第5話 異能力者と無能力者~プロローグの終わり~
タイトル通り、今回でいよいよプロローグが終わります(遅い、ただ遅い)
「で、燕さん。オズについて教えてもらえるんでしたよね」
「ああ、そうですそうです。全く、バカ弟子のせいで忘れてましたよ」
「俺のせいっすか……」
不服そうな恭介を無視し、燕さんは話を再開する。
「正宗君、君にはまずオズについて知ってもらわなければいけない。が、現状君はオズの事をどれくらい知っていますか?」
「……正直全く知りません。自分とは全く無関係の事だと考えていたので……」
「うん、確かにそれが普通かな。良い機会だ恭介、折角だからお前も復習しなさい」
「押忍!」
「ではまずオズについての基本中の基本から」
そう言って、燕さんはオズについて語り始めた。
「オズは異能者管理協会、通称協会によって作られました。ここまでは良いですね?」
「はい。それはまあ、テレビとかでも見ますし」
「では協会とオズとの関係については?」
「関係?関係も何も、両方同じなんじゃ……?」
「違いますよ」
きっぱりと否定される。今まで協会とオズは同じものだと思っていたが、どうやらそこから認識を改める必要がありそうだ。
「オズは協会によって作られた。間違いでもありませんが、完全に正解というわけでもないんです」
「……え?そもそもそこからですか?」
「はい、補足すると、『オズは同盟国の支援によって、協会に作られた』です」
同盟国。それは知っている、確か
「確か協会設立時に、協会の考え方に賛同した国でしたっけ」
「そう、その同盟国の支援によって、協会は活動できているわけです」
「でも師匠。支援なんて同盟国の奴らに何のメリットが有るんすか?慈善事業っすか?」
確かに。勝手な物の見方かもしれないが、国というのは基本的にメリットがあるからこそ動くのではないだろうか。今の話ではメリットがどこにも感じられないのだが。
「お前にしては良いところに気が付きましたね。そうです、メリットは実際に存在します」
メリットという言葉が気になり、恭介と二人耳を傾ける。
「同盟国側のメリットは、協会を伝って異能力者たちに汚れ仕事を任せることが出来る点です。つまるところ、管理は協会に任せたうえで私たちを馬車馬のように働かせようって魂胆ですね」
「マジかよ、きったねえな……」
「全然知らなかった……俺はただ、異能力者が危険だから管理されているとばかり……」
俺がそう言うと、燕さんが笑う。
「はは、確かにそうも見えるかもしれないね。けどその気になれば、私たちはすぐに殺されてしまうんだよ。例外はあるけどね」
「異能で身を守れないんですか?」
純粋な疑問を燕さんにぶつけると、彼は更にこう返してきた。
「実際のところ、純粋な戦闘力という面では兵器を所持した軍の方が強いんです。銃を持った何人かの人間に囲まれただけで、ボクらは動くこともできない」
なるほど、怖いから閉じ込めるんじゃなくて利用したいから管理するのか……
そう考えていると、燕さんがまとめに入る。
「まとめると、協会はオズと同盟国を結ぶパイプなんです。協会の目的は依然として不明ですがね」
「協会の目的は分かってないんすね」
「ええ、残念ながら」
それがオズ……改めて、なんてところに来ちゃったんだ……
「では次に、オズについて説明しましょう。とはいっても多くは無いので気を楽にして聞いてください」
燕さんは一呼吸置くために、お茶を飲んでから話を続ける。
「オズは国籍ごとに区域分けがされています。私たちは日本国籍のため、JP地区です」
「区域間の移動は可能なんですか?」
「可能ですよ。と言っても基本的に英語圏の国々で一緒になっていますが。やはりコミュニケーションというのは大きな課題なんですよ」
なるほど、意思疎通が出来なかったらどうにもならないもんな……
「正宗君はそれ以前の問題なのであまり深く考えなくても構いませんよ」
「はい、話半分くらいにしておきます」
「これでオズについての大まかなことは話終わりました。詳しいところは、君が成長したらまた」
「じゃあ次は……」
俺が恐る恐る燕さんに尋ねると、彼はにこりと笑い言う。
「はい、お待ちかねの異能についてです」
「よっしゃあ!」
「五月蠅い馬鹿」
「いだい!?」
またやってる……俺はこれを何回見せられるんだ……?
「ではまず一つ質問を。正宗君は異能者と無能力者の違いは何だと思いますか?」
「え?えっと…………何か変な力を使えるか使えないか……?」
考えてもこれと言った答えは出なかったので、とりあえず感覚で言ってみる。
そんな俺の答えを聞き、恭介が鼻で笑う。
「はっ、これだからパンピーは!」
流石にむっとして言い返す。
「じゃあお前は分かるのかよ」
「当然。どんな馬鹿でもこれが分からない奴は確実に異能力者じゃない」
「寧ろ君が分からないのは当然なんですよ、無能力者なんですから」
馬鹿でも分かる?分からないのは当然?何が?どういうこと?
