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正しき魔王の旅記  作者: テケ
2章 あんじぇピュアラブ
42/175

012

 翌朝、メイドさんに起こされた僕たちは眠そうにしながら朝食をとった。


 そして、その後部屋に戻る際に昨日の夜メイドさんに提案した外に出てみたいという話についてどうなったかを聞いた。どうやら、ブレンに話をとうしてくれたみたいで、メイドさんの監視付きという条件であれば出ても構わないという許可が出た。


 僕はそのことをすぐさまアンジェに伝えると、本当ですかっと喜んだ声で言い、すぐに出る準備をし始めた。


 まあ、準備をすると言っても持っていくものなどハッキリ言ってないのだが・・・、アンジェはポーチをもって僕はショルダーバッグを持って部屋へを出た。


 部屋を出ると僕はメイドさんに四角い編み込みされてできた蓋つきのバスケットを渡された。


 少し重みはあるがそれほど重くない。中身は何かと思い蓋をあけようとすると、お昼までのお楽しみですと言われ手を止められた。


 なるほど、中身は弁当かなにかなのかな。そう思って僕も楽しみと思い、開けるのを止めた。


 それから、直ぐに出発して砦を僕たちはメイドさんの誘導のもと砦の外へ出た。


 砦の外は辺り一面吹き抜けた芝生の平原が広がっており、ぽつぽつと木が何本か生えているとてものどかな場所で、すごく気候がいい場所と言うのが分かった。それを見て少しふっと心が安らぐ。


 ようやく出ることができたというのかという気分に。この時点で僕はどっと疲れた気分でもだったから。と言うのも、砦の中はメイドさんはもちろん兵士がおり。出口まではさほど距離はなかったのだが、男の兵士が通り僕たちとすれ違うたび、アンジェが僕に抱き着きうずくまって震えて足を止めていた。そのたびに僕はアンジェに大丈夫と声とかけかいほうしていたわけだが、それが何度も続いたため少し時間がかかってしまった。大変だったとか疲れたとかそういうことが言いたいんじゃない、ただ、深刻なほどにアンジェを見てられなかった、怯えるアンジェを・・・。


 アンジェは男性に怯えている、ソレを再確認させられて、牢であったことを思い出してすごく頭痛と吐き気がした。


 守れなかった自分と世の中の残虐さに、歯を噛み潰しそうなぐらぐらいの悔しさと後悔が沸き上がった。


「ここから少し歩いたところに湖がありますのでそこに今日は向かいます。お二人とも、大丈夫ですか?」


 あ、ああ・・・。


 言われて、少し強張った顔を緩めた。


 忘れよう。今日はアンジェとのんびり過ごせばいい。


「アンジェ、大丈夫かい?」


 僕は僕の服をギョッと握りくっつくアンジェに向かってしゃがみアンジェに視線をあわせ言った。


「・・・はい」


「じゃあいこうか」


 立ち上がり、アンジェの手をつなぎ歩き始める。




 歩いて数十分、開いた平原は木が多くなってきて、それをゲートにするかのように遠巻きに白色の花の花畑広いと、その花畑を境に大きな湖が見えてきた。


「今日の目的の場所はあそこです」


 言い指を指すメイドさん。なるほど、確かに気分転換にはいい場所だと思う。綺麗な白色の花が咲く花畑に、太陽の光を照らす湖。すごく自然豊かな場所だ。確かに、ここならばアンジェも気楽になれると僕も思う。


 ――歩き、湖は近づき、ようやく僕たちは花畑へとついた。


 花畑は遠巻きに見ていた白い花ユリのようにラッパ型に歯を開きすごく美しい花を咲かしていて、それが湖を囲むように辺り一面に広がって、緩やかな風が吹くと花は風に揺れすごく花のいい匂いを飛ばしている。湖は透き通っていて、日の光を反射して魚が泳いでいるのが見えすごく綺麗なのが分かる。空には青や緑、赤や黄色の見たことのないスズメ程の鳥が小さな声をもらし飛んでいる。聞いていてすごく癒される口笛だ。


「お兄さん、すごい綺麗です」


 そう言ったアンジェが、僕の手を離し花畑へと入っていく。


 大人びているような性格はしているが、やはり根は子供のようだ。


「ではしばらくお二人でごゆっくり、私は遠巻きで仕事をしながら監視をしていますので」


 そう言ってメイドさんは湖沿いを歩いて行く。


「はい」


 仕事しながら監視って、あの人一人でできるのかな?そもそもここでする仕事ってなんだろう・・・?


 どこかに行くメイドさんを横目に、僕は花を踏まないように横に生えている木の木陰へと行き荷物を降ろして、太い木の枝を背にして腰を下ろす。


 前にもこんなことがあったな・・・。


 快晴の雲一つない青い空を見上げ、僕は思う。まあ、あの時は夜でこんなにもすっきりとした気分でもなかったけおど・・・、むしろ異世界に来て迷子になって心細くて後悔していた。あの頃の後悔が今もない訳でもないけど、吹っ切れはしたと思う。いまさら帰りたいとも思わない、向こうの世界では僕は死んでしまったことになっているし。なっているていうか死んでしまったわけだしね。それに――今はアンジェが居る。この子を守ろう。そう思ったから。僕はこの世界に来たことに後悔はしていない。


「おにいさんっ」


 呼ばれ視線を落とすと、アンジェが僕の顔を覗いていた。


「どうですか、これ」


 言って、頭を下げて見せる。下げた頭には咲いている白い花で作った冠が載っていて、僕に向かってアンジェははにかんだ。その笑顔はすごくかわいい。


「似合ってるよ」


「えへっ、お兄さんにもプレゼントです」


 言って、アンジェは持っていた花の冠を僕にかけた。


「お兄さんもこっち来てください」


 アンジェが僕の手を引っ張る。本当に、ここに来れたことが嬉しかったのか今までにないぐらいのはしゃぎようだ。僕は言われるまま手を引かれ、木陰から出て花畑へとはいる。


「えいっ」


「うおっ――!?」


 途端、アンジェが僕へに飛びついて。僕はその勢いで後ろに倒れた。花がクッションなっ僕が倒れた勢いで花弁が舞う。


「えへへっ」


 倒れた僕にまたがりアンジェはにこやかにはにかんだ。


「アンジェ」


 青い空がいっぱいに視界に広がり、ぽかぽかと暖かい日差しが僕たちをさす。その日差しをバックにアンジェはまばゆいぐらいの笑顔で笑う。


 ああ――この笑顔が見えただけでも、僕はこの世界に来て良かった。そう思いすらした。


 僕はこの心地よい自然に、身を任せるように目を閉じる。


「お兄さん?」


 目を瞑った僕を不思議そうにアンジェが呼ぶ。


「すごくいい匂いがするんだ」


 暖かい優しい風が吹くたび、風にのって香るミントに似ただけど甘い匂いリンゴのような匂い、その匂いを肺一杯に吸い込み、深呼吸をする。

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