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正しき魔王の旅記  作者: テケ
2章 あんじぇピュアラブ
33/175

003

「なるほど――お前は事情はわかった。だが、女神は勇者によって同意の元、力を封じ込められたと聞いたが・・・。まあいいだろう」


 洗いざらい話したのだった。僕がこの世界にどういった経緯で来たのか、どうしてあの森に居たのか。ごまかしてくれたアンジェには悪いことをしたと思うが、包み隠さず全て話した。


 そもそも、この人には嘘をついたとこでそれをごまかし切れる訳がないらしい。なにより――勇者なる日本人が僕よりも先に、それも500年も先にこの世界に居てこの人は会ったことがあるというらしいのだから。他の世界から来た人間の前例を知っていたうえ、最初に僕を見た時に左右非対称の色をした瞳の僕とアンジェを見た時に勇者を思い浮かべたらしい。その辺はよくわからないが、様相が似ていたのだろうと思う。正直僕の眼の色が変わっているのは僕自体言われるまで今の今まで気づかなかったけれど・・・多分ミレアのこれは影響だろうとは思うけど・・・。それを抜きでも500年も前でも同じ日本人なら似たところもあるだろう。


 まあそれはそうと、500年前の人間が今も生きていて勇者してるっていうのが色々吹っ飛んでいるわけだけど・・・。


 ミレアは聞いても何も答えないし、一度会ってみたいとは思う。あったところで、何をするわけでもなければ何かを聞くわけではないのけれど・・・。同じ日本人というのは会っておきたいと思った。


「それで、そっちの小娘だが・・・」


 僕への尋問は終わったようだ。結果から言うなら。僕はブレンからしてみれば無害認定、要監視となった。


 僕は良いらしい。僕は・・・。


 アンジェが僕の服を掴み隠れる。


「お前には聞きたいことが小僧よりも多い訳だが・・・。まずはこれだな」


 そう言うと尋問のターゲットを僕からアンジェに変えたブレンは、袋の中から一つ金色の棒を取り出した。


 棒と言うのは僕の適当な表現だが、実際は棒ではなくナイフだ。金色の鞘にハマった金色の柄の一凛の薔薇の模様が彫られた包丁程の大きさのナイフだ。


「―――」


 ナイフを取り出され見せられた瞬間、僕の服を掴むアンジェの手は強く握り表情は強張り瞳の瞳孔は開いて歯を噛み締め。


「アンジェの返してえ!!」


 怒鳴ったのだった。


 僕の後ろで、弱々しくよそよそしく小さな声でしゃべっていたアンジェが、荒々しい声を上げて怒鳴った。


 ――アンジェ?


 さっきまで弱く警戒した顔は、ブレンを睨みつけていた。


「返して欲しければオレの質問に答えろ。このナイフは薔薇十字騎士団のものだろう?それもこいつはただのナイフじゃない、魔力を斬ることができる特殊な魔晶石でできた刃を持つナイフだ。答えろ、なぜ、お前が持っている」


 睨むアンジェにブレンも威圧して問う。そんなにも重要なものなのかそれ・・・。


 言っていることは僕には分からない、けれど、ブレンの様子とアンジェの様子から簡単に冗談で済むような話ではないのは僕にも理解できた。ブレンにとっては僕よりもアンジェの方を問題しているようだった。


