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逃げた彼女と、ヒモになった僕  作者: 縁藤だいず
3章 望んだものほど、こぼれ落ちていく
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3-9 逃避


 隣国にはかつて、家族に一子だけを求める政策が存在した。


 二子目を儲けてしまうと罰則が発生する。


 それは貧しい家庭にとって生活できるかどうかの大きな問題だった。


 しかし二子目ができてしまった場合どうするか?


 国に報告をしないのだ。


 そうした子供は戸籍を手に入れることができず、

大人になっても働けない、といった大きな問題を抱えているにも関わらず、だ。


 イェンファの母親はそれを良しとしなかった。


 だからといって新しく身籠った子を堕ろすこともなく、

イェンファの将来が閉ざされる道を選ぶこともなく、別の選択をする。


 養子に出すことを選んだ。

 実際に珍しいことではなく、国としてもそれに対して口を出すことはない。


 既にこの政策の問題として、人身売買等が横行していたからだ。


 李家と繋がりのあった縁藤家は、その話をもらった時に激怒した。

 二子目もイェンファも両方を選ぶということを選択しなかった李に。


 お義父さんは娘を、優佳を溺愛していた。

 だからどんな罰則があろうと、子を家の都合で人に任せるということが許せなかった。


 けれど、お義父さんは最終的にイェンファを養子として迎えることを決意する。


 だが李に一つの条件を出した。

 今後、一切イェンファに接触をしない、と。


---


 僕たちはその夜、公園で一夜を明かすことにした。

 飛び出す形で家を出てきたけれども、僕もレイカもお義父さんと仲が悪いわけではない。


 ただお義父さんに会わせる顔はなかった。

 縁藤家とは家族ぐるみで付き合っていて、今後があるはずだからの”お義父さん”でもあったのだから。


 だから必然と駆け落ちみたいな流れに……って、まんまなのだが。


 でも家に帰れないとなると、ホテル!?