二人の言葉に、更に頭が混乱してくる。
「……ギブです。何が何だか……」
「それは二つあります。まず、異能力者と無能力者でもっとも違うのは目です」
目と言われじっと見つめるが、別段変わったところは無いように思える。
「ははは、外見的なものじゃありません。見えてるものが違うんです」
そう言って燕さんは、俺に指を向けてくる。
「これは何だと思う?」
「……指じゃないんですか?」
寧ろ指以外の何に見えるのだろう。あ、手とか?
あほなことを考えていると、燕さんはとんでもないことを言い始める。
「今君の前には、青い燕の絵がゆらゆらと揺れています。見えませんね?それが私たちとの違いです」
「え?いやいや、そんな馬鹿な。どこにあるんですか?」
当然の疑問だ。あるはずのないものを有ると言われても納得できない。そう思い、もう一度口を開いて抗議しようとした。しかし
「!?…………!!」
開かない……口が。あり得ない、どれだけ力を入れてもピクリとも動かない……!
「口が開きませんね?すみません、すぐに解きますから」
すると、先ほどまでのことが嘘のようにすんなりと口は開いた。
「……どういうことですか?今確かに……」
「見えないからってないとは限らないって事ですよ。今私は、魔力で君の口を開かないようにしました」
魔力。また新しい単語だ……けど知らないといけない、理解しないといけない。生きるために。
「……魔力?」
「そう、呼び方は何でも良いんですけどね。便宜上、魔力と言いましょう」
「つまり……さっきの青い燕とやらも魔力で作ったってことですか?」
「そう、そして――」
「異能力者と無能力者の大きな違いは、魔力が見えるか見えないか……?」
「その通りです。バカ弟子と違って、自分で考えるということをよく分かってるようですね」
けど、それが分かったからって俺に何が出来るんだろう……?寧ろ今の俺じゃあ絶対に戦いなんて無理って事しか分からないんだけど……
「正宗君。君は恐らく、それが分かっても自分には何も出来ない程度の事を考えているでしょう」
エスパーかこの人は
「異能力者と無能力者の違いがそれなら、裏を返せば魔力を使うことが出来れば近づけるということです」
「……は?そんな事、可能なんですか?」
「可能です。既に前例が有ります。魔力さえ扱えるようになれば、君も自力で空を飛ぶ程度のことは出来ます」
「……異能も使えるようになるってことですか……?」
「そこはもう一つの違いが関わってきます。そしてそれは魔力操作と違い、努力でどうにかなる次元の問題ではありません」
「そうですか……」
一瞬希望が見えただけに、正宗は落胆を隠すことが出来なかった。しかし燕はこう続ける。
「異能というのは、魔力を自分自身というフィルターに通し、純化された魔力『固有魔力』を利用することで扱うことが出来ます。第二の違いは、フィルターになれるかどうかです」
各々のフィルターに差があるからこそ、魔力を扱うという基本は同じなのに、まったく違うものに見える。それが異能って訳か……
「では君が異能と近いことをするためにはどうするか。簡単です、他にフィルターを設ければいい」
「……あるんですね?そんな方法が」
正宗は今までの会話で佐々木燕がどんな人物か、ある程度は把握した。
この人は、無駄なことは話さない。それが出来るし、俺に必要だからこそ、こんなにもしっかりと説明してくれているんだ。
「私たちを信用して、安心してください。しっかりと手配しておきますから」
そして把握した結果気づいた。佐々木燕は何かを隠している……しかし正宗は、そんなことは些細なことだとも考えていた。
たとえ何かを隠していたとしても、燕さんはそれ以上に信用できる人だ。俺は、俺の感覚と燕さん自身を信じよう……
「しかし正宗君、君にはそれ以上に足りないところが有りすぎます。明日からは君にも訓練に参加してもらいます。私が直々に君を鍛えてあげましょう」
その申し出に正宗は素直に感謝し、燕に向かい頭を下げた。
「それは……今日も実感したところです。それを鍛えてもらえると言う……ぜひよろしくお願いします!」
「……私のしごきは厳しいですよ?耐えることが出来ますかね……?」
にっこりとほほ笑むその顔は、まるで悪魔のようにも見えたと正宗はのちに語る。
そしてこの日、正宗の安息は終わりを迎えたのだった。
次回はプロローグ終了記念に、ここまでのキャラクタープロフィールを公開します。




