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正しき魔王の旅記  作者: テケ
四章 偽善ヴァイス
118/175

027

「仕方がないことですわ。これもあの方の為――」



 ティアラのその言葉を答えた瞬間、大気が震え重圧が弾けた。

 それは――エリザベートの怒りが頂点へ達した合図だった。

 

 毒牙のようにねっとりと広がる闇。

 地震でも起きているかのような、衝撃が世界を揺るがし始め――地を空間をすさまじく震わせる。

 

「!?」



 なんだ、これ!?

 

 

 圧力で硬直していた僕の体が、今度は重圧によって膝を着く。

 重く、苦しい……。

 水の中に居ないのに、空気を奪われ、心臓を握られている感覚が僕を締め付ける。

 

 

「きゃはは――少年」



 その圧に、僕をかばうようにしてミレアが僕の前へと立つと、少し体が楽になる。

 それでも――少しだ。動きを取れるほどには戻っていない。

 苦しく、立ち上がることもできない。

 

 ミレア腰に王達を見ると、ティアラ以外の王は僕が受けている同じ、いいやエリザベートに近い彼らはより強い重圧を感じているのだろう。彼らもまた重圧に同じように負けて、膝を着いていた。

 

「貴様がぁ貴様がああああああ」


エリザベートが何かに醜い者でも見るかのような、酷く歪み引きつった憎悪の表情をし、それと共に、震動は力を増し、この時空庭園にあるモノがその圧に耐え切れず、崩れ塵となり始める。

 波動が大気を震わし、うねり狂い爆発。

 暴風となり、エリザベートに台風の目にして荒れ狂う。

 

 そして――

 

「貴様が陛下への愛を語るなぁぁぁぁ!」



 叫び咆哮した。

 

 

 爆発した暴風が、周りの残骸を吹き飛ばし、倒れる申子(チルドレン)も巻き込まれて飛び去る。凄まじさに、王達も動けずにいた。

 

 僕はミレアに守られて、どうにかそこにとどまることができている。

 ミレアが居なければ、僕も瓦礫やチルドレンの子と同じように吹き飛ばされていただろう。

 

 怒り、怒り、怒り。

 荒れる暴風は全て、憎しみを持つ強い怒りがよどんでいて、それが自然現象の風圧に乗せられて、彼女が凄まじく怒り狂っているのが分かる。

 

 

「陛下が願うなら私は醜い豚にすら犯されよう。陛下が願うなら地に這いクソの溜まりにでも飛び込もう。陛下が願うならどんな辱めだろうとうけよう。陛下が願うなら――、陛下への忠義と愛は絶対!それを裏切った貴様が、貴様ががああああああああ!!」



 暴風と重圧はより荒れ狂い、この場所が破壊されそうなぐらいの力へと弾け、

 

 

「エリザ!ダメ!」


 ――パリン。

 

 エリザベートの後ろに立つ宝石の纏い現象の中で立つエリーゼが叫ぶと、エリザベートにまとわりつくエリーゼの宝石は砕け、粉々になり暴風の中に巻き込まれていく。


 彼女の持つ太太刀が纏う黒炎が劫火となって練りを上げる。

 

 

 なんていう、忠義、なんていう愛。

 彼女は、エリザベートは間違いない。勇者を愛している。

 その愛は絶対で、勇者への裏切りなんてそこにはありえない。あってはならない。

 その気持ちが、彼女の感情が暴風と圧力から感じられた。

 

 絶対的な愛、絶対的な忠義。


 その彼女の絶対を破ったティアラが許せないのだ。

 あってはならない、同じ守護者としてティアラの行動は罪に値する。

 

 だから――

 

 

 振り上げた太太刀を乱暴に振り下ろし、エリザベートはティアラへと飛び出す。

 

 

「っ――アナタのその忠義、尊敬しますわ。ですが――ワタクシにも曲げられない忠義があるのです!」



 圧と暴風に耐えるティアラの剣の金の粒子がその数を増やす。

 輝きを放ち、黄金の一閃となって振り下ろされ、エリザベートの黒炎へ激突せさんと輝きを放つ。

 

 

「ティルウィング!」



 放たれるは怒りと憎しみの黒炎。

 放たれるは思いと夢の黄金。

 

 双方が激突するまさしくその瞬間。

 

 

「そこまでにしてくださいましお姉さま方」

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