055
「エリザベート、エリーゼ。お前たち自分を犠牲にしすぎだ」
「はう!?」
「いッ……!?」
ペシンッっと撫でていた右手と左手を外し、二人のおでこを俺はデコピンで弾いた。
そうして、いたずらじみた笑顔でこういうのだ。
「だいたい――壊し過ぎだし、それじゃあ俺はよろこばねーよ」
「申し訳ありません……陛下……」
「そーいう、辛気臭いのもダメだ。ほら、顔上げろ?」
「はい……」
「うん……」
「あらためて――ありがとう」
頭を再び撫でてやり、そうして顔を上げ周りを見ると、その光景を他の三人は微笑ましく見ていた。
なんだかこっぱずかしいな。
「お姉さま方にはかないません」
「クリアも、それにフレデリカ、レアも。ありがとう」
「バカみたいバカみたい」
「ずるいですわぁ――アタクシも撫でてださぁい」
「ああ……ん?」
言われて、キラキラと幸せモードにいつのまにか入っている二人から手を外すと、突然その手が二人からどちらの腕もそれぞれ細い手に握られた。
「そういえば陛下……どうして、わざわざあの者のと、疫病女神の前であのような事をしたのでしょうか?」
「なんでかな?お兄ちゃん」
心なしか、俺の腕を握っている手の力が不自然に強いような……。
「あのような?」
とはいえ、エリザベートとエリーゼ二人が指摘していることがさっぱり分からず首を傾げるが。
ギリギリ……。