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オズの異能使い(改稿中)  作者: 鋭角マニア
第1章 オズ編
8/10

番外編 嘘?本当?~エイプリルフール~

時系列的には割と後のお話です。

書きたかったからこのタイミングで書いただけです。はい

エイプリルフールネタを次の日に投稿してやったぜ…


「ねえ正宗、今日が何の日か分かる?」

「……何の日?」


 はて、今日は何かあっただろうか。

 心なしかワクワクとしているアリスを見て、正宗は真剣に考える。


(はて……何の日だっけか……)


 いくら待っても答えられない正宗にしびれを切らしたアリスは、自分で答えを言う。


「もう、エイプリルフールだよ!全くもう!」


 腕を組み頬を膨らませ、ジトリとこちらを見る様子はとても可愛いが、言われてみれば今日は4月1日、俗にいうエイプリルフール――嘘をついても良いという日だ。全国の若者の例に漏れず、アリスもそういうのに興味があるようだ。


「とは言ってもアリス、エイプリルフールなんて夏祭りやハロウィーンなんかと違って決まったイベントがある訳でもない。それにこうやって俺が気付いた以上、騙すって言うのも難しいんじゃないか?」


 俺がそう言うと、「チッチッチッ」と指を振り分かってないなあというジェスチャーをするアリス。


「今日は正宗に僕と勝負をしてもらうよ!」

「勝負?」


 また今回は何を考えたんだと、警戒心を強める正宗。そんな彼に対して、アリスは楽しそうに勝負について説明する。


「勝負内容は騙し。僕が正宗を騙すから、正宗は騙されないようにしてね!日付が変わるまでが勝負だからね。」

「……それだけ?」


 どんなとんでもないことを言うのかと警戒していたが、意外とシンプルと言うか……


「勿論それだけじゃないよ。お互いにメリットが無いと面白くないからね。」


 その言葉を聞いて、正宗は背筋を冷たいものが流れるのを感じた。

 嘘だろ……何を言い始める……?


「と言うことで勝ったほうは負けたほうに一回だけなんでも言うことを聞かせられる!ってことで始め―!」

「始め!?マジでやんの!?」

「勿論!」


 その後お互いが膠着状態に入り、無言の状態がしばらく続く。しかし


「はあ……とりあえず夕飯の買い物行ってくる」


 こんなことをしていても無駄だと気が付いたのか、正宗がため息をついて立ち上がった。


「うん、行ってらっしゃーい」


 ドアが閉められた後には、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるアリスの姿があった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 さて……アリスが変なことを言うのはいつもの事だとして重要なのは……


「アリスはどこまで本気だ……?」


 いつもの遊びではある。しかし『何でもいうことを聞かせられる』は正宗の思考をショート寸前まで追い込んでいた。


「何でもって何でも?けど流石に駄目だろいやいやおいおい……」


 目の焦点が定まらず、何かぶつぶつ言っている正宗を町の人は見ないようにしている。

 そこに声をかける人物が現れる。


「正宗、やっぱり手伝いに来たよー」

「アアアアアリス!?」

「どうしたの?アが多いよ?」


 にこにこしたアリスを見て、ようやく落ち着きを取り戻していく正宗。


(くっ、落ち着け俺……あれはアリスの策略だ。俺の心を乱そうという策略だ……俺は断じてそんな手には引っかからない!)

「正宗。大好き♪」

「グハッ……!?」


 上目遣いでの不意打ちに血反吐を吐く正宗。アリスのような美少女からの「大好き」は男性にとって致命傷にもなりうる。

 身悶えする正宗に、アリスは容赦なく追撃する。


「ほら、行こっ!」

「……」


 自分の腕を正宗の腕に絡めるという行動に、やられた本人の脳はオーバーヒートしている。かろうじて「これは策略これは策略……」と呟いているが。

 そんな正宗を引っ張って、アリスは楽しそうに買い物をし始めた。後に正宗は、今までのどんな訓練よりも辛かったと語る。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 結論から言うと、正宗の精神はこれ以上ないほどにサンドバックにされた。内容は……彼の名誉のため伏せることにしよう。


「楽しかったねー!」

「ウンソウダネ……」


 家に帰りつくと時間は19時30分、少し遅くなりすぎたようだった。


「じゃあご飯作るから……」


 結局あれからずっと腕を組んでいたため、正宗の精神は限界だった。そのため逃げるようにキッチンに向かう。


(全く……アリスもエイプリルフールだからって冗談の質が悪い……)


 そんなことを考えながら、夕食の準備をする正宗。時間が経つにつれて、バクバクと鳴りっぱなしだった心臓は落ち着きを取り戻してくる。そしてそれと同時に黒い欲望も沸々と湧き上がってくる……


(よくもやってくれたなアリス……もう容赦しない、勝ってあんなことやこんなことでもなんでもしてやる……)


 そんな警察に捕まりそうなことを考えながら、出来上がった料理を皿に盛り付ける正宗であった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 それから何事もなく時間は進み現在は23時45分、二人はリビングで各々やりたいことをやっている。正宗はともかくアリスは武器の手入れだが……

 正宗が読書に夢中になっていると、アリスが一旦手を止めて声をかける。


「ところで正宗」

「何?」

「正宗はもし勝てたら僕に何を要求するつもりなの?」

「そりゃあお前あんなことやこんなことを……」

「ふーん」

「ふーんってお前……」


 もっと盛大に拒否されると思っていた正宗は、アリスの反応の悪さに少しだけガッカリする。その為少しだけ、ほんの少しだけ彼女が何をする気なのか聞いてみたくなった。


「じゃあお前は何するんだよ」

「え?」


 まさか自分に聞かれるとは思っていなかったのか、手入れの手を止めて正宗の顔をまじまじと見る。そしてそのまましばらく微妙な空気が流れる。


(え?何この空気。俺悪いこと言った?もしかして地雷踏んだ?)

「……つ」

「え?」


 微妙な空気が続く中アリスがぼそぼそと言葉を発するが、あまりにも声が小さく聞き返す。


「…………秘密」

「……おう」


 珍しくしおらしいアリスに、大変反応に困る正宗。


「……なーんてね、嘘だよ!」

「お、おまっ……お前ー!?」

「正宗、近所迷惑だよ?」

「ここ丘の上だからな、近所とか無いからな!」


 正宗は「緊張して損した……」とため息をつき、アリスはこう続ける。


「じゃあ騙された正宗は僕の言うことを聞いてもらうよ!」

「はいはい……何でございますか」


 負けて悔しかったのか投げやりに対応するが、次の瞬間に固まることとなる。


「これからもずっと隣に居てね。じゃあお休み!」


 そう言ってとことこと走り去るアリスを見て、「これが今日一の嘘ってオチか……」と虚空を見つめていた。


「……寝よ」


 正宗が時計を見ていれば、この時にはもう日付が変わっていることに気が付いたかもしれないが……それはそれで心臓に悪いのでこれでよかったのかもしれない。

 そしてその姿をドアの隙間から見つめるアリスは


「今日は一回も嘘ついてないんだけど……」


 と言いドアを閉めた。

ブックマークや感想ありがとうございます!

ただ読んでいただけるだけでも嬉しいですが、形に残ると更に嬉しいです。

次回はようやく1章スタート。

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