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ある日死んだら女神様  作者: 肝太
ゴブリン
10/11

ゴブリンの村

お越しいただきありがとうございます。

【名前】ヘルガ

【種族】ゴブリン

【レベル】1

【称号】幼生

【クラス】ノーマル

【ジョブ】なし

【スキル】<真の右眼><インベントリ><鷹の目><打撃耐性・小><敏捷力UP・小><疾風突き>

【装備】祝福された革の胸当て(ダメージ20%減)、破毒のイヤリング(完全毒耐性)

【仲間】なし




地上に降り立つと、俺はゴブリンだった。

二本足で立っている俺がいる。

どうやら子供サイズではあるようだが、生まれたばかりというわけではないようだ。

あれ、種族によって始まる年齢が違うのか?

近くにアルテナがいるわけでもなく疑問をぶつけられる相手がいない。

ひとまずその疑問は飲み込んで、俺はあたりを見回した。

ここは・・また森?


せっかくなので、新しいスキル<鷹の目>を使ってみる。

鷹の目ははるか遠くまで見通すことができる。

草原で敵を探すときや砂漠でオアシスを探すときには便利かもしれない。

森では遮蔽物が多いが、もちろん森でも遠くの敵に狙いをつけるにはいいのかもしれない。

望遠鏡をのぞいているようなもので、近くのものが見えづらいため常時使用するには不向きなようだった。

そうやって辺りを見回してみると、遠くに集落があるのが見えた。

「あれ、ここって・・・。」

どうやらあの集落は俺がホーンラビットの時に訪れたゴブリンの集落のように見える。

「またずいぶん近くに転生したもんだなぁ。転生先ってみな転生前と近いところになるのかな。もしかしたら、スライムの時に訪れた場所もそんなに遠くないのかもしれないな。」


もう一つの新しいスキル<インベントリ>を使ってみる。

小さい異空間の穴が開き、その中には区切られたいくつかのマスが現れる。

その中のマスの一つに小さくなった神々の服が入っていた。

いつもどこになくなるのかと思ったら、こんなところに入っているのか。

俺は裸に胸当てをしただけの状態だったため、神々の服を着ることにした。よいしょっと引っ張りだすと服は元のサイズに戻った。

天上人のときのサイズより、ゴブリンの子のサイズの方が小さくぶかぶかになるかと思いきや、服はぴったりのサイズになるように着ると小さくなった。

便利だよな、胸当てにしても服にしても。

どうやら、一つのマスには同じ種類のアイテムならば重ね置きできるようだった。

これなら薬草100個とか持ってもかさばらないから楽だな。

ひととおり近くで拾った木の枝や小石を使って<インベントリ>のスキルを試すと、最後にはインベントリ内を全て捨てておいた。

なんとなく木の枝とか持ち歩くのはいやだったからだ。


準備がおわると、俺はゴブリンの集落に向かった。


「・・止マレ!」


途中、一匹のゴブリンが俺を呼び止めた。


「見ナイ顔ノ小僧ダナ。ドコカラ来タ?」

「・・・東の方から。」

俺は東を指差す。


「アッチニ同族ハ見ナイガ。ゴブリンノ住処ガアルノカ?オマエノ仲間ハドウシタ?」

「いないよ、そんなの」


「・・・ソレハ悪イコトヲ聞イタナ。」

「・・・・・・」


「許セヨ・・。」

なにを勘違いしたのか、ゴブリンは謝ってきた。


「小僧、名前ハ?」

「ヘルガだ。バーンと呼ぶのもいる。」


俺は目の前のゴブリンを<真の右眼>で確認する。

【名前】ギャン

【種族】ゴブリン

【レベル】18

【称号】村の兵士

【クラス】ノーマル

【ジョブ】戦士

【スキル】なし

【装備】棍棒、布の服


「ヘルガ、ココニキテ、コレカラドウスル気ダ?」

「俺には仲間がいない。ここのゴブリンが受け入れてくれるのなら、仲間に入りたい。」


「ソウカ。ソウイウコトナラ首長ニ聞ケ。案内シテヤロウ。」


ゴブリンのギャンの思わぬ申し出に、俺はついて行くことにした。

ここまではかなりトントン拍子だ。

集落内はテントが集まるのみで、しっかりとした建物はひとつもないようだった。そのテントだって、長い木の棒を何本か地面に打ち込んで、その棒の先に大きな布や毛皮の張り合わせが付いているような簡単なものだった。集落には周囲を守る柵もない。

