赤の炎 Ⅱ
ぼんやりとする視界の中に少女は暖かさを感じていた。
石鹸の香りと共に感じるお日様の匂い、美味しそうな食べ物の匂いを少女は今まで感じた事はなかった。
なんとも言えない安らぎを覚える。
「あっ!目が覚めた?」
少女が目を開けるとヘルオーラは少女を覗きこんでいた。
少女が目覚めたのが嬉しいようで満面の笑みで少女を見ていた。
少し少女の顔が赤くなったのを振り返ってしまったヘルオーラは知らない。
「姉ちゃーん!」
ヘルオーラがフルエーラを呼ぶ。
少女は咄嗟に飛び起きようとしたが肩の怪我の痛みで顔が苦痛に歪みベットに戻ってしまった。
下から上がってきたフルエーラは食事を持って来ていた。
「調子はどう?食べれそうかしら?」
そう言いながら少女の前に温かいスープをおいた。
恐る恐る一口食べると美味しかったらしく物凄い勢いで少女はスープを完食した。
ぽかーんとその様子を見守っていたフルエーラとヘルオーラ。
少女が一息ついた時にフルエーラが自己紹介を始める。
「私はフルエーラ、弟のヘルオーラよ。貴女のお名前は?」
笑顔で話すフルエーラに警戒心を抱きながらも味わった事のない家庭的な雰囲気に少女は名乗る。
「・・・エンディ。」
「エンディね。」
フルエーラに呼ばれ頷く。
「ねぇ、エンディ。うちの子になりなさい。」
「えー!」
「何を言ってる?!」
フルエーラの突拍子もない発言にヘルオーラとエンディは叫ぶ。
フルエーラはにこにこしながら平然と二人の対応をする。
「あんな大怪我よ、行く宛ないしでしょう?私は妹が出来るの大歓迎よ!」
唖然とする二人を他所にフルエーラは話をまとめてしまった。
強引な三人生活から暫くが経った。
エンディの怪我もほぼ完治し平和に暮らしていた。
フルエーラが主に家事をして、ヘルオーラとエンディがそれを手伝う。
ヘルオーラの魔法の練習にエンディが付き合い、汚れて帰ってもフルエーラが笑顔で迎える。
そんな平穏な日常が続くと信じていた。