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正しき魔王の旅記  作者: テケ
四章 偽善ヴァイス
113/175

022

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 目を瞑り、扉を抜けた僕が目を開けると、そこは水の国ではないどこか別の場所へ移動していた。

 

 どこか別の場所――そいうのもまたおかしな表現だが、そこは、もともと居た場所とは雰囲気は一転して、地獄だった。

 どこかの街だろうか?

 空は暗く星が瞬いている、その夜の街を紅く炎が見渡せばレンガと木のを燃やしチリチリと凄まじく燃えていた。

 動く人は見えない、ただ、燃え崩れている悲惨な光景が僕のめを引く。

 

 どうみても、焼けている戦場と化した街だ。

 どうやら、僕たちが出てきた場所は、どこかの小さな町の大きな広間の花壇の中央にある扉だった。入って来た煽薔薇の扉よりも大きいが、ステンドグラスでできた扉だった。

 ただ、異なるという点と言うと煽だけではなく、赤や黒、黄色や白と言った他の色の薔薇も飾られているということだ。多分――開けているしこの扉が、ここの正門にあたるような場所なんだろう。花壇にもカラフルに薔薇が飾られている。

 

 僕はその扉からはなれ、一足先に出ていたミレアの横で辺り見渡した。

 

 

「ミレア――これは……?」



「きゃはは――おそらく、もう争いは始まってるのでしょうね」



 じゃあ……ここが言っていた時空庭園とやら。

 見たところ小さな町しかみえないけど……。

 

 けれど――その町は燃えている。

 他の王や女神の姿もない。

 

 そこで――ふと、気づく。

 

 

 あれは……!?

 

 燃えている建物の下、微かに動いている誰か倒れている。

 しかも――それは今にも建物が崩れ落ちそうな。

 


「危ない!」



「きゃはは――」



 僕の叫びに気づいた、ミレアが笑うと、その建物は崩れる瞬間凍りつき固まった。

 

 慌てて、僕はその倒れている子へと走り寄る。

 

 

「キミは――」


 走り寄った、僕はその子を抱きかかえると驚愕した。

 なんせ――小さな女の子だ。

 それは銀のフード付きのコートを着て、フードが降り顔が露になると、銀髪のアンジェと同じ、それよりも少し小さいぐらいの女の子が倒れていた。

 


「っ――」



 見たところ、目立った傷はないようだが、その子の意識はもうろうとしたものだった。

 

 ここの住民なのだろうか?

 だとしたら、戦いに巻き込まれた……。

 

 

「いいえ――きゃはは。見たところ、時空庭園の申子チルドレンね」



「なにそれ?」



「きゃはは――愚かな少年に分かりやすく言うなら、天使――とでも言ったところね。守護者になれなかったなりそこない、ここを守っている子の一人。きゃはは――勇者が異世界から集めた少女たち――きゃはは」



 なら――この子は、

 

 

「きゃはは――おそらく先に来ていたティアラたちにやられたのでしょうね」



 なんだ、それ――、



「こんな子にも手出すのかよ!」



「ん……」



 瞬間、抱きかかえていた少女が目を覚まし、

 

 

「――女神!?」


「のわっ!?」



 その手にナイフを顕現させ、掴んだと思うと、僕の首目掛けて振り払ってきた。

 驚き、僕は慌てて彼女を振り落とし、離れた。

 

 

 その少女が、ミレアの顔を見て瞳を大きくし、何やら驚愕している。

 そして、すぐにその表情は憎しみと怒りの表情に変わって、

 

 

「――やっぱり、アナタの仕業!?」



 きゃはは――。

 言われたミレアは、ただ笑った。

 

 

「知らないわ――少しお眠りなさい」



「女神!」



 きゃはは――そう笑らうと、ナイフを再び振り上げた少女は氷に瞬間的に包まれ、小さな氷山の中に閉じ込められ動かなくなった。

 

「おい!ミレア!何も殺さなくても!」


「落ち着きなさいや少年、きゃはは――ただ閉じ込めただけよ。ただの氷じゃない、時間を停止させているだけ――きゃはは、外に居るよりは安心だわ」



 きゃはは――。

 笑われて、少し冷静をとりもどし、僕は立ち上がり凍った少女を見る。

 


「……こんな子まで巻き込んで……」



 さっきの、明らかに憎しみを持った表情を想い出すと――



「きゃはは――余計な思い入れはやめときなさい。この先もっと地獄を見るのだから、こんなとこで踏みとどまれるのはいやよ」



 そんなこと言われなくても……。

 

 

「ああ――少年。忘れていたけども、どうするのかしら?ティアラを止める?それとも勇者を亡ぼす?」



 その問いに僕は――、

 

 

「どっちだってない、アンジェを生き返らせるために、この剣が教えてくれるって言ったのはミレアだろ?」



 そうだ――正直、どっちもどうだっていい。ただ、アンジェを生き返らせるために、ここへ来た。ミレアと共にこの先に答えがあると思ったから。

 

 だいたい、誘ったのはミレアだろう。なら――女神らしくそこは導いて欲しいところだ。

 

 

「きゃはは――そうね」



 ちゃんと導いてくれよ。信じてるんだから……。

 

 

 その時――張り裂ける特大な爆発音が鳴り響いた。

 

 いまのは――鼓膜を破りそうなぐらい大きなその音は、次の瞬間衝撃派のような突風が燃えた街の火を一撃でかき消すとともに吹き荒れた。

 

 

「っ――!?なんだ……」



 その強い風に身をかがめ、踏ん張る。

 

 

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