集落内を歩いていると、他のゴブリンが「ドウシタ?」などと言いながら物珍しく寄って来る。

ギャンは「コレカラ首長ニオ会イスル」と言って、ズカズカと集落の真ん中の大きなテントに向かって歩いていった。

あそこが首長の住むテントだろう。そこにギャンの後ろを付いて、俺はそのテントに入った。


中には、大きな岩の上に熊かなんかの毛皮を置いて、その上に寝そべっている首長がいた。


【名前】ゴーラン

【種族】ゴブリン

【レベル】32

【称号】首長

【クラス】ハイ

【ジョブ】戦士

【スキル】<統率><ラッシュ>

【装備】ハンドアクス、アイアンアーマー、首長の首飾り


<ラッシュ>強烈な突撃攻撃を繰り出します。


首長は他のゴブリンより一回り大きく、赤黒い肌をしていた。

クラスがハイゴブリンだからノーマルゴブリンとは違うのだろう。

俺もハイゴブリンになったら、ああいった色になるのだろうか。


「ドウシタ?ギャン」

「首長!ヘルガトイウ子供ガ一匹村ニ迷イコンデキマシタ。仲間ハミナ死ンダヨウデス。」


「ソウカ。変ワッタ服ヲ着タ子ヨ、ドウシテオ前ダケ生キ残ッタ?」

首長がこちらを値踏みするように見つめる。


「たまたま運がよかっただけです。ここより東で人に襲われたとき、大人たちは俺のことを一番先に逃がしてくれました。他に逃げた者もいたけど、気づいたら逃げ延びれたのは俺だけになっていました。」

俺は土壇場で適当な嘘をつく。


「フム。オ前ハズイブン人間ミタイナ喋リ方ヲスルナ。ダガ分カッタ。オマエガ集落ノ一員トナルノヲ認メヨウ。狩リノ仕事ヲヤルカラ、俺ノタメシッカリ働クノダ。ギャン、後ハ任セタ。」

「ハッ!」


テントを出るとギャンは話しかけてきた。

「今日ハ首長ノ機嫌ガヨカッタナ。仕事マデモラエテ、オマエハ運ガイイ。最近狩リモ順調ダカラダナ。」

「そうか。ありがとうギャン。ところで俺は何をしたらいいんだ?」


「村ノ皆ノ食料トナル獲物ヲ狩ル。村ノ中ニハ身重ノメスヤ老イタモノ、ケガ人ナンカモイルカラナ。ソウイッタヤツラノ分マデ狩ル必要ガアル。」

「なるほど。」


「狩リグライヤッタコトアルダロウ?最初ノウチハ俺ガ面倒ミテヤル。ソノウチ、首長ヤヤハシュノヨウニ強クナッテ、村ヲ守ルンダ。」

「ヤハシュって?」


「村デ唯一ノ弓ノ使イ手ダ。器用ナ奴ダ。昨日モ真ッ赤デ大キイホーンラビットヲ狩ッテ、首長ニ献上シテイタ。首長ハ大変ゴキゲンダ。」

「それはすごい。」


(それはきっと俺だ。時間軸的には、あれからまだ1日しか時間が経ってないことになるのか。

・・あまり恨みはないが、俺の死を自慢げに言われるのは変な気分だな。)


