057
「痛でぇ……」
見事に、両手が不自然な形を装えるようになったところで、一歩遅く俺は二人を落ち着くように説得できた。そうして俺はシクシクとその場に座りこみ、エリーゼが魔法で腕を魔法で治癒するのだった。
いくつもの大小、色バラバラな光る宝石がエリーゼの周りを浮遊していて折れた俺の腕をエリーゼが抑えている。その部分からは蒼白い光が輝き、優しい日差しに当てられているかのような暖かさを感じる。
「それで陛下。誤解と言うのは?」
目の前で仁王立ちして腕を組むエリザベートが問う。
もとい、何故二人がこうして怒っているかだが。
「誤解というか、あれぐらいしないとアイツ俺のこと嫌いにならないだろ?だから、不快にさせるためにそうしただけだ」
「でしたら、他にもやりようがあったのではないでしょうか?なんでわざわざ三人をあの者前で辱めるなんて。別にその行為自体が気にくわないという訳ではありません。愛しているのですから当然です。
ただ――あの子たちの気持ちも考えて下さい!久方ぶりに会ってこれでは彼女達が可愛そうです!」
と――エリザベートやエリーゼが怒っているのは、俺が三人にエリザベートとエリーゼを差し置いて手を出した事でもなければ、あのミレアの契約者の前でしたことでもない。
ただ――俺が"彼女達の気持ちを利用した"ということに怒っている。
久しぶりに、それも300年ぶりに再会したんだ。本当は彼女達も心が張り裂けそうなぐらいで、今にでも俺へと飛びついて精一杯抱きしめても足りない。
だからこそ――そんな気持ちを利用したのが二人は許せない。
例え利用したと気づいていても、彼女達はあの場で俺にああ命じられれば否定なんてしない。する訳がない。どんな場所だろうが誰が見ていようが、恋焦がれた者が目の前にいるのだから。
我慢などできない。
恋しかったのだから――。
その純粋な気持ちを利用したこに怒っているのだった。
「……それは、悪かったって」
確かに、それはそういう気持ちを蔑ろにしたのはいけなかった。
けど……。
「治ったよ?もう一回行っとく?」
いや……もうやめておこう……。
理由なんて言っても仕方ない。
好きであるのなら、愛しているのなら。それゆえの振る舞いや思いやりは必要だ。
腕が潰れて折れるのはもうお腹いっぱいだから。
「くすくす。ご主人様も悪気があった訳ではありませんので、お姉さまは方それぐらいにしてあげて下さいまし」
「悪気がないからダメだというのに……」
クリアが許すよう言うと、エリザベートはため息をこぼして俺に一礼した。
一応、主へ無礼なことをしたという自覚はあるようだ。
「それより、なんで嫌われる必要なんてあるのかしら?」
不意にフレデリカが問う。