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「お久しぶり。になりますかね。
「ごめんなさい。ここに送ったのは良かったのですが、アナタを探すのに時間がかかってしまって。不安な思いをさせてしまって、本当にごめんなさい。
「それに、アナタを守るつもりで義善治様から少し離れてアナタに憑いていたのですけど。魔力だけの存在でしか向こうの世界に居られないワタクシの中途半端な力では、むしろ逆効果になって苦しい思いと混乱をさせてしまったようで・・・。
「いえ、謝らせてください――もう一度。ごめんなさいアンジェ、アナタに辛い思いをさせるつもりはなかったのです。
「ですから、この場所に呼んだのはワタクシからのお詫びでもあります。
「ここでなら、ワタクシの本来の力も出すことも可能ですので。
「――いえ、捕えられた場所からは出ましたが、まだ、ワタクシは表立って外には出られません。ですので、こうしてあの世とこの世の間に空間を作りそこに居るのです。
「アンジェ、良かったです。こうして普通にアナタと話がすることができて・・・。
「ワタクシの性質はご存知ですよね?――ええ、そうです。水の女神であるワタクシは、水面に映る顔のように対話や見る者によって、性格や表情など異なって見えてしまいます。
「ですから、義善治様のように警戒される。その、心配もしていたのです。
「アンジェ――アナタが見ているワタクシはアナタの心そのものです。アナタ自身がアナタをどんなに下げて見ていても、これが本来のアナタ自身。ですから、けんそんなさらないでください。アナタは決して地獄へ落ちるような子ではない。
「それは断言差し上げます。
「――胸を張ってください。
「さて、混乱しているところ申し訳ありません。ですが、ここにアナタの存在を保って置くのも時間に限りがございます。ですので、本題に入らせてもらいますね?
「・・・・・・そのことですか・・・
「ごめんなさい。それについてはワタクシからは説明できかねます。確かに、居場所などワタクシは知っております。
「ただ・・・そのことについては本人に聞いた方が良いでしょうし。この先、近いうちに会うことにもなります。ですので、待ってください。
「――分かってください。意地悪しているのではないのです。いまは知るべきではないのです・・・。
「ごめんなさい。
「代わりと言っては足りませんが、アナタにはワタクシの加護を託します。
「ですから聞いてください。
「アナタはこの先、義善治様と共に生きていくことになります。それは楽し時もあれば辛い時もある・・・。ですから、アナタの旅の手助けになるようにワタクシの加護を預けて差し上げます。
「ただ、アナタもご存じの通り、ワタクシの加護は他の女神と違い強すぎ、人には余るものです・・・。
「――ワタクシの加護は与えた者の心から願う願いを叶える。
「そして、アナタの心が願うのは、心から寄り添える自分を思い自分が思う者の存在。
「ワタクシの加護があれば、アナタは確かにその存在と永遠に一緒にいることができます。ですが・・・
「同時に、アナタとアナタの思い人の方が、誰かの手によって離れ離れにされるようなことがあるのなら、アナタに与える加護はアナタとアナタの思い人を離そうとする方に牙を剝きます。
「それが、アナタや思い人にとって大切な人でも・・・それに例外はありません。
「ごめんなさい。ですが、こうするしかないのです。アナタを蘇らせここの先の運命に見合う力を与えるには・・・。
「さて――そろそろ、ですね。向こうのワタクシがアナタを蘇らせるようです。
「向こうのワタクシも、ワタクシです。
「常に義善治様とあり、アナタを見守っております。
「――では、どうかあなたの運命に、祝福を・・・」




