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オズの異能使い(改稿中)  作者: 鋭角マニア
第1章 オズ編
4/10

第4話 師と弟子

「疲れた……」


 もう一日中歩き回った気分だ……


「お昼ご飯作るの手伝おうか?ボクも手伝いくらいならできるよ?」

「いや、大丈夫。台所は一人で立ちたいんだ」

「……やっぱり正宗って変わってるね?」


 そうだろうか、自分ではごく普通の人間だと思うんだが。ただ料理をしてる時ってこう……考え事に没頭できるというか何というか。


「じゃあボクはお皿とか出してるね」

「おー、任せた」


 あっちはアリスに任せて、俺は料理を作ることに専念する。希望は聞いてなかったが、まあハンバーグとかで大丈夫だろう。

 料理は好きだ。理由?自分の世界に没頭できるから。現代には雑音が多すぎる、こうやって一人にならないと息をついて考える暇もない。料理をしながら、これからのことについて考えるのは実に有意義だ。

 まず俺の現在目標。それはオズでの安定した生活。つまりは慣れることだ。なら慣れるためにはどうするか……


「まあそんなの長く過ごす以外無いよな。うん」


 ……駄目だ。考えようにも俺の知ってることが少なすぎる。対して情報量もないのに没頭しようとしてもすぐに限界が来る……やっぱり第一目標はオズについて知ることだな。肉体面だけじゃなく、情報面があまりにも無力すぎる。

 そうこうしているうちにハンバーグが出来上がったため、皿に盛り付けに行く。するとそこには、予期せぬ客がいた。


「あれ?リーゼント?」

「あ?そういうお前は昨日のバスの」


 そいつは昨日のバスの中で俺に話しかけてきたリーゼントだった。どうしてこいつがここに?ていうか隣に知らない人もいるし。


「あれ?君たち知り合いだったの?」

「まあ知り合いと言えば知り合い……?いや、それよりこれはどういうことだよ、アリス」

「まあまあ、とりあえず座ろうよ正宗」


 アリスに促され、戸惑いながらも座る正宗。右隣にアリス、正面にごついリーゼント、その隣には線の細く、後ろで髪をひとまとめにした美形の男性が座る。


「で、一体これは?」

「君のことを紹介してたら、いきなり会いたいって言うもんだからさ。連れてきちゃった」


 きちゃったって……自由奔放だな。


「初めまして、私は佐々木(ささき) (つばめ)。君の事はアリス君から色々聞いたよ、これからよろしく正宗君」


 そう言って差し出された手を握り、しっかりと目を見て答える。


「どうも、佐々木さん。こちらこそよろしくお願いします」

「あんまりかしこまらなくても、燕で良いですよ」

「ありがとうございます、燕さん」

「うーん、敬語も良いんですよ?」


 そんなこと言われたって目上の人だろうし礼儀はしっかりしないと……

 困っているのを見抜かれたのか、こう笑顔で言われる。


「礼儀正しい良い子ですね。うちのバカ弟子とは大違いです」

「何言ってんすか師匠!俺の方が強いっすよ!」

「そういうことを言ってるんじゃありません」

「あだぁ!」


 調子に乗ったリーゼントの頭に、燕さんがすかさず突っ込みを入れる。


「ほら、貴方も自己紹介しなさい」

「うぃっす。俺は九条(くじょう) 恭介(きょうすけ)だ。よろしく頼むぜ、正宗」

「ああ、よろしく」


 差し出された手を握り返すと、恭介がプルプルと震え始める。


「……どうした?」

「何で師匠には敬語で俺には最初からタメなんだよ!」

「そんなことで?」

「重要だろうが!!」


 そうかな……とにかくこのままでは面倒くさいので、慌ててフォローを入れる。


「いやいや、お前がとっつきやすそうな奴だからだって」

「……マジで?」

「マジマジ」

「そういうことならしょうがねえな!許してやんよ!」


 そう言って向かいの俺の肩を笑顔でバシバシ叩く。面倒くさいけどこいつが馬鹿で助かった……


「えっと、じゃあ俺も自己紹介を。火野正宗です。ご迷惑をおかけすると思いますが、これからよろしくおねがいします」


 そう言って俺は深々と頭を下げる。


「ところで正宗君」

「はい?」

「これ美味しそうだね」


 と、燕はハンバーグを指さして言う。しょうがない、軽い歓迎として腕を振るおう。

 そう考え、苦笑いしながら正宗は席を立つ。


「それじゃあ、人数分作ってきます」

「うん、ありがとうね」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 正宗はそう言って台所に消えていった。恐らく台所なら、余程声を荒げなければここからの話は正宗に聞こえまい。