 とか一瞬考えたけど、そんなやましい考えが出てくる前に、そもそも財布を持ち合わせていなかった。


 僕の元住んでた家に帰る選択肢はない。

 だって、そこには”   ”の気配が残り過ぎているから。


 幸い、レイカはジーパンのポケットに小銭入れを忍ばせていたので、コンビニ弁当くらいは買うことができた。


 ……八百円しかなかったけど。


 コンビニに行く時、僕はレイカと手を繋いだ。

 最初はおずおずと手を握るだけで、まだなにかに迷っているようだった。


 だけど途中からは開き直ったのか笑顔が混じり、レイカからも手を握り直してくれた。


 その変化が、嬉しい。


 五年前とは違い、後ろ手を引かれるだけでなく、

隣に自分から立とうとしてくれて、自分からなにかを望んでくれる。


 ワガママを言ってくれるのが嬉しかった。

 家に帰りたくないとか、こっちの弁当にしようとか、そんなくだらないことでいい。


 いままでは僕と”   ”に手を引かれて与えられたもの、見せられた世界だけを享受していた。


 だからそんなレイカが自分で考えて、自分の意見を通してくれて、

僕にワガママなんて言ってくれると……正直かなりクるものがある。


 こんなことレイカに言ったら「いつまでも子ども扱いするな!」って、

殴られそうだから絶対に言わないんだけれども。


 僕はまた……レイカを好きになることができる、昔持っていた恋心を呼び起こすことができる。


 僕が好きになったのは五年前のレイカだ。

 けれども、清濁併せ飲んでお互いの間にまた必要なものを見つけることができた。


 いまと昔のレイカが一つになる。

 そして今日、お互いが一緒に歩んでいくパートナーだって認め合う。


 そんな心地良い御伽話のような時間を過ごして、

お互いの世界を彩って、それがいい結果をもたらしていく。


 そうして僕らはすれ違った五年間を克服し、新しいステージに進んでいくんだ。


 心の中で何度も、何度も反芻した。

 ……まるで自分にそう言い聞かせるように。


---


『だから纏場――あなたは、なにがあっても耐え続けなさい』


「っ!?」


 目覚める――と、そこはロケット公園の土管の中だった。

 小さな丘に土管を突っ込んだトンネル、それが昨日レイカと一緒に選んだ寝床。


 幸いにも雨が降ったり、蚊が湧いてたりもせず、肌寒くも暑くもなく、快適に過ごすことが出来た。

 もちろん二度とこんなところで寝たくはなかったけど。


 とは言っても、このままなにも変わらなければ、またここに泊まることになるかもしれない。

 そんな先の見えない未来に、一人笑いを浮かべる。


 ……一人?


 隣で寝ていたレイカの姿がない。


 ――僕は焦燥感に駆られ、土管の外へ出る。


 目に飛び込んでくる白の朝日に目を細めながら、レイカの姿を求めて辺りを見渡す、と。

 敢えなくその姿は見つかった。


 通称ロケット公園、その由来ともなったアスレチックの頂上で、

レイカは両腕を広げ、一身に陽の光を浴びていた。


 栗色の髪が光を浴びて、薄い茶色に乱反射する。

 そこにいると危ない、なんて考えながらも、その姿に魅入ってしまう。


 レイカがなにを考えて、そこに立とうとしたのかは分からない。


 朝とは始まり。

 昨日、レイカとは新しい関係を決意した。


 そして、それはレイカも同じだった、それが理由になるかは分からない。


 けれど、自然とその姿を、光を浴びるレイカを、

神々しいと思ってしまうのは、僕の感覚が麻痺しているからなのだろうか。


 レイカが手を下ろし、その姿は日常に帰る。

 眼下に視線を向けて僕の姿を認めると、薄く笑みを作り、手を振ってくれる。


 僕もつられて笑い、手を振る。


 ……なんとなく、幸せ。


 僕がいて、レイカがいる。


 当たり前が幸せに感じられる、そんなひと時。



 ……遠くから眺める、第三者視点の僕なんかいない。


 この風景を大切だと思い、幸せなワンシーンだと思いこもうとなんて、していない。


 いまこの瞬間を、思い出にしようと、躍起になってたりなんて、していない。

 