「アンジェがおかあさんからもらったの!返して!」


 声を荒げ、さっきまでとは考えれないぐらい感情を乱して怒鳴る。


「母?お前の母は騎士団の者だったなのか?」


「知らない!おかあさんはもう昔に居なくなっちゃの!だからアンジェはあかあさんを探して旅してるだけっ!もういいでしょ、返して!アンジェのナイフとペンダントっ!!」


 ブレンを睨みつけ、半泣きになって怒鳴り散らすアンジェ。今にも飛びかかりそうだ。そでも、そのアンジェにブレンは何も動じない。言われ布袋の中に手を入れる。


「ペンダント?ああこの魔晶石のことか?」


 そういって袋から出される、手のひらサイズほどの大きさがあるルビーににた宝石が金のフレームハマる首飾りを出した。


「これほどの魔晶石。白薔薇の魔女でもないと生成加工できないものだぞ」


「っ―――」


 アンジェがひどく崩れた顔をして僕から腕を離す。


 まずいっ!?とっさに思った。


 途端アンジェ前に出した腕を僕は反射的に握っていいた。アンジェの広げた手のひらの前に一瞬蒼白く光る図形が現れるが、僕が握ったことでそれは消えた。


 危なかった――今とめてなければアンジェはきっと氷の刃をブレンに向かって撃っていた。それはこの事態を悪化させるだけだ、そう思った瞬間、体が反射的にアンジェの腕を掴んでいた。


「ああ・・あぁ・・・」


 アンジェ?


 と、腕を僕に掴まれたアンジェの様子がおかしかった。


「・・・いやあああああああああああああああ!」


「ちょっ!?」


 叫びだし、掴まれた腕を自分の体が倒れる勢いで強引に振り払い倒れた。


 倒れ・・・。


「いやああぁ・・・」


 頭を抱えその場にうずくまった・・・。


「アンジェ?」


「いやあああああああああああああああ!」


 膝を着き肩に手を賭けた瞬間、更に叫び声を上げ縮こまる。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい――いやあああああああ」


「アンジェ!!」


 叫び泣きじゃくるアンジェを抑え、僕は抱き寄せる。


「いやあああああああいやああああああああああああああああ」


「アンジェ落ち着いて」


 暴れるアンジェを必死に抑える。


 これは多分――僕が悪い。


 引き金になったんだろう。僕が腕を掴んだことで・・・。


 思えば、こんな小さな子が牢であれほどのことをされて平気でいられるはずがない。むしろ今まで平気な顔をしていた方がおかしい、普通は、壊れる。何が彼女の精神力をここまでつなぎとめていたのかは知らないけれどもよく持っていた。けれど、それが今の弾みできっと切れて壊れた。母の形見だというナイフやペンダント、それを目の前に見せられて、感情と思考はそこで一気に膨れ上がって伸ばした腕を掴まれたことで破裂した。そう――掴まれて。牢で幾多も捕まれ押さえつけれれていたアンジェには、雷にでもうたれたぐらいのショックだろう。


 要するに、僕はトラウマに触れてしまったのだ。そして、一度膨れた感情が破裂すればあとは崩れるしかない、さながら積み木細工のように・・・。


「いやあああああああああああ」


「アンジェ――」


 抑えるも、アンジェは暴れ続け僕の声も届いていない。それでも僕は必死にアンジェを抱きしめる。


 頼むから落ち着いてくれ・・・!


「いやあああああああああああああ!」


 きゃはは。


 ミレアが僕の右眼から現れる。


「女神・・・」


 きゃはは。目の前に現れた驚くブレンだが、ミレアはそんなこと気にする余地もなくしゃがみ、暴れるアンジェの頭に手をかけて――そして何をするかと思えば撫でたのだった。不気味な笑みを浮かべ優しくミレアが撫でると。アンジェは次第に落ち着きを戻していき暴れるの止め、静かに寝息を立てて眠り始めた。


「きゃはは」


 ミレアがアンジェを眠らせた・・・?分からないけれども、さっきまでの大暴れしていたのが嘘のようにアンジェは落ち着いた様子で寝息を立てている。


「ミレア?」


 ミレアを見るも彼女は直ぐに水のようには弾け光となって僕の右眼へと消えていった。


 きゃはは。少年、少しは考えて行動しなさい。


 ・・・?


 なんなんだ・・・。


 途端、部屋の扉が開く。


「ブレン様、今のは!?」


 兵士とメイドさんが突入してくる。アンジェの悲鳴で待機してたメイドと兵士が異変に気付いて慌てた様子で入ってきた。


「問題ない。下がれ、それと――その小娘を部屋に連れてってやれ、小僧には話がある」


 言われ、兵士は下がりメイドさんは僕からアンジェを受け取る。


「大丈夫ですので」


「あ、ああ・・・」


 アンジェを受け渡す。


 そして彼らは何事もなかったみたいに部屋を出て言った。

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