「……彼は本当に無能力者のようですね」

「だから言ったじゃないか。信じてなかったのかい?」

「いえ、信じていなかったわけではないのですが……やはり実際に見ると驚きますね」


 ジト目でこちらを見るアリスに、慌てて弁明する。彼女は怒らせると後が怖い。


「確かに、こっちって俺らみたいなのしかいないと思ってたんでかなり意外っすね」

「意外どころか……レアケースですよこれは」


 そう、レアケースだ。しかし無かった訳ではない、そして更にこのケースで最悪なのは……


「……無能力者というのは、このオズでは字のごとく無力です。そのため半年ももたずに亡くなります」

「……マジっすか、どうすんすかあいつ。このまま見殺しっすか?あだっ!」


 とんでもないことを言う恭介に、今度はアリスがチョップを入れる。


「そうならないように、今日集まったんじゃないか」

「ええ。それではまずコナーのところに行きましょう。武器が必要です」

「え?本当にあいつのところに連れていくの?早くない?」

「彼が無能力者である以上、確実に武器は必要です。早めに手に入れたほうがいいかと」

「そうだね……確かに」

「武器だけで良いんすか?そもそもあいつひょろすぎますよ。鍛えなおしたほうがいいんじゃないすか?」

「ではこうしましょう。明日は午前中にコナーの家へ、午後からは私たちのところへ連れてきてください」

「分かった、ボクじゃ力不足だしね。任せるよ」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 そうやって内緒話をしているうちに、正宗がハンバーグを追加で作り持ってくる。


「お待ちどおさま、出来ましたよ。さあ、食べましょう!もうお腹減っちゃって!」

「そうだね。折角作ってもらったんだ、ありがたく食べよう」

「うっす」

「「いただきます」」「いただきまーす!」「ただきやーす!」


 それぞれのバラバラの声が食卓に響く。


「うめえな!これ!」

「そうか?サンキュー」


 人に評価されるためにやっているわけではないが、やはり好きなことを人に褒められると気分が良くなる。


「ですね。私が作ってもこうは出来ません」

「そりゃあ師匠料理下手ですからね」

「黙らっしゃい」

「あだっ!?」

「またやってる……全くもう」


 アリスが呆れたような声を出す。しかしそれとは別に、楽しそうでもある。

 よかった、みんなが楽しんでくれて……


「ああ、ところで正宗君。食べながらで良いので聞いてもらいたいことがあるんですが……良いですか?」

「はい。何でしょうか?」


 燕さんが話始めると、アリスも恭介も食事の手を止め話を聞く。何だろうか、聞いてもらいたいこと?そんなに重要なことなのだろうか。


「……君は本当に、オズで生きる覚悟は出来ていますか」

「覚悟ならとっくに……」

「本当に……?」


 燕さんの気迫に押され、言葉が止まる。


「考えても見てください。貴方に何が出来るというんですか?生きるということはそんなにも楽な事でしょうか?」

「……分かりません」


 そう、何も分からない。分かるわけが無い。覚悟などという強い言葉を使ったところで、所詮正宗は日本という温室育ち。


「何が出来るかなんて分からない。きっと何も出来ないと思います」

「それでも君は……生きると言えますか?」

「生きます」


 断言した。それほどまでに、正宗の生きることに対する執着は強かった。


「死にたくないから生きるんじゃない、明日を見るために生きます。俺は、昨日の自分に誇れる自分になりたい。何も出来ないままで終わりたくない!」


 しばらく、食卓を無言が包む。どれくらい時間がたっただろうか、実際には10秒も経っていなかっただろうが、正宗には永遠のようにも思えた。そうして、燕が口を開いた。


「合格です♪」

「……へ?」


 あまりの豹変ぶりに、身構えていた正宗からは間の抜けた声が出る。


「いやあ、合格とかも本当は無いんですけどね。正宗君が今どんなことを考えてるか、本音を聞きたくてついね」

「怖かったですよ……いきなりビビらせないでくださいよ……」


 心臓止まるかと思った……俺の心臓動いてるよね……?


「じゃあ燕、お願い」

「はい。では正宗君の覚悟の程も分かったところで、まずはオズ。そして異能者と無能力者の違いについて教えましょうかね」

「え、いきなりですか?」

「はい、こういうのは早いほうがいいですから」

「ボクはお皿洗ってるから、ちゃんと話聞いててね?正宗」

「はーい」


 そう言って、今度はアリスが食器を持って台所に消える。


「これでお前も師匠に弟子入りか!俺のことを兄弟子と敬っても良いんだぞ!」


 え?弟子入りはともかく兄弟子これ……?


「調子に乗るなバカ弟子」

「あばっ!」


 ……こんなんで大丈夫なのかな?

 目の前であほな漫才を見せられ、少しだけ疑念がわく正宗だった。

今回は新しくキャラを出すことが出来ました。次回はいよいよ異能やオズについてです!

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