059
「そんなことより――そろそろこの状況をどうにかしてしてちょうだいな」
ローザが周りを見ろと言わんばかりに言ってきた。
確かに、周りを見れば倒壊した建物や砕け散った地面の残骸、戦場の傷跡。復旧作業をさっさと済まさなければいけないのは確かだ。
とは言え、
「お前がそんなこととかいうなよ。こちとらこれで精一杯なんだ」
「知らないわよ。早くして」
せっかちな奴だ……。
本当にもう一人の俺とは思えないな。
まあ、兎にも角にも現状の把握が先だが……。正直これは俺が避けていたというのもあってあまり気が進まない。
かと言って、なにもしないままでは話も進まないからどうしようもないが……。
「クリア、庭園の被害は?」
「はい――全体のおよそ半分ほどが全壊してしまっております。それと――」
そこで、クリアは口つむぐ。
言いたくないか……そうだよな……。
俺だって訊きたくない。
「大丈夫だ、言ってくれ」
「襲撃された際、戦闘可能な者以外は直ぐに避難させたのですが……申子38人中17名が軽傷を含め負傷。死者――」
ズシリと俺の胸に突き刺さる。
クリアは一瞬間を間を置き、静かに大きく息を吸うと。
「――4名」
俺の中に重く刺さっていた何かが弾けた。
死者だと?ふざけるな。
誰がそんなものを許した。
俺はそんなことよしとはしない。
そんなクソほどのにも満たない事など訊きたくない。
重くの刺さったソレは外へとにじみ出て、俺の握った拳が力を強める。
そんな――そんな認めたくもない現実に憤怒する心を抑え、更に現状を語るクリアの話を訊く。
「既に一部のモノには負傷者の手当てと、復旧の復旧作業の準備に取り掛からせていますが……ご主人様?」
「―――」
「ご主人様?」
「――あっ、いや……」
上がる怒りを抑えるので必死だったのか、俺はいつの間にかボーっとしていた。
しっかりしなくちゃな……。
4人か――。
4人か……。
その事実に言葉も出ない。
もっと最善を尽くせば被害はなくて済んだのではないのか。
俺がここを蔑ろにしなければ……。
そんな――もしもの可能性が頭をよぎって仕方ない。
けれど――
そんなもの通用しない。
もしも、なんてここではありはしないのだから。
過去も並行世界も未来も存在しないこの庭園。そこでの死は決して直せやしない、覆らない。IFの可能性やそれらの干渉なんてできやしない。
ここは歌劇の舞台袖ではなく観客席に近い。だから役がない観客は席がなくなった時点で消え去るしかほかならない。
「ご主人様、申し訳ありません。ワタクシがもっと早く対応できていれば……」
「いや――お前は最善を尽くしてくれた。そうやって使いたくもない魔法を使ってでもみんなに避難の連絡をしてくれたんだ。それだけで十分だ」
クリアの周りを浮遊する、数枚の赤い薔薇の花弁を見て俺は言った。
クリアは花弁を端子という通信機にして遠くのものと連絡が取れる。それがこうしてずっと飛び続けているというとは、彼女がそれを使い他の者に避難を呼びかけたからだ。
それは間違いなく、手早く行われているはず。
なにより――魔法を嫌うクリアがそれを使ってまでしている以上責められない。
ああ――攻めちゃいけない。
攻めちゃいけないんだ。
なのに――どうして、こんなにも……。
「陛下……」
「お兄ちゃん……」




