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正しき魔王の旅記  作者: テケ
四章 偽善ヴァイス
144/175

053

 俺はこの時空庭園を一度放棄した。

 

 正確には放棄というよりは、彼女達――申子(チルドレン)にここの管理を任せ、いわゆる神の座としてこの場を君臨させた。そうやってこの場に俺から分身として創り出された(ローザ)が居る事で世界全体へ神の加護がかかるように仕立て上げた。

 俺は内側から世界を守って、申子(チルドレン)(ローザ)を元に時空庭園から世界を守って。そういう立ち回りでこの世界を守ってきた。

 

 だから、最後に会ったのはおおよそこの世界が新たに再創生された時――時にして300年ほど前だろうか……。


 長い、なんてものじゃすまない。普通の人間では到底体験できやしない年月。時の停止、不老不死。呪い。あらゆる理由で成長の止まった彼女たちは300年前と変わらず、異世界を渡り彼女達にお節介を焼いて愛焦がれた時となにも変わっちゃいない。

 

 故に残酷にも放棄したと言える。


 そんな彼女達を、俺は犠牲に世界のセキュリティを作り上げた。それはある種生贄とも言えるのだろう。

 そんなこと、きっと彼女たちは俺と離れることなどしたくなかったし、俺だってそうだ。俺だって彼女達をこの場に残すことはしたくなかった。

 それでも……最後に、説明したときに「それでもいい。やっと恩を返せる」そう答えが返ってきた。その言葉がいまだに脳裏に残っていて、今でも思い出すと心に重くのしかかる。

 それでも、

 俺はその言葉に甘えて、こうして世界のシステムを構築した。

 

 その結果がこれか……。だとしたらなんとも愚かな事だったという。

 完璧だと思ったシステムは欠陥だらけで、だからこうして問題が起こった。でも――その問題が起きて内心安心している自分も居るのもまた、俺の性なんだろう。

 

 何故なら、俺の存在は"愛"の器とも言っていい。

 俺と言う存在は人の心と心をを結びつけそれを感じてそれを力にする。魔法がまともに使えなかった俺が属性付与(エンチャント)という法則を極限まで極めた時から俺はそういうモノでそれに俺は導かれる。

 ――その極限というのは火や水といった属性魔法として扱うモノじゃない。その末端はその先。

 魂の降臨。

 魂の中にある人の感情を自身へ降ろし力とする。それが俺の力だから。

 他人が最も強く思う心を力に変えてそれを顕現させる。

 それはその想いが強ければ強いほど力は強く。神の御業ですら容易におこすことができる。

 だから俺は他人の渇望に恋い焦がれ、覇道支配体現することだってできる。

 

 もちろん――そこに至るにはもちろん魂との相性が合って、その相性の最上限こそが"愛"

 

 故に――お互いに愛を求める。

 

 なにせ、自分の渇望が体現されるなんてその本人どころか、魂の奥深く。それこそ生物の本能とでも言っていい。

 俺の魂は魂の覇道支配の体現を求め、彼女達の魂も自身の覇道支配の体現を求める。

 磁石のS極とN局のように互いの魂は自然と惹かれ合う。

 

 

 ただ――それが、愛と言う形に移り変わっているだけだった。

 

 まあ――それはいくつか条件や相性があるらしいが、それでも彼女たちは俺の元へ集った。

 

 

 だからこれも、この状況もそれにいたるまでも性。この世界は(ローザ)の覇道支配で成り立っているのだから。世界がこうして俺たちを引き合わせるのはまた必然と言うことになる。

 

 なんだって、(ローザ)は俺の渇望その物を抜き取ったもの見たいなもんだからな。アイツは俺の半分で俺はアイツの半分。同じ存在であり同じモノ。意思疎通などせずも思考は分かり、どちらかがケガをすればもう片方もケガをする。常にリンクしている存在。

 

 だから俺は思う。

 

 まさか――こんなことでここに足をはこんで再会するなんて……と。

 正直、こんなんじゃなければ彼女達を一杯構ってやりたいけど……今はそれどころじゃない。こうなってしまった以上、前へ前へと進むしかない。その結末(エンドロール)がどうなろうとも。

 

 

 俺はそうやってこの現状を噛み締め。ゆっくりと瞳を開く。

 

 

「陛下」



 眼を開けれると、エリザベートとエリーゼが並んで俺へと、忠義を誓う騎士が如く俺の前へ膝まづついていた。

 

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