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正しき魔王の旅記  作者: テケ
1章 偽善ジャスティス
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 一体どこに向かうのでしょう・・・。


 大きい兵の人は途中でいなくなり、メイドのお姉さんさんがアンジェ達を案内して砦内を進みます。


 正直、驚きました。女の人がここにいるなんて・・・。アンジェへの扱いを思うと、てっきり男の人だけだと思いますし・・・。


 嫌です――もう思い出したくありません。こんなことは考えるのはやめましょう。


 お兄さんの腕にしがみつきます。


 しがみついたアンジェに不思議な顔をしてアンジェのことを見ましたが、優しい顔をしてお兄さんはアンジェに気にすることなく前へ向き直ります。


 優しいです。暖かいです。


 お兄さん・・・アンジェは・・・。


 お兄さんの顔を見ます。


 その顔は、今も気の緩まない真剣な顔。大きい兵士がいなくなって、メイドのお姉さんに案内役は変わっても、お兄さんはまだ警戒をやめていませんでした。


 当たり前です。信用ならないのですから・・・。


 アンジェ達は裏切られた、もてあそぶだけのために・・・だから、しっかりと安全になるまでは安心できません。


 ・・・。


 お兄さんは、また、アンジェを虐める人が居たら助けようとしてくれるでしょうか・・・。多分、きっと助けようとしてくれると思います。そう思いたいです。


 ――だからなのかな。


 アンジェはもうお兄さんと離れたくないと思いました。


 ずっとずっと一緒に、こうして寄り添って居たいと・・・。


 女神様は言いました。お兄さんとアンジェは長い長い旅をすると――お兄さんと、アンジェのおかさんを探す旅。


 悪くないです。そう思うと――少しはにかんでしまいます。こんな状況なのに・・・。


 おにいさんとずっと一緒に・・・。


 ずっとずっと一緒に・・・。


 大好きなお兄さん・・・。


 もう離れたくないお兄さん・・・。


 一緒に・・・。


 永遠に。


 一緒に。


 もう離れたくない。


 どこへも行ってほくない。


 大好き。


 好き好き。


 好き好き好き。


 だから――、


 だから、だから、だから――、


 お兄さん好き。


 好――き――。


 アイ――シテ――ル――。


 永遠に――ずっと。


 もう――ハナレラレナイヨウニ――。


 ズーット――イッショニ――。


 コロシチャエ・・・。


 ソウスレバ――ズーットイショ・・・。


 コロシテ、アンジェモイッショニ――。




 アンジェモイッショニシンジャエ。




 とある部屋に案内されてそこでアンジェは早速行動を始めました。


 全てはアンジェとお兄さんがずっとずっと一緒に居るため、離れないために。


 この好きっていう気持ちを変えたくない、永遠にそう思っていたいから、そのためにアンジェは行動を起こすのです。


 部屋に入ったお兄さんは気が抜けたようにベットへ飛び込みました。


 きっとお兄さんも疲れていたんですね、そうですよねきっと、早く楽にしてあげないと。


 こういう部屋の机には大抵、手紙を開けたりするのにナイフがあると思います。これはアンジェの数少ないおかあさんとの思いで、机にお母さんが閉まっていたのは知っていました。


 だから――ほら、ありました。


 小さな細い手紙を斬るナイフ。


 アンジェの小さな手でも握りしめることができます。


 手に強く握りしめます。そうして、お兄さんの横になっているベットに向かうのです。


 多分、アンジェの弱い力ではナイフを突き刺すのも大変です。


 片手にはナイフを握り片手は体を覆う布を抑えています。


 だから、少し恥ずかしいのだけれどそんなこと言っていられません。


 それに、大好きなお兄さんになら別に構いません。


 アンジェは布を下ろし、寝っ転がっているお兄さんを跨いで馬乗りになって、両手でナイフをお兄さんの首元に突き立てました。


 これを振り下ろせば・・・アンジェは永遠に・・・。


 ――あ・・・。


 腕は動きませんでした。


 どんなに力をこめて突き立てたナイフをお兄さんの喉元に刺そうとしても、アンジェ手はガタガタと震えて動こうとしませんでした。


 何故でしょう。何故なんでしょう・・・。


 アンジェはお兄さんをこんなに好きなのに・・・。


 あ・・・っ・・・。


 うごかない・・・。


 お兄さんを好きなアンジェの気持ちが嘘だからなのでしょうか?動きません、動かないのです。大好きなのに。


 スキダカラコソサナキャイケナイノニ。


 ハヤク、コロサナイト。


 オニイサンガテイコウスルマエニ。


 っ――。


 殺せない・・・。


 お兄さんがアンジェの手を握りました。


 ほら、もたもたしているからこうなるのです。


 きっと、アンジェは跳ね除けられて殴られてしまう。お兄さんもこんな子を好きになったりしません。嫌いになる。


 なのに・・・。


 どうしてお兄さんは大丈夫なんて・・・。


 アンジェは好きお兄さんが好きだから殺そうとするのに。


 好きなのにどうして嫌わないのでしょうか・・・。


 なんでやさしい顔をするのでしょうか・・・。


 いや・・・え・・・。


 スキダカラころさない?スキダカラころす?


 スキ・・・。


 アンジェは一体なにを?


 お兄さんからアンジェはナイフを外し、ベットの下へと落としました。


 あんなに力を込めて刺そうとしても動かなかった腕はいとも簡単に動いて・・・あんなにも石のように動かなかったのに・・・。


 アンジェはなぜお兄さんを殺そうとしていたのでしょうか・・・。


 お兄さんとずっと一緒にいたいのに・・・そんなこと。


 なんて・・・。


 自分が自分でないような・・・。


 怖いです。あの牢屋での怖さと同じ・・・怖さ・・・。


 お兄さんに抱き着きました。


 もう、あんな怖い思いはいやです。


 だから、お兄さんと離れないように。


 そしたらお兄さんもアンジェを抱きしめてくれて、すごくすごく安心します。


 そうして、ようやくアンジェは理解しました。


 アンジェ達は助かったのです。


 あの怖かった日々から・・・。

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