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正しき魔王の旅記  作者: テケ
四章 偽善ヴァイス
104/175

013

「ブレンから連絡は来ていたからな!――それに、そこのクレリア嬢にも訊いたのだ!」


 アーガストの言ったことに、火の国との揉め事にもなるやもしれんからの。と静かにクラリアさんは付け足した。

 

 

 ブレン……あの砦の隊長?だっけか……既にアンジェによって殺されいない人間であるが、あの人が事前に知らせていたのだろう。それに――クレリアさんから訊いているのなら話は別だ。フィーも言っていたが、砦が原因で戦争になるかもしれないと言っていた。

 

 そうならないように、事前に話したということか……。

 

 

「砦ではブレンが世話になったな!」



「いえ……」



 実際、世話になったのは僕たちの方だけれども、きっとそういうことを言っているんじゃないんだろう。あのオッサンと、あの砦の人たちを全員殺してしまったことを言っているのだろう。

 そういう意味では世話になったというのは間違いではないのだから……。

 

 けど――だからと言って、僕は何も責任を取ることもできないし、責められても仕方ない。

 

 あのことについては、アンジェの気持ちに気づけなかった僕が悪いのだから。ただ――あの時、僕がアンジェの気持ちに気づいていればこんなことにもならずに、火の国で保護をしてもらえたかもしれない。そう思えてしまう。

 

 

「随分ウチの国の連中を荒らしてくれたようだな」



 ユーリが言った。

 

 

「きゃはは――アナタのところの兵が貧弱なだけでしょう?きゃはは」



 僕を責めるユーリを見かねてか、ミレアがそれをあざ笑う。

 

 

「なんだと?だいたいなんでお前がいるんだよ。ボク達になにも言わず結界を出て言ったお前がここに何しに来た」


 

 二人のやりとりを見るに、やっぱりミレアは教団やこの集まりとは無関係らしい。ネベリアには歓迎されているものの、こうして言われると僕たちはここに居る王や女神たちには歓迎はされていないのだろうと感じてしまう。

 

 

 クレリアさんもそんな感じだったし……。

 

 

「あらそう?アルは別に構わないわよ?」



 険悪な感じのユーリとミレアの間に割って入ったのは、アーガスト、ユーリの左隣の席の後ろに立つ女の人だった。

 

 身長や年は17、18ぐらい、真っ白な長そでのYシャツに黒の長めのスカートで清楚な感じをしていて。民族衣装のような恰好の彼女だが、背中には天使を思わせる白い羽が生えており、人ではない事はよく分かった。そんな彼女は優しい母性を感じる顔立ちをしていて、緑の彩度の効いたポニーテールに翡翠の瞳。背中の羽のことを抜けば、豊満な体つきの彼女は街の優しいお姉さんという感じだった。

 

 

「お前がよくてもボクが気にくわないんだ!」



「そうねえ――火は水が苦手だものねえ。きゃはは――」



「そーいうことじゃなねぇーよ!」



「やめとけ、ユーリ」



「お前もだアルティナ」



 言い争いを始めた二人を、火の国、風の国の双方の王が止め、ユーリは口は不満そうにもう片方の女神は自身ありげにドヤ顔をしやり取りを止めた。

 

 

「風の国代表――アレイツトルフォ・カナトだ」



 そう言った風の国の王は、他の若そうな(年齢は若くない)王と比べ置いた老人だった。

 総白髪に白い口周の剃った後のある髭、気難しそうな雰囲気で置いてはいるがひ弱ではない、むしろ巨体でクマのような大男。服装も灰色の皮のコートを着ており、老いてはいるが、その老いを感じさせなない、むしろ渋いものを感じさせられた。

 

「アルティナ・カナト・ジン。長いからアルで構わないわ」



 後ろに居るの女神もそれに合わせ僕へと自己紹介する。

 

 

「今は身内でもめている場合ではなかろう」



 アレイツトルフォの渋い声が響く。

 

 その問いに、一人対面側、左右空席の真ん中に座しずっと黙って様子を見ていた真っ白な彼女は静かに答える。

 

 

「そうですわね。――まずは座って楽にしてはどう?」



 そう言ってアレイツトルフォとクラリアさん間の空席を指し、僕を座るように促した彼女はこの中で最も王と言っても違和感がないほどに気品に溢れていた。

 

 なんというか、真っ白で美しいのだ。

 年は18ぐらいだろうか?長い黒髪に紺の細い瞳、精緻な人形のような作られた理想の美しさでさ持つ顔立ちで、なんぴとたりとも傷をつけてはいけない。そんな気までしてくる。その上、彼女がきているのは純白のウェディングドレスのようなドレスだ。ブーケには青い薔薇の飾りがついて、黒髪と白の服装がその良さをお互いに引き出していた。彼女には逆らえない。恐怖や威圧と言うことではない、存在が高貴すぎて、彼女へと発言するには恐れ多く感じる程だった。


 

 そんな彼女に僕は逆らえず、言われた通り座へとついた。

 

 彼女自身が女神ではないかと疑ってしまう。だが――そういう訳ではないのだろう。

 その後ろにもう一人、この場で誰よりも女神という雰囲気を放つ彼女がいるのだから。

 

 

 

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