011
入浴後、上がった僕たちはメイドさんに用意された寝間着。僕は無地のTシャツに短パンで、アンジェは白の少し透き通るフリルやレースのついたワンピースタイプのネグリジェへと着替えて部屋に戻った。
無論、言うまでもなく戻る際の誰も通らない薄暗い廊下で、アンジェはずっと僕のTシャツを両手でグッと掴み、僕の後ろに隠れるようにしてくっついて歩いていた。
やはり、この砦はアンジェにとってはあまりよくない環境に違いない。部屋や浴場以外は常に怯えているのだから。そう思った僕は、僕たちを案内するメイドさんに一つ頼みごとをしてみた。
頼みごとの内容は簡単な提案だ。アンジェの為に砦から少し出れないか?砦以外の場所ならどこでもいい、森でも平原でも、こんな兵士だからけの場所よりは全然ましなのだからと。ここでは休まる心も休まらないと。要は、簡単なピクニックをできなものをしたいと提案したのだった。
――提案の結果から言うと、提案はメイドさんがブレンに掛け合ってくれるとのことで、返事は明日の朝伝えれるとのことだ。
やはり、メイドさんから見てもアンジェの怖がりかたは異常に見えたようで。少しでも楽にしてあげたいという気持ちがあるらしい。メイドさんに、僕はこの世界にきてようやくまともな思考してくれる人間に会った気分だった。
ただ、この件に関してはアンジェには伝えていない。部屋にアンジェが入ったのを確認してから、メイドさんにこっそりとお願いしたからだ。理由としては、下手に期待させてそれが実現しなかった時、ガッカリさせてくなかったので。それだけの理由だが、今のアンジェにはそれすらも重要なことだと思ったから。
もし、許可が出たのならサプライズということにしておこうと僕は思った。
そうして、メイドさんが帰っていったあと、また少し僕の魔法の練習をしてから寝ることにした。
昨日と同じベットに仰向けになり僕は寝ころび。アンジェはその僕の胸の上に抱き着くようにしている。
「アンジェ、なんでキミは僕の上に乗っているのかな?」
僕のに抱き着いているアンジェに僕は言った。
「嫌ですか?」
抱き着いたまま顔を上げ言う。
嫌じゃないが・・・。
隣にベットはもう一つある。だから、わざわざ僕の上で寝なくともと思っただけだけだけれども・・・。
「嫌なら、離れます。でも・・・一人は寂しいので・・・」
そう呟いて起き上がろうとしたアンジェ。
「嫌じゃないよ」
僕は起き上がろうとしたアンジェを両手で抱き寄せて、抱きかかえた。
「お兄さん?」
「これなら寂しくないでしょ?」
優しく、微笑み言う。
「はい・・・」
小さく答え、アンジェは再び僕に抱き着き目を瞑る。
僕も目を瞑り、そのまま意識は眠りへと落ちる。
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きゃはは――
そんな甲高い奇妙な笑い声で僕は目が覚めた。
いや、目が覚めたというのも正しい言い方ではない、まだ僕は夢のなかにいる。ここは夢の中だ、何もない真っ暗な空間、360度どこを見渡してもどれでだけ遠くを見ても続いている真っ黒な闇は途切れることなく続いている何もない空間。そこで僕は目が覚めた。
ただ、真っ暗で何もないといっても、何もないだけであって誰もいない訳ではない、闇の中、周りの闇に溶け込むような漆黒のフリルがいくつにも重なって膨らんだドレスを着た青色のロングヘアーの少女が僕の前に立っている。
ミレアスフィール――僕が目を覚ました時聞こえた笑い声は彼女のものだ。無症状で、笑っていない瞳で機械のように僕を見て口を開けて奇妙で不気味に笑っている。
「ミレア、その・・・アンジェのことありがとう」
笑うミレアに、僕は昼間に暴れだしたアンジェを落ち着かせてくれとことをについて礼をする。
「きゃはは――少年、少しは自分の呪いに気を使った方が良いわよ」
呪い・・・じゃあやっぱり、あれは僕の呪いが原因で・・・。
「さあ、どうでしょうね?きゃはは――」
目の笑わない笑いをしてはぐらかすミレア。
「ただ――」
ただ?どうしたというのだろう。笑いをとめ小さくつぶやく。
あの男の前に姿を現したのは良くなかった・・・。
ん?何かを言ったようだが僕には聞こえなかった。
「少年――魔法を覚えるのは構わないけれど。あまり使わないことをお勧めすわ。きゃはは――今日はその忠告だけよ」
「あ、おい」
言って、ミレアは振り返り闇の中へと歩き消えていく。止めようとするが、視界が歪み僕の意識は闇へと落ちる。どうやら、ミレアに強制的にこの空間を落されたようだ。
僕の意識は睡眠へと戻っていく・・・。