---


「大丈夫、レイカは匂わないよ」


「って、勝手に匂いなんて嗅がないでよ!馬鹿!」


 そういって鼻元に持ってきたレイカの手が振り払われる。


「まったく、朝から手を繋いだと思ったら、匂いを嗅ぎ始めるなんて失礼ね」


 そう言って繋いだ手を振り払うが、僕はその手を再び繋ぎ直す。


 レイカはそれをまた振り払おうとして……やめる。


「……もうっ、今度したら絶対繋がないかんね!」


 レイカは口元を少しむずっとさせて目線をそらす。


 僕はそれを見て少しニヤけてしまう。

 最近気づいたのだが、レイカは内心嬉しい時に口元をむずっとさせる。


 僕から近づこうとすると、憎まれ口を叩いたり、露骨に照れ隠しをしたりしようとする。

 けど、その口元を見れば、どう思ってるかわかってしまう。


 先ほどの朝日を浴びていたレイカの姿を思い出す。


 あの時はあんなに澄み渡った顔をしていたのに、

いまは僕と手を繋ぎ、文句を言いながらも、口元をむずむずさせている。


 ……なんかもう抱きしめたくなるな、こいつ。

 とはいえ、まだ朝も早い時間だ、流石にそれくらいのTPOは弁えなければ。


 時間にして朝の六時半、まだ人目のない時間帯だ。


 だからこそ住宅街の中を恥ずかしげもなく、手を繋いだりできるし、

少しばかりお互いの距離が近くても、誰の視線も浴びたりしない。


「ほら、レイカあの神社だ」


 そうして遠く僅かに見えてきた、小山の中腹にある社を指さした。


 ロケット公園の掲示板で見たビラ。


 そこには今夜、神社で夏祭りをするので、

手伝いのボランティアを募集するという内容が書き込まれていた。


 行くあてもない僕はそこでデートすることを思いつき、ノコノコとやって来たというわけだ。


「祭りをやるっても夜でしょ?時間なんてどうやって潰すの?」


「当然、準備の手伝いもする!」


「……マジ?」


 レイカは少し信じられないものを見るような目をする。


「でも、ごめん、ちょっとあの神社は……」


「いいからいいから!どうせ他にやることもないんだからっ!」


 そう言って強引に僕はレイカの手を引き、神社へと続く道を走り始める。


「ああ、もうわかったよ!」


 レイカもぎゅっと僕の手を握り返し、自分の足で前に進み始める。


 僕は嬉しくなって、ちょっと強めに握り返したけど、

徐々に強くなっていく握力勝負は、神社に到着する前に僕が白旗をあげることになった……


---


 石段を登りきって鳥居を潜る。

 そうして姿を見せた本殿は、子供の頃に見上げたよりは少しこじんまりとして見えた。


 それでも参道の脇に生い茂る、青々とした葉をつける木々の中央に、

どっしりとした佇まいで威容を放つその姿は、この辺りを束ねる長老の貫録を思わせる。


 子供の頃に自転車で遠出したことのある場所で、

レイカも一度だけ来たことがあるのだが、覚えているだろうか。


 レイカの方を見ると、一つ一つの景色を吟味するように、

記念碑や木々、高台から見える街の情景に目を輝かせていた。


 既に幾つかの夜店の格子が辺りに鎮座しており、気の早い人たちは組み立てに入っていた。


「あら、あんたレイカちゃんじゃないのかい?」


 少し離れたところから、着物を纏った婆さんがこちらにやってくる。


 レイカは小さくため息をついてから。


「ご無沙汰してます、おばーちゃん」


 レイカが不愛想に答えるが……雰囲気は堅くない。


「知り合い?」


「ああ、ちょっとね」


 そういって寄ってくる老婆はもう七十近いだろうか、

腰は少し曲がっているが、まだ鋭気はあるとばかりに目はバッチリと見開いていた。


