赤い炎 Ⅲ
近くの川辺で今日もヘルオーラとエンディは魔法の練習をしていた。
「せいやっ!」
ヘルオーラが川の水を操り空に走らせる。
数秒は操れるがバシャッと音と共に川の流れの一部に戻る。
「上手くいかないなー。もっと髪伸びないかな?」
なんてエンディに向かい笑いながら言う。
エンディもクスリと笑い返す。
エルメリーの魔法使いは髪が長い人が多い。
魔法力が髪や目に蓄積されるからだと言われている。
当たり前だが成長していく事や鍛練により魔法力は強くも弱くも変化する。
逆に錬金術使いは髪が短い人も少なくない。
実験に邪魔だったり、あまり魔法力を必要としなかったりするからだ。
日が傾く頃、二人が家に辿り着くと家の前の空に人が浮かんでいる。
濃い紫色の長い髪に紫色の目の男性。
身長は高めで顔も無表情だが男らしく整っている。
その腕の中に気を失ってるフルエーラがいた。
「姉ちゃん!」
「ノヴァル!」
ヘルオーラは血の気の引いた顔になり、エンディは眉間に皺を寄せながらヘルオーラの前に立つ。
ノヴァルと呼ばれた青年はエンディの方に振り向く。
向けられた目は冷たいが複雑な色をしている。
「久々だな。もう帰ってこい。」
「私は帰らないぞ。」
「そう言う事くらい想定内だ。」
ノヴァルは嫌味たらしくニヒルな笑みを浮かべる。
「何の為にこの女を捕らえたと思う。」
「ノヴァル、貴様ー!」
エンディはノヴァルの企みに怒りを顕にする。
黒いはずのエンディの髪は真っ赤になり、目まで赤くなった。
エンディの手には赤い炎の玉が浮かぶ。
それをノヴァルに向かって投げたが強い風が吹いて消えてしまう。
風はそのままノヴァルを中心に竜巻のようになり消えた。
消え際にノヴァルが
「この女を無事に返して欲しいなら自分から帰って来るんだな。」
ノヴァルが消えた後、ヘルオーラは呆然としている。
エンディはヘルオーラを抱き締める。
「私が必ずフルエーラを救い出す。」
エンディの髪が赤いとか疑問は一杯あるはずだが、そんな質問はせずにヘルオーラはエンディを抱き返す。
「お願い、僕も一緒に行くよ。」
エンディは強く頷く。
フルエーラを助けてヘルオーラを全力で守ると心に決めて。