056
「イダダダッ――痛いって」
二人の握力はか弱そうに見える姿とは裏腹に、人間が到底出せないんじゃないだろうかという力がこもっている。それで俺の腕はギリギリと潰されて――イダダダダッ。
「くすくす――相変わらず、そういう嫉妬心には鈍いのでございますね」
「――え?」
俺が腕を絞られる様子を見て、クリアも他の二人も笑っている。
そういうのいいからちょ、マジ助けて。腕引きちぎれる。
「バカみたい」
「あぁん――腕があんな潰れて青白く……素敵ですわぁ」
フレデリカは呆れて目を背け、拷問狂のレアは段々感覚が消え変な色になりつつある腕を見て見惚れている。
あーだめだこいつら、完全に助ける気ねぇ。
「腕がちぎれ――アダダダダッ」
更に俺の腕を掴む手の力は強くなる。
「ご安心を陛下、もげてもワタシが引っ付け直しますので」
「そうだよおにちゃん、腕の一本や二本なくなったって。代わりの体はいくらでも用意できるんだから。ねえ!」
ギリギリ――。
ほ、本気だ!?
先ほどまで幸せモード満点だった二人の瞳が、狂気に満ちて俺を見上げている。
確かに、俺の体は二人が作った人造人間なのだから、たとえ腕がもげたところでまた治せるといえばそうだが……。
よくねえよ!いてえよ!ていうかさっきまでの忠誠心どこ行った!バリバリ俺への殺意まんてんじゃねぇかッ!
「くすくす。二人が仰られていますのはおそらく、ワタクシどもをイかせてくださったことだとございますが」
「イか……え?」
そろそろ俺の腕が限界なのを見かねて、クリアが答えを言った。
それって……。
……あーそういう。言われて何かと気づいた。
俺もそうバカじゃない。クリアの言っていたことを繋ぎ合わせて、エリザベートとエリーゼの二人がどうしてこんなことをするのか。ちょっと考えれば分かる。
「まったッ……誤解だ二人ともッ!」
「誤解ですか?」
「ああ……」
訊き訳はあるのか、二人の手が緩む。
「気持ちよかったですわぁ……」
その時、俺の腕から不自然な音がした。
レアああああああああああアアアアアッ!
レアの不意を突いたダイレクトアタックをくらわせる言葉に、俺の腕はあらぬ部分に関節が一つ増えたのだった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