019
安心して寝れました。寝てしまいました。
すごく気持ちよかったです。
でも、そんな――そんな気持ちよさなんて長く続きません。
腕を強く引っ張られる勢いでアンジェは目を覚ましました。
強く強く強引な力です。肩が外れそうになるぐらいな。それで目を覚ましました。
いやあああああああああああああああああああああっ!!。
――悲鳴です。
悲鳴、悲鳴、悲鳴・・・悲鳴悲鳴悲鳴!!
牢に響き渡るアンジェの悲鳴です。
強くアンジェの腕を引く二人の兵士に、アンジェは悲鳴を上げて暴れました。
イヤ、やめてと・・・。
それでも――どんなに叫んでも、どんなに暴れても。アンジェの力はでは抵抗できません。
アンジェはいとも簡単に引っ張られます。
――その時でした。
お兄さんが、アンジェの悲鳴で起きたお兄さんが、兵士に飛び掛かかりました。
飛びかかって、アンジェを連れて行こうとする兵士を止めようとしたのです。
希望しました。驚きました。助かるのだと思いました。
でも――お兄さんはいとも簡単に兵士に殴り飛ばれたのです。
弱っちいです・・・。
すごく、驚きましたし、それと同時に幻滅しました。お兄さんは白馬の王子様でもなければ、勇者さまでもなかったです。結局、ここではアンジェもお兄さんも無力なのでしょう。
だから、
暴れるアンジェはそこで、お腹に響いた衝撃と共に意識を失いました。
次に起きたのは強く腕を引っ張られる勢いではなく、アンジェの顔を殴る痛みでした。
頭が震動します、響きます。頬が痛いです。
いたい・・・ああ・・・。
アンジェが起きたのは、二日目のお兄さんの倒れていた部屋でした。
そこに、仰向けに両腕を抑えられ大の字で寝ていました。
お兄さんではやはり、アンジェを助けられなかったようです。残念でしたご愁傷様です。アンジェもお兄さんも。
また・・・アンジェはいじめられるのでしょうか?兵士が笑いながらアンジェの体を抑えています。きっとそうですよね、ええ、ですよね。
もう、抵抗する気力なんてありませんでした・・・。
ありませんでした。
兵士がアンジェの上からどきました。逃げる絶好のチャンスです。いえ、無理です――不可能です。動いて逃げようとしたってどうせ捕まります。だからも何もしません。
なにも・・・。
部屋を見渡します。部屋の中には兵士が三人いました。アンジェを抑えていた兵士と他に二人、一人はアンジェを見下ろしニタニタと笑い。すごく気持ち悪いです。
もう一人は、大きな斧を持っています。・・・なんですか、その斧・・・。
斧をもった兵士はアンジェはへと近づいてきます。
笑いながら。
そして、最初にアンジェを抑えていた兵士がアンジェの足を抑えました。
え・・・まってください。――待って。
次に起きることが何か察しました。想像できてしまいました。できてしまったので、アンジェの心臓がバグバグと跳ね上がり始めます。さっきまで、無気力で何もしようとしなかったアンジェですが、慌てて立ち上がり逃げようとします。
それだけは、嫌です。
こわい・・・。今までにないほどに。
でも――足を抑えられたアンジェは動けません。
上半身を起こそうとしたところでもう一人の兵士に抑えられました。それは、もちろん今まで通り、暴れても暴れてもふりぬけれないです。。
でも、そんな・・・。
心臓の鼓動は止まらず続きます。斧をもった兵士が近付くにつれて、嫌な予感にアンジェの心臓が跳ねます。吐き気がします、頭痛がします。視界がぼやけます。くらくらとします。
恐怖が、アンジェを押しつぶします。
いやです、こないでください。嘘ですよね・・・。いや・・・。
どんなに願っても目の前で起きることは、嘘ではありません。夢でもありません。事実です。現実です。
現実だからこそ、アンジェの予想は、最悪な予想は的中してしまします。
兵士がアンジェの右足に斧を当てました。狙いをつけるのです。
もう、その光景を見るだけで息ができません。緊張が最大限までアンジェの喉を押しつぶして、声も出ないのです。
暴れようとも、抑えられて動けないのですから・・・。
なにもできませんでした。
ただただその光景を、おぞましい光景を、いや、やめて、と思いながら見ることしかできなかったです・・・。
振りあがる斧に、涙が出て体が力み歯を食いしばりました――歯が折れてはずれそうなぐらい。
きっと、外れるのはアンジェの足なのでしょうけど。歯も一緒になくなりそうなぐらいの勢いで、全身に力が入いりました。
そして――、
それは一瞬でした。
振り上げられた斧は勢いよく振り下ろされ、アンジェの右足を割りました。
膝からザックリ――いとも簡単にアンジェの足を貫通して地面を叩いたのです。
痛みは・・・ないようです。
いえ、分からないです。混乱しているのです。だから、分からない。
体を固くする力みは和らぎ、力が抜けていきくらくらとする感覚はなくなっていきます。
ですが、それと同時に体の震えが始まりました。まあ、今のいままで震えなかったのが不思議なのですが、目の前ので起きていることに理解できないことに。アンジェの恐怖は最大限に高まり震えだしました。
ガタガタ・・・。
震える感覚が現実ということをアンジェに伝えます。
何が起きたのか。
何をされたのか。
アンジェの足は――どうなったのですか?
目で見て何が起きたのか分かっていました。体は恐怖を始めていて状況についてきていました。ですが――頭がついてきていませんでした。
それがようやくついてきて・・・。
あ・・、ああ・・・。
ああああああああ―――!
アンジェの足が、足がっ!
ないです、ないんです!
感覚が、先まであった足先までの感覚が――ないです。
足はそこにあるのに・・・。
動きません。
なんで、なんでつながってないんですか!血まみれなんですか!アンジェのあしいぃいいい――。
あぁ・・・。
血の流れる外れた足を見て、吐き気がこみ上がります。吐きます。いえ、もちろん何も出ません牢で吐いた時と同じです。吐き気だけがアンジェの口を抜けていきます。
アンジェを抑えていた兵士はアンジェを離します。アンジェは自由になりました。右足以外は・・・。
ああ――。
震える体を起こして、切断された右膝を触り、その手には血がついていました。その血を見て、また吐き気が――。
また吐きます。もちろんなにもでません、だから吐き気だけを吐き出します。
吐き出して、自分の離れた足に震える手を動かし触れました。
アンジェあし・・・。
なぜ、こんなことするのでしょう・・・。
なにもわるこいとしていないのに・・・。
アンジェはただ、女神様を探してただけのに・・・。
ひどい、ひどいです・・・。
切断された足はもう戻りません。足をつなげる魔法なんて聞いたことありません。アンジェはもう、歩くことはできません。
ははっ――。
自分の足を手に取っていているなんてすごくおかしいです。笑いがこみ上げてきます。乾いた笑いが――。




