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正しき魔王の旅記  作者: テケ
2章 あんじぇピュアラブ
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005

 部屋に戻ると、アンジェは寝ているかと思ったが彼女は寝ておらず、ベットに半ば放心状態でただただ座っていた。心ここにあらずという感じか、入ってきた僕にすら反応しない。


 アンジェの前に僕は膝をつき視線を合わせる。


「おにいさん・・・ごめんなさい」


 謝るアンジェ。さっきの事を気にしているのだろうか。すごく申し訳なさそうに、涙を浮かべている。そのアンジェに僕は大丈夫だよと声をかけつつ、袋を漁り袋からルビーのペンダント出してアンジェの首にかけてやる。大きく重そうだが、小さいアンジェには逆にそれが可愛く見えた。


 そして、もう一つ。


「返してもらってきた。これも」


 金色のナイフも袋から出して、手渡し、僕は微笑むもう大丈夫だよと。そうしたらアンジェの表情はゆっくり崩れていき、僕に思いっきり抱き着いた。


「お兄さん・・・ひくっ・・ひっく・・・。おにいさあああああああああん」


 崩れ、貯めた感情が溢れ泣き出す。


「ありがと・・・ありがうございます・・・」


 泣きながら、途切れ途切れに礼を言うありがとうと、僕にキュッと強く抱き着き泣く。昨晩、聞いた小さなすすり泣きではない。大きな鳴き声を。今まで溜まっていた物を全部吐き出すかのように。










 しばらくして、アンジェが落ち着きを取り戻し泣き止んやんでから、僕たちは袋の中身をすべて出した。一つ一つ床に並べながら出してみると、衣服以外の所持品は全て残っていることは分かった。僕のショルダーバッグはもちろん、中に入っている教科書や空の弁当、水筒や財布、電池は切れているがスマホなどすべての所持品が戻ってきた。水筒と弁当は中身が腐っていそうでなにか色んな意味で怖いので危険物を扱うように淵の方に追いやる。


 アンジェの所持品はそこまでないようだ。


 首にかけてあげたペンダントと渡したナイフを除き、ナイフをしまう収納がついたベルトに、小さなポシェットで、その中からこの世界のお金やら少しの食べ物が出てきただけで。旅をしていた割に軽装だったので不思議に思い聞いてみると、どうやら必要な飲み水などの物は魔法で召喚していたらしく、元々呼ばれて森に入っただけで、すぐに教団の者と合流するつもりだったのであまり食料とか持ち歩いていなかったらしい。


 ちなみに、サラっと魔法で召喚とか言われたが、僕はよくわかっていない。召喚するんだからなんか出すんだろうという、勝手な僕の解釈で話を進める。


 制服がなくなってしまったのは残念だが、ここまでほぼ全ての所持品が戻ってきたのは幸運だと思う。


 まあ制服については後でミレアに戻せるかどうか交渉しよう。


 それはさておいて、広げた僕の所持品を見て、主に教科書類にアンジェは興味津々の様子だったので、見てみる?と僕は国語の教科書を手渡した。


「読めません」


 だよね・・・。


 適当にぺらぺらと開き真ん中あたりで止めたアンジェだが、書かれているのは日本語の文章なので案の定読める訳がなくそうつぶやいた。


「お兄さんは本当に、この世界の人じゃないんですね」


 見たこともない文字に見たことない物を目の当たりにして、そういえば、ブレンに話す時に一緒に聞いていたアンジェがふと言う。


「ああ、おかげでこの世界のことはよく分かんないんだよ。言葉や文字はミレアのおかげで分かるけど、魔法とか国とか言われてもさっぱりだ。そう言えば、教団ってなんなんだい?」


「それは・・・」


 簡単に愚痴っぽく飛ばした言葉だが、教団と言葉を出した時、アンジェの体が一瞬ぴくッと反応して、震え始めた。


「あっ、いや言いたくないなら言わないでいいよ」


 いけない、まだ心が不安定なアンジェに詮索なんてしては――またこの子を気づつけてしまう。


 僕は慌てて撤回したのだ。


 けれど、アンジェは答える。

 

「教団はよくわかりません。アンジェをこの森に呼びつけて何がしたかったのか分からりませんし。ただ・・・」


「ただ?」


「教団の目的は、この世界をまた女神様が収める世界に戻すというのが目的だそうです」


 女神?そういわれ、ミレアの事を思いつく。あんな性格の悪いやつが世界を収めてたのかと思うと、なんだかいい感じはしないけれど。


「じゃあミレアを探してたのか?」


「ウンディーネ様だけじゃないです。昔は女神様は全部で七人七つの国に居たそうです」


 なるほど、なんだかまた壮大な話になってきたけれど・・・。じゃあ、アンジェはその為に教団に入ったのか?ブレンにはおかあさんを探すためとか言っていた気がしたけれど・・・。


 僕はそれを聞こうとしたが、やめた。まだそこは踏み込まない方がいい。教団って聞いて敏感に反応するぐらいだから、また嫌な思いはさせたくない。そう思って僕は聞くのを止める。


「お兄さん」


「ん?」


「ごめんなさいごめんなさい」


 不意にアンジェが誤った。何がごめんなさいなのだろうか。


 むしろ謝らないといけないのは僕なのに。


「お兄さんを教団の人にしてしまうところでした」


 それがどうかしたのだろうか。あれはアンジェが僕をかばうためだったのだから、全部台無しにした僕が謝るべきだと思うのだが・・。


「教団の人は容赦なく捕まります。国によっては死罪になるところもあるそうです。だからアンジェはお兄さんを――」


「いや、いいんだよ。キミは僕をかばうために言ってくれたから。僕はそれがうれしかった。それでいいんだ。教団がどんなものか僕は正直知らない。けど、キミは僕を助けようとしてくれたんだから、それでいいんだ」


「でも・・・」


 アンジェの頭を撫でる。


「僕はこうしてなにもされていない。自分をそんなに責めちゃいけないよ」


 人のことを言えるのかと言われてしまえばおしまいだか、この子には自分を責めてもらいたくない。


「ありがとうございます・・・」


「この話は、おしまいだ。それより、魔法について教えてもらってもいいかな?」


 なんだか、しんみりしてしまったので僕は話を切り替える。


 実際、魔法には興味あるし、使えるものなら僕も使ってみたい。できれば、アンジェを守れるぐらいには何かと備えておきたい。


 異世界なんて何が起きるかわかったもんじゃないんだから

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