「あん時よりは随分マシな顔になったもんだ。

それに……朝っぱらから見せつけてくれるねぇ」


 そういって僕とレイカの繋いだままの手を指差し、少し意地悪な顔でレイカを嗤う。


「っ……!ばーちゃんはいっつもそうして人のことからかって!!」


「あら、違わないんだろう?」


 僕の方を舐め回すような視線で品定めをする。


「な、なんですか……?」


「いんや、なんでもないさ」


 婆さんは町の風景に視線を移す。


「ほら、少しはマシになっただろう?」


「……そうだね」


 レイカは婆さんの声に同意する。

 二人の間にそれ以上の言葉はなかったが、それだけで必要なことは話終えたようだった。


 僕らの間に一陣の風が吹き抜け、葉擦れの音が一層あたりの静けさを感じさせる。


「さて、今日はこんな時間からいったいどうしたんだい?」


 改めて婆さんが聞く。

 するとレイカは視線で訴えてくる、ホントにやんの?って。


 ……なにやらレイカと婆さんに出鼻を挫かれたけど、やりたいことは変わらない。


「えっと、ここで祭りをやるって聞いたんですけど、手伝いってまだ募集してます?」


 少し下手に婆さんへ聞いてみる。


「もちろん!それは助かるけど、こんな時間からいいのかい?」


「はい!むしろお婆さんとレイカが知り合いなら、やり易いとも思いますし!」


 僕はできるだけ好青年に見えるよう、婆さんに笑顔を向けながら答える。

 婆さんはアゴをさすりながら、レイカの顔も伺いつつ。


「あいわかった!じゃあ取りあえず運び物を手伝ってくれるかね?」


「はい!」


 僕は社に戻る婆さんの後を追い、レイカの手を引く。


「……マジでやるんだ」


「そりゃそうだよ、男に二言はない!」


「ま、いいけどさ……」


 レイカは仕方ないなって顔をした後、少し真面目な顔になり。


「言っとくけど、諭史」


「ん?」


「あのばーちゃん、マジで容赦ないから」


「え……??」


---


「ほ~れ、坊ちゃん!後が使えてるから早くしぃ!」


 婆さんはシメ縄を鞭のようにしならせ、僕の尻をバチンバチン叩いてくる。


「痛い!痛いって!婆さん!」


「アンタ……言うことだけ言って、レイカちゃんより力無いってどういうこったい?」


 僕はやぐらを組む作業を手伝っていた。


 そもそも櫓って木で組み立てるのものだと思っていたが、

このご時世、アルミの組み立てセットがあって、説明書通りにやれば簡単にできあがるらしい。


 が……


 非力な僕は元となるステージの脚部を組む段階で、

よろけて倒れそうになり、婆ちゃんのお孫さん(中三)の力を借りながら組み立てていた。


「にーちゃん、雑魚過ぎない?」


「は、はは、キミ、力あるねぇ」


「普通だと思うけど……」


「ったく、こんなことなら提灯下げるほうに回らせた方が良かったかね?」


 婆ちゃんがアテが外れたと言わんばかりに溜息をつく。


「そ、それだけは勘弁してください!

僕だって一度やると言った手前、引き下がれません!」


「そうかい?それよりも危なっかしくて見てられないんだがねぇ」


「ほら坊主!手を貸すから早く組み立てちまおうぜ」


 横からなんか本職っぽいガタイのいい人に手を借りながら、

なんとか脚部を開き、天板を乗せることに成功する。


「あ、はい……ありがとうございます……!」


「ほら脚部はあとひとつだからこっちはもういい。

坊主はそこに転がってる、ステップの組み立てをやっといてくれ」


「はい!」


「坊主、返事は良いが櫓に上がるためのステップだぞ?

