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第15話 言いくるめ

数枚の書類を片付けた後は騎士達の練習を見学していた。

だがどことなく違和感を感じている。

他の騎士達がイライラして落ち着きがない。つられて指導する教官や先輩達もささくれ立つ。

隣でウキウキしていたアイリスも、指導に回っていたアイザックもどんどん顔が曇っていく。

原因はかなり広い練兵場でデカい面晒してる。


「いつもはあの練兵場を大まかに二分して使っておりましたが、これは…」

「もー狭いったらないっす、中隊長。みんなカリカリしてるっす」

「そうですわね。何かしらの訓練をしようにも、あれでは無理です」


半分も使っていないというのに、広い練兵場でデカい面晒してニヤニヤしてるのは、男子高校生5人と取り巻きを含めて20人。

取り巻きには近衛兵や貴族の中でも新人や成り上がり達がいるそうだ。古参や中堅、先見の明がある人達は止めたようだが、肩をいからせこちらを見下すような態度。

「あれはまだ簡単ですよ。上手く行けば練習場所が取り戻せます」

「そう簡単に行きますか?」

「言いくるめるのはいつもやってました。頑張りますね」

隙あらば脱走しようとしたり、収集癖、夕暮れ症候群の彼ら彼女らを言いくるめて部屋へ戻らせたり、食事や水分を摂らせていけばおのずと身に付く。だから、「いつも通り」だ。


そうこう言っているうちに練兵場に騎士達が展開し、いつも通り練習を始める。

「何をしている貴様ら!来勇様の練習の邪魔だ!」

ダッシュで近づいてきた若者ににっこり微笑み、「おやまあ、そうなんですか?」とすっとぼける。

「でも人数が少ないのに独占ですか?名高い来勇様なら威力や範囲くらい押さえられますでしょうに。ああ、それを掴む為に練習なさってたんですね。で、加減するコツは掴めましたか?掴めた?なんて素晴らしい!それでは練兵場の半分を騎士達が使っても問題はありませんよね?ではごきげんよう」

畳みかけるように言質をもぎ取り場所も奪い返し、騎士達の凄みのある笑顔を前にすごすごと引き返した若者。こっちも大変なんだよ。

やっぱり練習するなら場所は広く取らないとね。

その後の訓練は、鬱憤も籠って若干鬼気迫っていた出来だったので、仲間を連れて戻ってきた相手が縮み上がって帰っていった。



「来賢様のおかげです!ありがとうございます!」

「どういたしまして。お役に立てて嬉しいです」

場数踏んでるせいか、畳みかけたせいか。さして感動は覚えないんだが、周囲の視線が熱っぽい。

「お若いのに素晴らしい腕前ですね!市井の民とおっしゃってましたが、本当に?」

「残念ながら本当に市井の民です。私のような若造はまだまだ」

「へー、何歳なんすか?」

「37歳です」

聞かれたから正直に答えたのに、アイザックは硬直、アイリスは目を白黒させ、他の人も「なん…だと」な顔でこっちを見ている。

そして全員の年齢を聞いて凹んだ。まさかの全員年下だと…!?


後で食堂で昼食をごちそうになったそうだが、味を覚えていなかった。もしかしたら薄すぎたのかもしれないけど。

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