009
扉を開けるとそこには露天風呂が広がって星空が綺麗だった。
なんてことなく、石造りの大きな浴場が広がっていた。ただ、露天風呂のような感動はないものの大勢の人が同時に使う場所でもあるのでそれなりの広さがあり、湯船も少し泳げそうなぐらい大きく二人だけではありあまるほど大きかった。
浴槽からは煙がモワモワとうっすら出てすこし曇って見える。
露天風呂ではないが、石造りなどの雰囲気から旅館の旅館の浴場ようでもあった。
「大きいな」
「ですね」
見たままの感想を言いつつ僕たちは入っていき、鏡と蛇口?の前にある木の椅子へと座った。
ただ、座ったのはいいが、これはどうやってお湯を出すのだろうか。どう見ても蛇口のようで蛇口ではない。レバーのようなものがついているが横に捻れるわけでもない。
「アンジェこれ、どうやって湯を出すんだい?」
隣に座ったアンジェに聞く。
「どうって、これをこう動かすんですよ」
言いながら僕の方へと身を乗り出して、蛇口のレバーみたいなものを上下にペコペコと動かし始めた。
ペコペコペコとこすれる音が鳴るのを見ていると、しばらくして蛇口の口からお湯が割と強い勢いでお湯が出てくる。
なるほど、ポンプ式なのか。
お湯を吐き出す蛇口を見ながら、ようやく僕はその仕掛けを理解する。蛇口のように捻って水を出し終いする技術がないのかは分からないが、古典的であるのは確かだ。ただ――お湯が出るポンプとはまた画期的だな。お湯の温度も、熱くもなく冷たくもなく人肌にちょうどいい温度だ。
「お湯は放っておくと止まりますので、出し続けたいときはそのとってを動かすと出続けます」
言って自分の方の蛇口からアンジェはお湯を出す。
それを見てから、僕はお湯を気の桶に溜め頭から一気にお湯を被る。
ドバーッと一気に自分を流れ、すっきりとする。
お湯を浴びたのなんていつぐらいだろうか。お湯を浴びるのだけでもすごく気分が晴れた気がする。
「お兄さん、あっち向いてもらっていいですか?」
「ん?」
今更はずかしくなったのだろうか、自分もお湯を体にかけたアンジェが言う。
「いいから、あっち向きになってください」
そう言って、小さな両手で僕の体を掴みアンジェは反対側を向かせようして、僕は言われるがままそちらに体ごと向き直った。
そして、すぐに僕の背中にフワッとした感覚の物が触れる。アンジェの手ではない、何か別のものの感覚。押されるように当たるそれが何なのか僕は振り返って見て・・・。
「どうしたんですか?」
あ、いや・・・。
今更だが、僕は童女趣味ではない。ここまで平然と来てしまったが故にすごく今更なのだが――決して違う。これは僕の名誉のために言っておくが決して違う。
そもそも、そんな趣味の持ち主ならば昨日から今朝の時点で手を出しているだろう。いや、それ以前に、牢の中で手を出しているかもしれない。だから、僕の名誉が残念な事にならないうちに言っておくが、ドキッとしたとか興奮したとかそういうのではない。
ただ、振り返ってみたら、目の前に女の子の上も下も隠れてない姿がどアップであればそりゃ―誰だって止まるだろう。主に思考とかそういうのっ。だから――僕はゆっくりと顔を前に戻した。アンジェは特に気にしていないようだけれども、流石にそう長々と見てはいいものではないと思うので迅速にそうした。いや、見たいわけではないのだが、とにかく僕はまっすぐ前を見直した。
「なんでもないよ、それよりそれは石鹸?」
不思議に思うアンジェに、僕は他のことへと話題と思考を変えようと聞いた。
背中はさっき見た時、白く泡立っていて僕の背中を押す物はアンジェが持ち込んだタオルだった。
「はい、そこにあったので」
僕の背中をごしごしと押すようにこすりながらアンジェは言う。
「痛くないですか?」
「ああ、気持ちいよ」
アンジェの力は強くないので精一杯やってるつもりだろうが、痛くはない。それが程よく気持ちがいいぐらいだ。僕は必死に背中を流すアンジェに身を任せることにする。背中を誰かに流してもらうなんて初めてではあるが、悪いものではない、むしろこれを毎回する人たちが毎回する気持ちが分かるぐらいである。
静かに僕の背中をアンジェがこする。
「――お兄さんの背中はおおきですね」
不意にアンジェが言った。
「そうでもないよ。僕は他の人より小さいからね」
そう――僕はそこまで大きくはない。160㎝前後と年の割には低くく、その上――筋肉がない訳ではないが、筋肉質でもなければ太っているわけでもないので平均よりはるかに小さい。この世界では子供に見られるぐらいだろう。現にアンジェとの身長差は頭と首の分ぐらいでそう変わらない。見上げるぐらいに高いブレンはもちろん。ここに案内してくれたメイドさんよりも僕は低かった。多分、この世界の人の平均身長はそれなりの高さなんだろう。元々が低いこともあってなんだか小人の気分がした。
アンジェが僕の背中にお湯をかけ石鹸の泡を流す。
そして、流し終えるとピタリと僕の背中に顔からもたれた感触があった。
「でかいですよ・・・」
小さく言う。
いま、アンジェが何を考え何を思っているのか僕には分からない、けれど彼女が何か想いソレを僕の背中に感じているのは分かる。
「お兄さん、アンジェにもお願いしてもいいですか?」
もたれたまま言うアンジェに僕はああと答え。
二人とも向きを入れ替える。




