021
また――気づいた時には寝ていました。
どれくらいの時間がたったのか分かりませんが、さっきまでの出来事は夢だと思って自分の体を見ましたが、それもやっぱり夢ではなかったようです。
腕と足はありません。
すごく冷静に自分の体を見ることができました。
さっきまでの可笑しさと恐怖はどこへやら、アンジェはこの環境に慣れてしまったのでしょう。一度寝て、頭を冷やせばどうってこともなくなっていました。
それはとっても悲しくて、寂しいことだけど、なにも感じないです。冷たくて寒いこの牢が、自分と一体化してしまったような、そんな感覚になります。
でも、何故だかないはずの左腕が暖かいんです、そう感じました。暖かく熱を持っていて――どこか気持ちい、そんな感覚。
お兄さん・・・。
アンジェの左肩に、お兄さん腕が当たっていました。
どうやら、アンジェはお兄さんにもたれて寝ていたようです。
いつの間に戻ってきたのでしょう?というより、混乱してよくわからなくなっていましたが、やはりお兄さんは生きていました。こうやって実際に触れているので分かります。
暖かい、生きている人です。
アンジェのボロボロで汚く冷たい体と違い、綺麗で暖かい体は確かに生きているモノでした。
そのお兄さんは、いつの間にか戻ってきて、アンジェの隣で寝てたのです。
アンジェの隣で、よだれを垂らしてのんきな顔で寝ています。
なんとも拍子抜けというか、まぬけというか、自暴自棄になっているアンジェのことも知らないでのんきもいいところですよ・・・
そう思ってお兄さんの顔を見ると、お兄さんの口元から垂れるよだれに不意にアンジェの喉がなって――。
喉が渇きました・・・。
垂れるよだれを見ただけで、すごくすごく喉が渇きました。
水分を見ただけでこれは、アンジェの体は飲まず食わずも限界なのでしょう。だから、アンジェはお兄さんを起こさないように、お兄さんの顔に右手を伸ばして顔を近づけました。
お兄さんの静かな吐息が聞こえます。
お水・・・。
お水、そうお水です――舌を出して、お兄さんの口元に垂れるお水をなぞります。
そこから、お水を舐めとって湿った舌を口に戻すと、お水はアンジェの餓えた口の中にすっと広がり、喉を鳴らしました。
すっと――しまった喉が楽になった気分です。重い呼吸が楽になったそんな気分です。
幸せです。
だから――お水がもっともっと欲しくなりました。
でも、もう垂れていないです。
けど、すごくすごくほしい・・・。
なら、と思って――アンジェはお兄さんの口へと自分の口を重ね、右腕をお兄さんの首に回し、動いて起きないようして、アンジェは自分の舌をお兄さんの口の中に入れます。
そこはオアシスでした、中にはいっぱいのお水があってアンジェは舌を動かして口を吸います。
アンジェの中にいっぱいのお水と幸せが入ってきて、喉が潤うだけじゃなく、なんだか心も体を熱くなってきます、冷えたアンジェの体が暖かくなっていく――そう感じました。
ずっとずっとこうしていたい、そんなことを思うぐらい幸せ。
でも、お兄さんがうなり――アンジェは我に戻って、慌ててアンジェは口を外しお兄さんの横に戻ります。
アンジェは一体を何してたのでしょう。
体が火照り、口が物凄く気持ちいです。そして、自分がいましたことを冷静に考えるとすごくはずかしいです。
――お兄さんは気づかず起きなかったようです。
お兄さんの顔を見て、恥ずかしくなったけれども、なんだか一緒に居たくて、アンジェはお兄さんに寄り掛かりました。
寄り掛かると、お兄さんの肌に触れる腕の無い左肩が、自分の腕がそこにあるように温かみを帯びて自分の体が元に戻ったように感じ。
お兄さんに触れた唇は熱く、左腕が火照ていました――。




