草などが生えており、それを調達しもらう代わりに、こちらで作った傷を治す薬などを毎月、受け渡している。それ自体は薬を作っているエリザベート本人が、誰にもその役目を誰にも譲らず自分でするのだが……。それを誰にかに頼むということはよほど忙しいのだろう。また、いつの日かみたいにエリーゼとよかなるものを作ってなければいいが……。それも、毎日喧嘩しているようなフィーに頼むなんて……。あとで問い詰めておこう。

 

 そもそも、フィーもよく素直に受けたな。

 

「木の国の人たちにはなにも恨みはないし。それに、かわりに新しい銃作ってくれるっていう条件で、今回は受けてるから」


 なるほど。

 エリザベートは銃も別で研究している訳だが……。まあ、研究してるのは銃に限らないが……。あの機械オタクは本当に魔女なのか?と最近は良く思う。

 フィーの銃はいわゆる特別製な銃で。腰につけてるトリガーハッピーは魔銃なのだが、それを研究、魔改造してるのはエリザベート。最近ではライフルとか作ってるって聞いたが……。


 二人の間で約束事が交わされてるならそれはそれでいい。喧嘩するほど仲がいいとは、よくいったものだ……。

 

「うんじゃ。行くか」


立ち上がり、フロックコートに引っ付いた草を払い俺は言った。

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