028
二つの力が激突する間、その空間を割って現れたステンドグラスの扉から、少女は現れると二つの世界を破壊せさんとするほどの神威を素手で受け止めた。
「―――!?」
「なっ!?」
「■■■■■……」
何か知らない言葉を呟いた少女を中心に、真っ白い光が広がって、二つの力を振り払い消滅させながらソレはゆっくりと広がり、僕たち、いや――この時空庭園。この空間そのものを包んだ。
それに伴って、二つの力どこではない。怒り狂うエリザベートの暴風と圧。周りの王の持つ武器や僕の持つミレアの剣が消え去った。その上に、王達に憑依する女神たちも憑依から放たれ、姿を顕現させて王たち動同様に膝を着いた。
その上だ――目の前のミレアも。
「――これは……きゃはは」
僕を守っていたミレアの力も消え去り、ミレア自身も膝を着く。
「お前……」
「アナタ……」
ただの太太刀と長剣となった武器を握る二人が、間に入った少女の存在に驚愕した。
静かに目を瞑り、片手片手に素手で刃を掴む少女が静かに目を開ける。
紫色のをした清んだ瞳が双方を順に見据える。
素手で刃を受け止める手から流れる血が、真っ白なブラウスの袖口を紅く染めるのにも気にも留めず。
彼女は二人を見る。
見た目、エリザベートよりも年一つ二つ下ぐらいだろうか。真っすぐ伸びる紫の髪は足元ほどまで長く、前髪も後上もない、真っすぐに長くたたれた髪は悪霊を思わせる。けれども、彼女は邪悪や不潔なものではない。
むしろ清潔で純白。真白なブラウスに真っ黒でまっすぐに伸びたキマシ上のフレアスカート。幼さと誠実で純粋さを含んだ顔立ちで、それでいて彼女は真面目さが伝わり。
その彼女の周りには赤色の薔薇の花弁が数枚浮遊している。
この世界を包んだ力……。
間違いない。
僕たちを包み、総ての力を無効にしたこの力はミレアと同じだ。
包まれたこの空間で感じてよく分かる。
これは、異能の否定。
神核を否定して、その力やそれに連なる奇跡をすべて否定してかき消す力。それも――ミレアのような自己否定的な生半端なものではない。ミレアは、自身が女神である為完全には全てを否定できていないけれども、この力はそのことごとくを否定している。
完全に、絶対に、そのありとあらゆる異能を否定して存在を許さない。完璧なる神の鎮静だ。
この世界を包むチカラは、彼女の願いが形となっていて、彼女が異能を一切許さない渇望を思っているのを物語っている。
だからなのか――、エリザベートの怒りも黒炎も、ティアラの煌めきも黄金もすべては異能から来ているものだ。どれだけ力が強くあろうが関係はない。神威はことごとく無効にされる。
二つは抑制されて当たり前。それこそがこの力(世界)だ。
それは他の王に憑依していた女神も同じ。だから憑依も解け、姿を現し力を抑制され膝をつく。
その中で、ミレアだけは自己否定をしているがため、同調してダメージの量は少ないようだが……。
現れ、自身の渇望を広げた彼女は、間違いなくこの場のすべてにおいて脅威なのは間違いはなかった。
なによりも――おそらく、彼女に対しては異能を持つこの世界の者では対等に立てない。