041
「なんでフィーはあそこに居たんだ!」
あの場にフィーが居なければアンジェが真実を知ることはなかった。
あの場にフィーが居な良ければ絶望なんてしなかったのに……。
「それこそ、本人に訊いているんじゃないか?」
分かっている。
ただフィーは木の国の様子を見に来ただけ。
これはただの八つ当たりだ。
たまたま、鉢合わせしただけに過ぎない。
分かっている、けれども……。
「生憎なにがあったかは俺は知らない。だだし、フィーに目をつけられるとは運が悪い。あれは昔から俺の言うことも訊きやしないからな。その優柔不断で強情だ。
どうせ、俺の為になんて言って、お前を襲ったんだろ?悪いがそれはいつものことだ。優柔不断すぎて他の守護者にも嫌わてるぐらいだから。俺の手にも負えない。
それに――それはあの子の母親を殺した時もそうだ。ああ――間違いない。
ローゼリアを殺したのは紛れもないフィーだ。詰まらない姉妹のケンカでな……。
けどまあ、そう俺を責められても困る。俺は俺の役目を全うしたし、フィーの手前、あの子にしてやれることなんてなかった。フィーがあの子にあの時気づかないようにするので限界だった」
「じゃあ――なんだ、アンタはアンジェを助けたって言うのか!?」
「助けたとは言わない。だがアレがあの時の最善だ。魔王を討伐し他は集落へワザと逃がし放置した。後のことはローゼリアが勝手にどうにかしたようだがな。ヤツはあの子を封印して。そうしてあのアホどもは決戦に臨んだ。その後のことなんてしったことじゃない」
そんな無責任な……。
けど、封印?決戦?それになんで魔王がでてくる。
アンジェの母親とフィーの間に何があったって言うのんだよ……。
「アンジェの母親とフィーはどうして戦ったんだ……?」
恐る恐る投げかける問いに、勇者はため息をついて。
「はあ……。そこはそいつから訊いていないのか」
ミレアを目で刺した。
ミレア?
じゃあ――ミレアは全部知ってて……。
アンジェを見捨てろと最初は僕に言ったミレアが?そんな、簡単に切り捨てるようなことをしたのに?
僕の中の常識では、知っているなら見捨てるなんてことはしない。そう言うものだった。
だから、てっきりミレアはアンジェのことを元は知らないのかと思っていたけれども……。
「ミレア?」
「きゃはは――」
振り返る僕をミレアは無表情のまま笑う。
「ええ――そう、教えていない。知ったところで何も変わらないでしょう?それに――この世界落ちたばかりの少年にそんなことを言っても無駄だろうしね。きゃはは」
「そうか」
ちょっとまって。
「待てって、じゃあ――アンジェは一体なんだって言うんだよ!?」
なにか重要なこと。
そう感じた。僕はそれを知らないから、何か想い間違えをしているんじゃないかと……。
アンジェは旅をしていた。母親が消え、探す旅をあんな小さな子が他に誰も付き添わず居たのは不思議に思ったしおかしいと思った。母ともかく父はどうしたのかと。
それに、故郷があんな廃墟で……。
本当に僕はたまたまアンジェとあの砦で会っただけなのか……?
あれはミレアが仕組んだことじゃないのか?
なら、アンジェを僕が殺すことも本当はミレアが仕込んで……。
途端に、疑問がいくつも浮かび上がる。
それと共に、総て仕組まれていたことじゃないかと。
そう考えてしまう。




