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正しき魔王の旅記  作者: テケ
四章 偽善ヴァイス
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054

 忠実な忠実な二人の家臣のような。それでいて俺を守護者として最も愛す二人。そんな危うい二人は次の命は何かと伺ってきている。

 

 正直、そんな気張らないでいて欲しいだけどな。言ってもこの二人の態度は相変わらず変わりやしない。

 だからまず、いつも通り俺は二人にこう言うのだ。

 

 

「立て、頭は下げるな」



「ですが陛下……」



「毎回言ってるだろ?そんなことしなくてもいいって。大体――そんな態度取るのはお前たちぐらいだぞ?他の守護者と申子(こいつら)見て見ろ。そんな忠義、いらないよ。俺はただお前たちが無事でいてくれればそれでいい」



 そうって、口答えするエリザベートとエリーゼの二人を立たせて言う。



「陛下、それでもワタシは……いえ、ワタシ達は――」



「知ってる」



 ああ――知っているとも、言ってもお前は聞かない。二人がそうしたいというから無理には止めやしないが、それでも、守護者だけならともかく、こう他の面子に見られるのはなんだこっぱずかしいんだ。

 正直、ただそれだけだし、俺もこんな純粋に従ってくれるのだから、嫌な気分なわけがない。

 

 まっ、ぶっちゃけ、度が過ぎている部分があるというのは否めないが……。

 

「分かっているなら何故ッ!大体、他の者は陛下を蔑ろにし過ぎなのです!陛下は我らが最も愛しく素晴らしいお方なのに――」


「お兄ちゃんはもっと自分が偉いのを自覚した方がいいんだよ!」


「あー……はいはい。分かった分かったから」



 どうどうと、踏み出してあらぶり始める二人を抑える。

 

 

「それより――ありがとう」



 二人の頭に左右の手をポンと乗せ、撫でる。

 

 止められて不満な顔をしながらもそれに照れて、二人とも膨れる。まるで無邪気な子供のような。

 ていうか、かわいいな、おい。

 

 

 とはいえ、実際二人には助けられた。エリザベートがティアラの動きに気づいていち早くこの場に来たからこそ被害は最小限に済んだし、この世界の礎に近づかずかれづにすんだ。

 

 まあ――街の被害は大部分はエリザベートのせいだとは思うが……。

 その点を除いて言えば王と女神を止めてくれた功績は大きい。

 

 

「いえ……我らは止めたかっただけです……」



 照れながらもそう言ったエリザベートは顔はどこか寂し気で。

 その理由は何かは俺は分かっていて、防げなかった自分が情けなくも感じる。

 

 

 エリザベートとエリーゼは間違いなく悔やんでいる。ティアラを――同じ守護者の裏切りを止めることができなかったから。

 同じように俺を愛しているのに、それなのにも関わらず俺を裏切った。

 きっとそれはエリザベートとエリーゼには理解しがたくて、訳が分からないことだ。完全無欠の忠義をもっているからこそ、同じように俺を従っていたからこそ。友人であるある種お互いを認め合った恋敵であるティアラこそ。

 何故――そのようなことにおよんだのか。

 それが分からない。

 

 俺が来て惨状をみて思ったのは、エリザベートは間違いなくティアラを屠るつもりで力を振るっていたし、それはこの時空庭園が力で吹き飛ぶということを垣間見ない戦いをしていたのは眼に見えて明白だった。

 でなければ、そもそもクリアが自らの覇道支配の体現などなしえない。

 

 そうでもしなければ止まらなかったんだろう。

 

 それだけ、エリザベートは本気でティアラを"救いたい"と思っていた。

 

 裏切るハズはない。愛しているのだから。それがエリザベートの愛の形で。

 だからこそ、力を振るいティアラを攻撃した。

 それは別にティアラが憎くてそうした訳ではない。エリザベートは元来、他の守護者よりも誰よりも優しい子だから。決して自分の友人を気づつけたりなどできない。

 

 口では嫌ってケンカばかりしているあのフィー相手でさえ、彼女は地味は嫌がらせはせど、自分から暴力に訴え手は出そうとはしないし、なにかされてもエリザベートからはなにもしない。それはある種のいじめられっ子のようでもあるが。

 

 事実、初めて会った時から元々エリザベートはそういう子であったし、そこは昔から変わっていない。

 

 

 だから――救おうとした。

  

 不器用だからこんな方法でしかできなかった。

 

 裏切るのなら、こんな恋敵の姿など自分の思い人に見せたくない。

 ティアラの名誉のためにも、こんな姿を俺の前に出させてはダメだと。

 

 そうすれば、ティアラが裏切ったなんて事実消えてなくなるのだから……。

 

 後は、自分が俺に謝ればいいのだと。

 俺の、嫌われても構わない。ティアラが俺に嫌われなければ……。

 

 恋敵でありながら、友人だからそれを思って。

 

 

 そんなことを考えていたなんて、聞かなくても分かる。

 分かってしまうからこそ。ここに来るのが遅れてそうさせてしまった自分がゆるせない。

 

 

 ここに来る前、この女神二人をタイミング悪く、女神を封印していた結界へ出向き連れ出す説得していた自分が。

 

 けれども、許せなくても、俺は二人に声をかける。

 


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