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正しき魔王の旅記  作者: テケ
1章 偽善ジャスティス
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005

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「おら!――入れっ!」


 っ――。


 突き飛ばされ僕はフラフラと地面へ、服をはぎとられパンイチの恰好で、硬く冷たい地面へと倒れた。


「あ・・・くっ」


 ここは――どこだ・・・?


 分からない・・・。


 ガラガラと僕を突き飛ばした男は横開きの扉?を閉めて立ち去って行く。


 あー・・・くそう・・・。


 立ち去っていく男を見て僕は安堵する。


 何故かって?


 さっきまで拷問を受けていた、殴られ水をぶっかけられ、それから・・・。よく覚えていない、ただ、思い出すだけで痛いそれだけだった。


 それに、話数がいくつか飛んでいる。


 思い出せない、なにがあったのか・・・。


 覚えているのは手錠でつながれ顔面を思いっきり殴られた辺りか・・・それとも、水をぶっかけられた辺りか・・・。


 記憶がハッキリしない。どれぐらいの時間がたったのか、僕がいつからこんなことをされているのか・・・。


 ここに入れられたのは初めてなのか・・・そうでないのか・・・分からない・・・。


 それに、男が占めたのはただの扉じゃない・・・これは――檻の柵、


 ここは牢だ・・・。


 生活感の無い。何もない、冷たい石で作られた、小さな牢。人を長く滞在させておくには明らかに


 背の届かない位置にある小さな柵で区切られた穴が、やさしく牢の中をただ照らしていた。


 僕はぐったりする体を起こす。


 ミレアの加護で体の傷は治りはするが、メンタルだけはどうにもならない。


 顔や腹を殴られ。挙句の果てに背中は棒か何かで強く打たれる。


 想像を絶する痛み――。


 それが、何時間も何時間も続いた。


 訳が分からない・・・。


 ご愛読の皆々様も、こんな即落ち2コマならず即落ち2ページで訳が分からないだろうが、僕だって分からない。


 何が起き、どういった経緯でこうなったのかなんて・・・。


 ――だた、手錠で吊られ殴られている時にミレアを読んでも反応が返ってこなかった。だから、今の僕が八方ふさがりなのは分かる。


 まあ、ミレアは別に僕を助けるために存在するじゃなくて、元は僕を監視するための存在あるわけだし助けるいちいち助ける義理はないのだろう。


 それに――あの、ひねくれ悪魔じみた女神には僕が拷問されるとこなんか楽しくて仕方がなかったんだろう。


 だから呼んでも答えなかった。


 あの女神は僕を助けても。決して僕を救いはしない。


 むしろ、不幸に陥れる疫病神なんだろう。


 しにたい・・・。


 さっきまで。ああ、この場合自分の記憶がある森での話だが。あの時は心の底から生きたい。生き返りたいなんて思っていたが、今は違う。


 むしろ、殺してくれと叫びたい。


 心底、もうやめてくれ。楽になりたいなんて思っている。


 僕は立ち上がり、牢を見渡す。


 ――どこかに抜け道はないか。


 ――助かる為の道具は落ちていないか。


 そんな脱出ゲーム御用達のアイテムなって落ちているわけがないのに。


 見渡した、必死に、素早く。神にでも願うかのように。今僕にくっついている女神は助けてくれそうにないだろうが。


 それでも、6畳ほどの小さな部屋を僕は見渡し探した。


 その、なにかを――。




 見つけた。




 いや、見つけたというよりは、


 そこに"いた"


 というのが正しいのだけども・・・。


 それは居た。


 部屋の淵に。


 ゴミ捨て場に捨てられたようにボロボロの布切れにうずくまって、見渡してよく見ないと気づかないぐらいこの薄汚い部屋と同化するように。自分の存在を隠すように。居た。


 ――人?