ボルトの絞めが弱くて足元崩すなんてこたぁ、やめてくれよな?」


「はい、必ずや!」


 僕は本職の方にビシッと敬礼を決める。

 ……が敬礼で上げた腕が、既に筋肉痛で悲鳴を上げ始めた。


 どんだけ力ないんだ、僕は。

 我ながら情けない。


 が、親方(勝手に名付けた)の期待に応えなくてはならない。

 ええと、ここに転がってる部分が足の踏み場でここが支柱だから……


 だけど、純粋にこういう作業は好きだ。


 みんなで一つのことを成し得ようと協力する、

知りもしない人達とこうやって繋がることができる、そういったことに打ち込めるのが純粋に楽しかった。


 レイカは近隣のお手伝いさん達と、石段の脇に飾る提灯を下げに行った。

 ……レイカが他の人と協力して、作業に従事できるかはちょっと心配だ。


 信用してないわけではないが、元々集団生活との馴染みが薄い生活をこれまで送っている。

 そんなレイカが衝突なく知らない人と上手くやれているか、それが気掛かりだった。


 木々の合間から差し込む日差しに、額から汗が伝う。


 レイカは脱水症状になってないだろうか。

 思えば昨日は土管の中での睡眠だった、寝づらくて睡眠不足になってはいないだろうか。


 地域住民の方々とケンカはしてないだろうか、ふらついて石段から落ちてないだろうか。


 自分で過保護かよ!ってツッコミを入れたくなるが、仕方ない。

 僕は子供の頃からずっとレイカの心配ばかりしてきたのだから。


 いまこうして心配し過ぎるくらいが、僕の中での普通だった。


「おい坊主!手が止まってるぞ!」


「はい!すみません!」


 親方に言われ、僕は組み立て図を眺め直す。


 うーん……わからん。


 なにごとも挑戦だ――そう思い立って親方の指示通り、

手順を間違えないことはもちろん、ボルトは腕が悲鳴を上げるほど強く絞めるのであった。


---


 途中、渡されたおにぎりを頬張ってまた数時間。

 降り注ぐ日の光にもやや赤みが混じり、カラスが鳴き始める頃。


「おおお!」


 僕は完成した櫓を見て、自然と声を上げていた。

 アルミの組み立て式とはいえ、完成したものを見ると壮観だ、すごい。


 僕の組み立てに関わった部分を軽く蹴り、

ガタついたりしないのを見て、また勝手に感動する。


 そもそもここに来たのは公園でレイカと「これからどうしようか」って話になり、

たまたま掲示板に張り付けてあった、夏祭りの予告と手伝い募集の張り紙を見たのがきっかけだった。


 だけど実際にやってみてよかった。

 もし文化祭の準備も最後まで終えていたら、これに近い気持ちが込み上げたのだろう。


 そういえば、と石段の方を覗き込んでレイカの姿を探す。

 そこにはちょうど同年代の女のコたちと、境内に上ってくるレイカの姿があった。


「諭史、そっちはどう?」


 レイカが髪を汗で額張り付かせ、やや息を上がらせながら笑顔でそう言った。

 それを見て僕は安心した、これなら下で上手くやれたんだな、って。


「いましがた完成したとこだよ、ほらあれ」


 僕はちょっと声にドヤりを乗せて、櫓の方に視線を向ける。


「おおーっ、いいじゃん」


 レイカはちょっと大袈裟にその成果を褒める。


 僕はそれに満足し、レイカのほうも労おうと……


「あれっ、お前、縁藤じゃん」


 後ろから野太い声がかかる。


 親方だった。


 レイカはその声の方を見るなり、一瞬呆けた顔をした後――


「もしかして、ジャハナか?」


「おうおう!久しぶりだなぁ!」


 ジャハナ?久しぶり?


「レイカ、そちらの親方は……?」


「ああ、こいつは夕霞中のクラスメートで謝花ジャハナ、当時良くつるんでた奴だよ」


「え、え??ってことはなに、親方って僕とタメ??」


「そうだよ、ってなにあんた謝花のこと親方って呼んでんの」


「縁藤、この坊主と知り合いか?」


「ハハッ、なに諭史!?あんた謝花に坊主って呼ばれてんの?」


 レイカとその後ろにいる女のコたちも笑いだす。


「そっちの後ろにいる子たちは……」


「ああ、こいつらも中学の後輩だよ」


 ちょっと笑いながらも三人の後輩たちは、僕に軽く会釈をする。


「それより謝花、あんたそのガタイといい、肌の焼け方といい、本当に大工やってんの?」


「ああ、まだ全然パシリみたいなことしかやってねぇけどな。

でもなんだかんだで現場は楽しいぜ、やってることがちゃんと形になるんだからよ」


 親か……じゃなくてジャハナさんは、仕事の話になった途端に饒舌になった。

 それを聞くレイカの顔も……とても楽しそうだ。


 僕はその光景に、じわりと暖かいものを感じる。


 中学時代、友人たちと疎遠になってしまったレイカ。

 自分にはやりたいことを見つけられなくて……と口にした時の寂しそうな顔。


 だけどレイカ、やっぱり好きなんじゃん。

 一緒に中学時代を過ごした友達のこと、すごい好きなんじゃん。


 だって顔に出てるよ。

 そんな生き生きとした顔、見たことない。最高の笑顔だ。


「おい縁藤、なんか坊主が泣きだしたぞ」


「えっ、おい諭史どうしたんだよ!?」


 レイカがちょっと昔みたいな荒っぽい、反抗期の時の口調に戻っている。


 僕はそれがまた、嬉しい。

 レイカは慌て、ジャハナさんは笑い、後輩たちは少し引いている。


 それでも構わない。


 これでよかった、本当によかった。

 レイカをここに連れて来たこと、決して間違いなんかじゃなかった。


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