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正しき魔王の旅記  作者: テケ
1章 偽善ジャスティス
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 飛び出した先は外でした、それは間違いありません。はい、念願の外です・・・。


 でも・・・。


 飛び出した、確かに外でした。ですが、そこでアンジェ達は兵士に囲まれてしまったのです。


 ここは砦です、入ってくるときに一度見ているので分かります。


 そして、アンジェ達が捕まっていたのはその建物ないの一角です。


 でもただ、こんな夜の時間にどうして兵士が外に集まっていて、建物から飛び出したアンジェ達を囲んでいるのでしょうか・・・。


 ――明らかに不自然です。


 アンジェとお兄さんは、兵士たちに囲まれて、突きつけられた槍に後ろへとじりじりと下がります。


 それでも、お兄さんはアンジェを守るよにしてくれます。


 でも・・・それでも・・・突きつけられる槍は迫ってきます。


 お兄さん・・・。


 すごく苦い顔をするお兄さん・・・。やっぱり、アンジェ達は逃げられないのでしょうか・・・。


 ――ミレア!


 お兄さんが突然叫びました。


 ――ウンディーネ様の名前?


 瞬間、アンジェ達を囲む兵士の槍が全てこま切れに斬れます。


 これは――ウンディーネ様の水の刃・・・。


 お兄さんの合図で、ウンディーネ様がアンジェ達を助けてくれたのでしょうか・・・?


 分かりません。けれど、アンジェ達を囲む槍はなくなりました。今ならさっき砦の中で出した魔法で・・・。


 回りの兵士が剣を抜き出していますが、さっきのアンジェの氷のナイフなら、反撃を受けることなく全員を殺すことができる。


 そう思い、手を出そうとした瞬間。


 ――何をしている!


 その声で、兵士もアンジェの注意もそれました。


 ずっしりとした大きい兵士が出てきました。


 この人は――多分、この部隊の隊長ですかね・・・。


 でも、なんで他の兵士たちを撤退させるのでしょうか・・・。


 兵士と出てきた大きい兵士は、他のアンジェ達を囲んでいた兵士たちを返してしまいました。


 なんで・・・。


 でも、今なら――。


 アンジェは手を前を出します。


 ――飛んで――消えて!


 氷のナイフを何本も飛ばします。


 ――っ。


 その瞬間、お兄さんに手を引かれ横に走りました。


 少し痛いですが、確かに絶好のチャンスです。今なら、


 ――えっ!?


 走りだした、アンジェとお兄さんの目の前で風が道を裂き、地面を削って土を蹴散らし、アンジェとお兄さんの道を塞ぎます。


 とっさにお兄さんとアンジェは止まりました。


 今のアンジェの氷のナイフごと吹き飛ばしたのでしょうか、走って見ていなかったので分かりません。でも、いくら大きいからって剣を振っただけでこれは反則でしょう。


 どう魔力を飛ばせばそうなるんですか・・・!?


 ミレア――!


 お兄さんが叫びました。


 ウンディーネ様に頼んだのでしょう。よくわかりません


 でも、ウンディーネ様ならさすがに、


 ・・・えっ!?


 ウンディーネ様の水の刃を斬るように出たのに、逆に振り切られてしまいました。


 アンジェの手を握るお兄さんの手に、力が入ります。


 お兄さんも、これは予想がいのようです。それもそうですよ、なにせ、女神様の力が壊されたのですから・・・。


 お兄さん・・・。


 お兄さんが慌ててアンジェの手を離し、檻の棒を両手で握りました。


 ・・・。


 アンジェはどうすれば・・・。


 分かりません、この状況でどうすれば。きっと、氷のナイフを飛ばしてもまた壊されてしまいます。


 だから・・・せめて、おかあさんのナイフがあれば・・・。


 大きい兵士の人が腕を組み偉そうにこちらを見ています。


 そして、こう言いました――教団の娘。


 やっぱり・・・アンジェが教団に入ってることはばれているんですね・・・。


 だったら・・・やっぱりアンジェは殺される・・・。


 お兄さん・・・アンジェは死にたくないです・・・。


 大きい兵士の人が笑ています。


 そして、まるでお兄さんをからかうようにいうのです、そんな震えて大丈夫かって・・・。


 見ると、お兄さんの膝と、牢の棒を握る手は小刻みに震えていました。


 アンジェも怖いかった・・・でも、やっぱりお兄さんも怖かった・・・。


 アンジェは勘違いをしていました。


 あのひどい数日のなかで、お兄さんはアンジェをずっと助けようとくれました。結果がどうあれ、だから――強く、かっこよくも見えました。なにも、怖くない、恐れないそんな人・・・そう思っていました。


 けど・・・。


 お兄さんがアンジェのことを見ます。


 すごく、引きつった顔。それでも、お兄さんはその顔を、アンジェを見ると顔を引き締め、震えを止めて大きい兵士に向きなおします。


 ずっと、我慢していたんですね・・・。


 お兄さんが・・・こんな怖いことを頑張って立ち向かっているのに、アンジェはどうでしょうか・・・。


 女神様に助けを求めて、お兄さんに助けを求めて・・・。


 ずっと待ってばっかり・・・。


 おかあさんを見つけたい・・・。


 だから・・・アンジェは・・・。


 アンジェも大きい兵を見ます。睨みつけるようにして。


 いつ攻撃してもいい、されてもいい。アンジェは生きたい・・・!

 

 どんな行動にも対応できるようにしました。


 けれど、途端大きい兵士は鼻で笑い、よくわからないことを言ったのです。


 ゲストとしてこないか――意味が分かりません。


 アンジェ達を捕まえて殺すんじゃ・・・。


 大きい兵士は去っていきます。


 アンジェとお兄さんは顔を見合わせました。


 二人とも、状況がよく呑み込めていません。でも、お兄さんが、いこうと言うのです。


 だから、アンジェはお兄さんについていきました。

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