023
そして風がやむと共に、次の瞬間――背後の二階建てほどのレンガ造りの、並ぶ建物が消し飛んだ。
レンガや木材の破片が飛び散りそこから土煙が広がって、何が起きたのか見えなくなる。
「クラリアさん!?」
煙幕の中から、クラリアとアレイツトルフォがバックステップで飛び出てくる。
「マコト!?――逃げろ!ここはお前がくるような場所ではない!」
こちらに気づいたクラリアが、僕へと叫ぶ。
何やら、慌ててる。いや――なにかとてつもない者と戦っている。
そう思った。
何故なら、飛び出てきた二人が纏う力は波半端のものではないことを感じたからだ。
近づくだけで、まるでストーブの熱にさらされているように肌がじりじりする。普通の人間からは感じる事のない圧力を、そんな感じを二人から受ける。
正直、目の前にしているだけで描け焦げそうで、圧倒的な力を放っているは明白だった。
それは――おそらく女神の力を纏っているからだろう。
二人の周りには女神の姿はない。その代わり、クラリアは翠のオーラを緑、アレイツトルフォは碧のオーラを体から放っている。それがうねる炎のように漏れていて、それが僕へ圧力をかけている正体だと思う。
なによりも、クラリアの右眼は緑に、アレイツトルフォの右眼は碧に二人とも宝石のように高貴な輝きをしている。
あれは僕にミレアが憑依した時と同じ。女神が体へととりついている事だ。
クラリアが手に持つ、緑の火が付いた火縄銃を立ち込める煙の方へ構え、アレイツトルフォが自身の身長程の、先端がメタリックグリーンの宝石でできた刃の付いた真っすぐな槍を構える。
間違いなく、何かと戦っている。
途端、目の前の土煙の中で何かの軌跡が走り、煙は切り裂かれ消し飛んだ。
「くっ――」
再び突風が巻き起こり、僕はそれに耐え。
そして消え去った煙の中から――、
「アッハハハハハ―――」
高らかに、狂ったがごとく響く女性の声と共に、彼女は姿を現した。
「クラリアアアアアアアアアアア!」
その彼女は憎悪の表層を浮かべて叫び、クラリアへと持っていた巨体な太太刀に黒炎をその刃に纏わせて、立っていた。
真っ黒の和風ドレスに長い銀髪の彼女、その彼女の背後からもう一人歩。
「エリザ落ち着いて!」
もう一人、瓦礫の山を越えて、ヨタヨタと同じように白い和服ドレスを着た銀髪の子が並ぶ。
双子?そう――最初の思ったのがソレだった。