020
響く金属音と共にサクラは飛び引いた。
「これは……」
驚いている。
一連の動きにサクラだけではない。
オレも……。
なんだ、今の……。
意地だけで振った、そんなヤケ振りにも関わらず噛み合ってサクラの攻撃を受けていた。
それもただ弾き返すだけではなく、明らかにサクラの体制を崩しこちらのせめ手として……。
(きゃはは――そう……。そういうこと……。あの小娘。ただ厄介者を押し付けたと思っただけだと思ったけれども……そういうこと。きゃはは――)
なにか理解したと言わんばかりにミレアの声が聞こえる。
(どういうこと?)
問うオレにミレアはきゃはは――笑って。
(まさかワタシが少年に映っているのを見越して、こんな策略を取ってくるなんてね)
(特性?)
(そう――きゃはは。知っているでしょう?ワタシは人の心の真実を反射する鏡だって。それが少年にも表れているの)
(でも、オレはなにもサクラ自身の本当の姿を模してないし、心の内も分からないけど……)
そうだ、ミレアの心の鏡面反射という性質がオレに映っているのであれば、オレにはサクラの心が分かるはず、彼女の本来の姿が見える筈……。
(さて――いつワタシが人の心が見えるなんて言ったかしら。きゃはは。ワタシはただ反射するだけ。ワタシ自身には相手の心なんて知りえないし、知った事じゃない。けれど、それは心をうすだけの鏡じゃない。特に、きゃはは――少年にとってはね)
オレにとっては?
意味が分からない。
ミレアの鏡面反射。それはミレアを見る者の心の本来の姿をミレアの性格として映し見せるモノだ。
ミレア自体にはどういう見方をされているかは変わらないというのは分かるが、それがどうしてオレには取っては違う?
疑問は集えど、その間にも
サクラが再びオレへと翔る。
けれど――そこには最初ほどの勢いはない。
警戒している?
斬りこまれる剣に先ほどまでの勢いは感じられず、その動きを完全とは言わないが目でとらえることができる。
それを避け斬ることが可能かは別として、明らかに最初のサクラ程の大振りと力強さを感じさせない。
なんというか……読み合いをするような、そんな剣捌きに変わっているような……。
であれば、見えない程の剣でなければ、無理やりにでも合わせに行けるはずだと確信をオレはする。
でなけれれば勝機などない。
理由は分からないが、今が千載一遇のチャンスだと言わんばかりに、サクラの剣の動きを凝視しそれに合わせに行く。
一刀、二刀、三刀といくつも斬られながらもその剣を弾かんとして、オレも剣を振るいそれは次第に金属と金属がぶつかり合う音が増えていった。
「っ――」
気づけば、サクラは苦しい顔をしていた。
そうして、何かに嫌気が刺したのか大きく宝剣と女神の剣二つを振り上げて、
「ティルフィングッ――!!」
二刀の振り上げた剣は黄金の粒子を纏い、その輝きは砲撃となって振り下ろしと同時にオレの視界全てを黄金の輝きへと変えた。