 頭から羽織る布から、元はキレイだったんだろう。ボロボロに荒れ、ホコリに汚れた髪なのかゴミなのか分からない金髪が布から漏れている。


 顔は隠れて見えない。


 確認しようと僕は部屋の淵に恐る恐るうずくまるその人に近づく。


「え・・・」


 小さな鉄格子のついた窓からの光のみの薄暗い部屋の中で、僕は淵にうずくまるその人の顔を覗いて見た。


 いや、見てしまった。


 おいおい、マジかよ。


 女の子・・・。


 そこには、少女が布にうずくまっていた。


 僕は膝をつき、少女の顔を更にのぞき込んだ。


 ――傷だらけだ。


 ホコリに汚れ、張れて青アザのある頬、乾燥し切れた唇。半目に開いたうつろな金の瞳。彼女も僕と同じように拷問にでもあったのだろう。


 小学校高学年ぐらいの少女。


 少女は羽織る布のように。ボロボロだった。


 それに・・・。


 自然と、僕は彼女の頬に手を伸ばそうとする。


「っ!?――いや・・・!?」




 パチンっ――!!




 伸ばす僕の手に少女は目を強く瞑り縮こまってひどく怯え。


 アザだらけの左腕で弾かれた。


 この子。


 ――全身アザだらけだ。


 想像は大体ついていた。僕が服を奪われ暴力を受けていたのだから。


 はだけた布から見えた彼女の体は、


 傷、傷、傷。


 何も身に着けていない少女の体はすこし見ただけで気分が悪くなるぐらいの傷だらけの体。


 僕がミレアの加護を受けていなければ、きっと同じようになていたんだろう。


 そう思うとゾっとする。


 見ていて痛々しい――。


「――――」


 少女ははだけた布を戻し更に怯え部屋の淵に縮こまる。


 こんな小さい子にこんなこと・・・。


 自分も同情している場合ではないのがあるが、それ以上に、こんなの少女に同情しざるおえない。


 怖がっている。こんなにも、今にも泣きそうな顔で。


「わるい・・・」


 ごめんな。


 今の僕にできるのは・・・だぶんこれだしかできない。


 それは、少女から離れること。


 僕は弾かれた腕を下げ、少し離れて壁にもたれて座った。


 この少女がどんなことをされたのかは分からない。


 ただ、不用意に近づいて刺激すれば壊れてしまいそうだった。


 それほどに弱っているように見えた。


 だから下がる――そう、見えたけども、そんなのはたぶん言い訳。


 僕が――怖かった。


 恐れる少女に近づき、もし壊れてしまったらと。


 弱々しい、パーツパーツが外れそうなグラグラな人形のような体の少女に、触れるのが怖くなった。


 だから離れた。


 少しでも刺激しないように。


 壊さないように。


 離れた僕に少し少女も警戒を解いたようで震えたままではあるが、部屋の淵に縮こまるのをやめた。


 半目に開いた金眼が僕を見つめる。


「はあ・・・」


 ようやく僕も落ち着いてきた。


 色々あったが、ようやく気分は落ち着いた。


 僕も、この牢屋に入れられ決して平常心ではなかった。


 焦っていた、ここからどうにか抜け出せないか。逃げ出せないか。と――。


 何よりも記憶がない、それが不安で怖かった。


 だから、誰もいない牢だと思ったが少女がいて僕は安堵している。


 自分に危害を食わない人がいることがこんなにも安心になり、心強くなるとは思わなかった。


 それがたとえ、傷だらけの少女でもあっても。


 こんな、牢に一人で閉じ込められるよりもマシだった。


 心強いと思った。


 それぐらいに、僕のメンタルは弱っていた。


 そもそも、僕はメンタルはけっして強くないと思う。


 だって、僕が誰かに為に動くのはあくまで衝動できであってメンタル云々じゃないし、なによりも僕は嫌なことがあれば僕は嫌と言うタイプ。だから、そんな人間が拷問なんか受けたら弱るに決まってる。


 不安になる。


 鬱になる。


 死にたくなる。


 それはいくら体の傷が治ろうと関係ない。


 辛くて、辛くて、辛くて、辛い。


 だから、安堵した。


 救いになった。


 僕は弱い人間だから。


 だから、彼女になにか話しかけるわけでもない。


 そうしてしまうと壊れてしまいそうで怖かったから。


 一人にはなりたくなかったから。


 居るだけで。


 そこに存在するというだけで僕は安堵した。


 安心できた。

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