012
「それで寄り添い続けるのは間違っている。あの人は私たちのことを尊重して、みんながみんな思ってる欲しいものをいつでもくれる。そうだったから私は救われたし、元の世界に未練なんてない。辛かった過去さえも、いまではそれがあったからこそ、あの人と出会えたし幸せな時間を過ごせたと思う。
悲観をすべて希望や喜びにあの人は変えてくれる。
それは他のみんなだってそう。フィーもエリザベートもエリーゼもアウロラも、申子の子たちも。あの人が幸せを一杯くれるから辛かった過去があったって幸せになれる。
でもダメ。それであの人に寄り添って守護するなんて。
だって、それは。自分があの人から離れた時、辛かった過去が押し返してきて、自分が自分じゃなくなるようで怖いからなだけなもの!!
本当にあの人のことを愛してるなら!!大好きなら!!あの人の元を離れてでもあの人の為に尽くさなやいけない!!
そうでなければ、私たちに与えてくれたあの人に示しがつかない!!
ずっともらってばかりなんて、本当に好きなんて言えない、こっちからもあの人を愛してるっていうことを伝えないと!!」
愛してくれてるからこそ、愛しているからこそ、自分からもなにか――
与えたい。
送りたい。
返したい。
もらうだけではダメだと。そんな一方てきな愛。
自分たちは愛しているなんて言えない。
勇者は自分たちを愛しているだろう。
けれど――ずっともらってばかりでは、自分たちは勇者を愛しているとは言えない。
ただただ、与えてくれるから好きなだけで。それは純粋な好きと言う愛ではないから。
だからサクラはそれを自分からも愛を届けたいからと。
愛に狂うからこそ、感情を燃やして力は強い。
愛に狂うからこそ、真っすぐ自分を信じていける。
愛に狂うからこそ、狂者となれる。
ならば、その愛しているがこそのもの全てを、勇者へむけ同じように思ってもらう事ことが本当の愛だとサクラは言う。
それは確かにオレもそうだと思う。
一歩的な愛なんてそんなのは愛ではないし、ただの押しつけにすぎないと。
それに勇者のやさしさに甘えるだけなのは、愛ではないのだと。そう言うサクラの主張はまた一つの愛の形なんだろう。
けれど……どうにも腑に落ちなかった。
本当にそれだけが、愛の形なのだろうかと……。
少なくとも、オレはそうは思わない。
オレがアンジェへ与えられたのは少なかったし、アンジェがじゃあオレからなにから欲していたという訳ではない。
ただ、そばに居るそれだけでもよかったんだ。
お互いに離れるのが怖くて、一人になるのが怖くて、だから一緒に居た。
それをただの甘えなんていうのは正直オレは納得できないし、愛ではないと否定してほしくない。
ことの流れはどうあれ、オレはアンジェを好きだったしアンジェもオレを好きでいてくれた。ならそれでもいいではないか、片方が片方に依存したって、甘えたって。
もちろん、本当は何か与えてあげたいしてあげたいと思う。けれどそれができないから……。
ただ、一緒に居たいと……。
そうか……。
オレがサクラの意見に想いに賛同できない理由が分かった。
オレは階段を下りて、真剣な表情のサクラの横を通り過ぎ後ろに立つ。
そうして、振り返るサクラにこう思い言ってやる。
「サクラ、あんた――強いよすぎる」
それも尊敬するぐらいに。
オレでは到底及ばない。そう思った。
オレはアンジェに何か与えよう、してあげたいと思ってもできなかったから。間違ってしまった。それを後悔している。
それを、サクラは間違えかどうかなんかどうでもよくなるぐらいに、真っすぐ胸を張ってそれをしようとしている。
その気持ちは絶対に後悔なんてしないんだろう。じゃなきゃ勇者から離れて死んだりなんてしないし、こうして何代も一族が続いてその子孫が自分の好きな人を好きになっても嫉妬なんてしない。
強いよ。強すぎる。
オレなら、自分が死んだときに後悔するだろうに、自分の子孫が好きな人と両想いになったなんてすればそれは嫉妬に狂う。
でも――サクラにはそれは絶対にありえない。
だって、強いのだから。
強すぎるから。




