009
「え?」
告げられたが、信じられない。
なにせ、僕の知っているミレアならそんなことをする筈がない。
だって、
「ミレア、キミは国や人間が嫌いなんだろ?なのに、国の為にそんな大きなことをするとは思えないんだけど……」
そうだ――ミレアは嫌いなのだ。
人間が。
この国が。
僕に対して今まで幾度となく愚かな人間は嫌いと、自身が人間が嫌いであることを言ってきた。そんなミレアがわざわざ自国を守るために、そんな大きなことをするとは思えない。
これが仮に、ミレア個人が自国や他国を亡ぼすと言うなら、道化師じみたミレアらしくて分かる気がするのだけれども……。
この女神がそんなことするとは到底思えない。
「だろうね」
言って再び、ネベリアは階段を登り始める。
「その女神が国も何もかも捨てたのは魔王が討たれてからの話だよ。アタシも理由については知らないが」
討たれた後って……。
「魔王が討たれたあと、女神は封印されたんだろ?」
その時に嫌いになった?負けたから自分が勇者に敗北したから?そういうことなのか?
「ねえミレアどういうこと?なんでキミは人を嫌いに――」
「きゃはは――少年。それを知ったところでキミは意味のないことよ。小娘もそんなくだらないことを言うために待っていたのではないのでしょう?」
無表情で言って、彼女は再び階段を登り始める。
「まあアタシとしては――いや、国の代表としてこの国を捨ててくれた理由は知りたいと思うがね。教団としてはどうでもいいのは確かだ……。アナタ様も早く来たまえ、悪いことをしたいのだろう?」
言われ、慌てて先に上って行ったネベリアの後を僕は追った。