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正しき魔王の旅記  作者: テケ
2章 あんじぇピュアラブ
46/175

016

 深夜、今は何時だろう?時計がなくて分からないが、僕は夜中に起きた。

 窓から入る月の明かりが部屋を照らして、その光の眩しさで起きたのだろうか。とふとそう思った。

 もしくは、ある違和感からなのか?

 というのも、目覚めた僕の胸の上にはアンジェは居なかった。



 寝る時、いつも僕が仰向けに寝てアンジェがその仰向けの僕に抱き着くように覆いかぶさって寝ている。今までずっとそういうスタンスというか僕の上がアンジェの寝る定位置だった訳なのだが。起きた時にはアンジェは僕の上には居なかった。

 部屋を見渡すも、隣の飽きのベット、机、床、どこにも彼女の姿は見えない。

 厠にでも行ったのだろうか?そう思うも、今までアンジェは夜中に行く際は僕を起こしていた。だからそれはない。

 そもそも、アンジェはこの部屋から一人で出ることは今までなかった。外に兵士がいるということもあり、外に出る際は常に僕と行動していた。

 今日この時まで、僕の目の前からアンジェがいなくなることなんて一度もなかった。

 だから、余計に胸騒ぎがする。嫌な予感がするのだ。



 アンジェ・・・。



 僕はアンジェのことが心配になり、探そうと部屋の扉を開け外へでる。

 そうして――僕の胸騒ぎは最悪の方へと的中してしまう。



 えっ・・・ウソだろ・・・。



 扉を開け広い石造りの廊下に出てすぐだ。

 扉のすぐ近くに僕とアンジェに良くしてくれたメイドさんが倒れていた。それも、血まみれで。

 白いメイド服は血で赤く染まり、メイド服が吸いきれなかった量の血が床に血の水たまりを作っていた。

 確認するまでもない。死んでいる。どうして・・・?



 分からなかった。分からないからこそ、急に僕は怖くなった。目の前で薄暗い廊下で人が死んでいるということに。本能的に僕は恐ろしいと思ってしまう。

 それと同時に、アンジェへの心配と一つの予感と不安が重なる。まさか・・・いや・・・。と――。

 とにかく今はアンジェを探そう。

 逃げるように僕は廊下を走りだしりだした。



 走り出した僕は、真っ先にブレンの部屋へと向かった。



 その途中、部屋の前で見たメイドさんと同じように血を流して倒れえている人間を何人も見た。もちろん、それは他のメイドさんだけではなく中には兵士も混ざっており生きているいる者はもちろん誰一人としていない。まるで地獄絵図だ。進めど進めど、いくつもの死体が道端に落ちている小石のように転がり、僕へ恐怖と気持ち悪さが襲った。


「だ、誰かー!」


 恐怖のあまり、声を上げらずにはいられなかった。誰かいないか、誰かいないかと。道行く人すべてが死んでいるこの場所で。訳の分からないまま、僕は必死に声を上げ走った。

 そうして、ブレンの部屋に近づくと。地響きと共に何かが崩れ壊れる大きな音が聞こえ、それと同時に見えたブレンの部屋の扉と壁が吹き飛んだ。


「おっさん!」


 目の前で吹き飛んだ扉に驚き立ち止まり見ると、吹き飛んだ扉と壁の瓦礫から人が動く影があり、ソレは鎧を着たブレンだということを確認ができ、ブレンはゆっくりと瓦礫から立ち上がった。


「小僧逃げろ!オレにもこいつは手に負えん!」


 何言っているんだ!?

 訳が分からなかった。一体何が起きているのか、何が壁ごとブレンを吹き飛ばしたのか。

 混乱しながらも、僕はブレンにそれを聞こうとした、次の瞬間――。



 蒼く破壊された部屋の先から光が輝き、それと共に大きな氷の岩が飛び出し、ブレンへと飛んだ。



 ズドンッ!と大きな音と共に、立ち上がったブレンをいとも簡単に押しつぶしてしまう。



 ・・・。



 目の前のことに僕はなにも考えられなかった。

 なんだこれ・・・と、その場で立ち尽くすことしかできない。

 なんなんだ、なんなんだよこれ・・・。

 訳が分からない。何が起きているんだ・・・。

 そうして、立ち尽くす僕の前にゆっくりと一つの影がブレンの部屋から現れる。



 え・・・。


 アンジェ・・・。


 アンジェだ。


 出てきた人物はアンジェだった。



 白いワンピースタイプのネグリジェを血とホコリに染めて、綺麗な金髪や顔にも血をつけたアンジェがゆっくりと僕の方へと歩いて出てくる。

 その手には金色に煌めく柄と、ルビーのように赤い血に染まった刃のナイフを手にしている。

 そして、それを目撃した瞬間に僕は思った。いや、思ってしまった。的中してしまった――僕の嫌な予感は。

 ここまでに来る間にあった死体は、全てアンジェの仕業によるモノだと。血まみれの彼女がそれを裏付けてしまっていた。



 でも、どうして・・・?

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