「ソノウチオマエニモ家ヲ作ッテヤル。トリアエズシバラクハウチデ寝ロ。」

そういって、ギャンは自分のテントに招きいれてくれた。

ずいぶん面倒見のいいゴブリンだ。


「今日ハ見張リノ仕事ガアルカラ、俺ハ仕事ニ戻ル。夕方ニハ狩リニ行ッタ連中ガ食料ヲ持ッテ帰ッテクル。ソレマデ腹ガヘッテモ我慢シロ。」

「わかった。」


どうやらギャンのテントの中には食料はないようだった。

あるのは木でできた棍棒、木の先に大きな石をくくりつけただけの斧。毛皮の寝床、水の入った不恰好な木製の器が地べたに置いてあった。


「ほんと最低限の物しか持ってないな。」


俺はギャンのテントを出て、村の中を探検することにした。



「オイオマエ。首長ニ会ッテ、ドウナッタ?」

先ほど話しかけてきたゴブリンたちが聞いてくる。


「仲間に入れてくれることになった。狩りの仕事をもらった。これからよろしく頼む。」


「・・・ソウカ。ギャンガ面倒ミルナラスグ死ヌコトハナイダロウ。ヨカッタナ。」

「そうそう。ギャンはよくしてくれるよ」


ゴブリンたちの話を聞くとこうだ。

ゴブリンたちは、ここにずっと昔から住んでいる。どれぐらい前からなのかは、日付という感覚があまり無いから分からないらしい。


ここは俺を入れずにオス13匹、メス5匹が住んでいる。

オスの内訳は、王が1匹。主に戦う若い者が8匹。爺ゴブリンが1匹。オスの赤ん坊ゴブリンが1匹。片足を悪くしたゴブリンが1匹。片目と片腕を失くしたゴブリンが1匹。

メスの内訳は、妊娠しているメスが2匹。婆さんが1匹。身重でない若いメスも戦うらしく、残る2匹のメスは狩りにでているんだそうな。

結局のところ、戦える若い者は10匹。

それに俺を入れても11匹か。


戦えないものは武器を作ったりテントを建てたり毛皮をつなぎあわせたりして狩りに貢献するらしい。


戦えるもののうち1匹を村の見張りにおいて、1匹は村内で休憩。残る8匹は二手に分かれて狩りをするんだそうだ。

それで、夕方頃狩りから皆が帰ってきたら、獲物を分け合って食べる。

その後、昼に村内で休んでいた1匹と見張りの1匹が交代することになっているらしかった。

見張りは当番制で持ち回りらしい。

ニ交代制ってやつだな。

ゴブリンにしては文化的じゃないか。



楽しくなってきたぞ。

俺は生活を豊かにするために、この原始人みたいな生活をしているゴブリン共の村を発展させようという気になっていた。

そのためにはベテガンの協力がいるな。

なんとか、彼を仲間にして、ゴブリンの村に資材や武器を運べないだろうか。

しかし、ベテガンの家へはゴブリンの足でも1日はかかるだろう。このまま村からいなくなるのはマズイ。俺の立場はもちろんギャンの立場も。


その夕方、狩りから帰ってきたゴブリンの戦士たちに挨拶をしてまわり、獲物を少し分けてもらえた。

ここから北の森に鹿がたくさん住むところがあるらしかった。

今回もヤハシュが一番活躍したとのことで、多くの肉が彼に与えられた。

そして、一番いいところの肉は、こんがりと美味そうに焼かれ、何もしてない首長のもとへと届けられる。


俺は、その肉を運ぶのに連れそって、再度首長のテントへと入った。

ベテガンの家まで行って、ベテガンに協力してもらいたいが、そのためには村を空けなくてはならない。

仲間に入れてもらっておいて、すぐに黙って村を空けるのは得策ではない。

首長の許可がほしいので、俺は主張に再度会う機会をまっていた。




「首長!今日ノ獲物デス。ヤハシュガ仕留メマシタ。」

首長のテントに入るなり、肉を届ける戦士が言う。


「ソウカ。ヨクヤッタ。ヤハシュニハ話ガアル。後デ俺ノテントマデ来ルヨウ伝エテオケ。」

「ハッ!」


「オマエタチモヨクハタライタナ。サガッテイイゾ。」

首長は気をよくして、献上された鹿の肉にかじりついた。


俺はこのときを待っていた。

狩りも順調だ。少なくとも、俺の話を聞く余裕はあるはずだ。



「首長、大事なお話があります。」

「ン?昼間ノ小僧カ。・・ナンダ?言ッテミロ。」


「じつはよい武器がたくさん手に入りそうなのです。明日から数日、それを取りに行きたいと考えています。」

「・・ソレハドコニアル?」


「ここから数日東に行ったところです。」

「東トイウト、人間ドモノイルトコロダナ。ソコニ武器ガアルノカ?」


「はい。」

「人間共ヲ襲ッテ奪ウノカ?」


「いえ、行き倒れて死んだ冒険者の装備がずっと落ちたままになっています。私には扱いきれぬと思っておりましたが、首長や大人のゴブリンたちになら使いこなせるはずです。」

「ウム。ソレナラ、ギャント一緒ニ取リニ行ケ。」


「いえ、私だけでも十分かと思います。」

「ナラン!オマエダケダト死ヌカモシレン。オオキクナッテ俺ノタメニ働イテモラワネバナラン。ギャントイッショナラ死ヌコトハ多分ナイダロウ。ワカッタカ!!」


「はい。おっしゃるとおりにいたします。」

「サガレ。」


ん~。俺一人ならベテガンに話をつけるのもできそうだったが、ギャンと一緒となるとややこしい話になるな。

ベテガンがギャンを一刀両断にしてしまう。

ベテガンには途中まで護衛するようにと首長から言われたとかなんとか嘘をついて、途中で待っていてもらい、一人でベテガンの家に行くしかないか。


その夜、見張りを交代し鹿肉を食べ終わったギャンに明日東に行くことを相談した。


「・・ナニ?首長ガソウイッタノカ?

タシカニ人間ドモノ武器ハ欲シイガ東ハ危険ダゾ。

人間ドモニ見ツカッタラ殺サレルカモシレン。

タッタ2匹デ行クナド無謀ダ・・。」

「しかし首長の命令なんだ。」


「ムウ・・・。」


(ごめんよギャン。本当はほとんど俺のせいなんだけど。)


「行クトナッタラ、オマエニモ働イテモラウ。マズハ武器ダ。コノ棍棒カ斧カドチラカ好キナノヲヤロウ。」

「・・・・じゃあ、その棍棒をもらうよ。」


「ソレトソノ服デハ動キヅライダロウ。コノ服ニ着替エロ。」

ギャンは俺に布の腰巻をくれた。

とりあえず言われるがままに布の腰巻をし、神々の服はインベントリにしまっておく。


(うまくいけばベテガンにもっと良い装備をもらおう。)


「今夜ハコレデ寝ロ。」

そういって、ギャンは鹿の毛皮を投げてよこした。

俺はそれに包まると、うとうとと浅い眠りに入った。



そうして夜は更け、次の日を迎えた。

俺とギャンは朝早く起きると、昨日の鹿肉の余りを食べた。


俺の持っていくものは棍棒ぐらいだ。

ギャンは棍棒だけでなく、水筒を持っていくようだった。

俺がベテガンの家から持ち出してきたやつだ!

そういえば、あのときゴブリンから逃げるときに落としていた。

なるほど、これなら水の心配はしなくてもよさそうである。ベテガンの家までいけば川も近くに流れているしな。

持って行く荷物はそれ以外になく、俺たちはすぐに東へと出発した。

朝早すぎてあたりはまだ薄暗い。

しかし、早め早めに出発したほうがよいだろう。ベテガンの家につくのは夜になってしまうだろう。




俺とギャンは東へ進む。

道を知っている俺が先頭で、ギャンが後ろから付いてくるという構図だ。

俺は<鷹の目>で逐一先の獲物をチェックしながら、なるべく巨大蜘蛛ジャイアントスパイダーを避けて歩いていく。


途中、芋虫グリーンキャタピラ大蛇ダブルスネークダーククロウなどを狩った。

Lvは低いが、ゴブリンの体はホーンラビットよりも断然強かった。

棍棒で繰り出す<疾風突き>は、なかなか強力で、あのダブルスネークも一発で倒せるほどだった。


「驚イタ。強イジャナイカ。」

ギャンの俺を見る目が少し変わったかもしれない。


気をよくして、狩れそうなモンスターは避けずに狩っていった。

もちろんギャンの方が俺より強い。

敵はほとんど相手にならず、ギャンは敵の攻撃を一つも負うことはなかった。


そして夜も深まってきたころ。

とうとう、ベテガンの家に到着した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

魔物たちを倒したことによりレベルが上がります。


ヘルガ:Lv1→7

<攻撃力UP・小>を覚えました。

称号がハンター見習いに変わります。


ギャン:Lv18


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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