なんかお宝の気配なんですけど
「ところで、ここって隠しエリアって認識でいいですよね?」
加藤さんが何やら気になることを言い出し始めた。金田さんもそれに続く。
「そう言われればそうだな。3階層のメインフィールドはジャングルで、洞窟の奥クイーン・ビーの巣からもはずれて、上層のどこかと繋がってると思われる。別の出入り口と言ってもいいな。」
「となると、宝箱とかあるんじゃないです?」
「あ、宝箱って本当にあるんだ…。」
「そうだよ黒川さん。まぁフィールドで見つかるようなものは、ゴミしか入ってないけどね。」
「まぁ、かなりありえるな。しかも、隠しエリアとなるとレア度の高いものも期待できる。」
「そーねー。あー、この硝酸の湖の中の可能性とかー、普通にあるー。」
「あー…」
「何言ってるんだお前ら。」
佐藤さんが部屋…というか空洞の隅を指差す。
「入った時からあっただろ。」
「…マジ!?」「あらー。」「えっ、本当ですか?」「あるんだ…。」
どうやら佐藤さん以外の目は節穴らしい。いや、普通にあるな。なんで気づかなかったんだってぐらい。もろに宝箱だ。
「金箱だ!!俺初めて見た!!」「あー、しかも金箱ー。」「えっ金箱じゃないですか!?」
探索者のみなさんが、口々に『金箱』だと驚いている。金田さんなんて、もう目をキラキラさせて、文字通りお宝を見つけてテンションが上がっている。あ、宝箱まで走って行っちゃった。
「あの、金箱ってなんですか?」
「見た目で分かるのー。簡単に言えばー、SSR確定ー。」
「よく分かりました。」
霧島さんが、一発でよく分かる例を出してくれた。
「もう少し詳しく言うと、まぁSSR確定ではある。苔が生えているからちょっと分かりにくいけど、こうやって苔を取り除くとだな…ほら、金色だろう。見た目もちょっと違うんだ。アイテム識別IIがあれば、スキルで識別もできる。」
「本当ですね。キラキラしてる。」
「ただ、これはこのまま置いていくしかないな…。」
「えっなんでですか!?」
佐藤さんは、せっかく見つけたお宝を置いていくという。確かに、今は、高橋と山田を追うのが優先だけど、せっかくだから開けていけばいいのに。
「我々のメンツでは、開けられない。」
「…あっ!?」「そーねー。」「あー。。。」
えっそんな!?開けられないの!?
「えっ、そんな!?なんでですか!?」
「宝箱はその色と形で、レア度と難易度が変わるんだ。難易度が上がれば上がる程に、中身のレア度も上がっていく。これを開けるには、高度な探索技能に加えて、高度な解錠技能がいる。探索者でも訓練を積めばなんとかならないこともないが…金箱は通常の探索で見つけられる最高ランクなんだよ。」
「これを開けるには、シーフ系の職業か、冒険者系の職業、あるいは商人系の職業を持って、『探索技能I』と『解錠II』以上のスキルの両方が欲しい。」
「力技で開けてー開けれないこともないけどー。その場合は十中八九罠があるわねー。」
「あとは、外を破壊したのはいいけど、中身も壊れるパターンがありますね。」
なるほど。そういうものなのか。
「特に金箱は厳重に封がされているものだから、中身を取り出すのは難しいんだ。」
「かと言ってー、これを今から持って行くのはねー。」
「まぁ、また来た時に開ければいいさ。…その時まで残ってる保証はないけどな。」
…本当に置いていくしかないのか?…いや、私の第六感が「開けるべき」と囁く。さっき佐藤さんも言ってたじゃないか。私の直感は、スキルや称号の影響の可能性があるって。となれば、この直感を信じて今ここで開けるべきだ。何か手は…力付くで開ける?いや、駄目だ、危険すぎる?解錠を試す?スキルもないのに?…ん?スキル?待てよ?厳重に封が…封…封を開ける…中身を出す…開封する?
「…」
「どうしたの黒川さん?」
「封…開封…開ける…中身を出す…」
「黒川さんー?大丈夫ー?」
「…これって封されてるんですよね?」
「その通りだけどー?」
「ダンジョンで見つけた宝箱って、誰のものですか?」
そう、そこをクリアできれば、もしかして。
「まー、基本は第一発見者?この場合は佐藤さんですかね?」
「いや、こっちの探索を最初に主張したのは黒川さんだから、黒川さんかな?」
「私のものってことでいいですか?」
「…うーん。どうだろうか?俺は第一発見者の佐藤さんになるかと思うぜ?」
「だけど、それが一体どうしたんだい?今からこれは放棄して、戻るところだけど?」
「ならば、放棄した場合って、どうなります?」
「誰のでもないかな?また発見したら、その発見した人のものでいいかも。まぁ普通は、宝箱を見つけて放棄するってことがなかなかないんだけどね。木箱や銅箱なら普通に開けれるし。」
「じゃぁ、これ、私のものってことでいいですか?」
「別にいいけど…開けられねぇだろ?」
よし、これで私のものという認識になるはずだ。厳重に「入れ物に封じられている」のであれば…。私の第六感を信じろ。出し惜しみは無しだ!きっと、ここが使い所だったんだ。
「…パッケージング!開封II!」
カツン、コロコロ…。
宝箱の中身を、宝箱の隣に指定して『開封』したところ、金色をした丸い物体が、硬質な音を立てて床を転がった。
「「「「は(ー)?」」」」
…で、何これ?コレが中身?中身が金色キラキラじゃん。何これ。
金田「(金◯)」
霧島「あなた、それ口に出したら殺すわよ?」
金田「…なんでわかるんだよ。怖ぇよ。」
加藤「(いや、あなたの思考がわかりやすすぎるんですよ。)」
佐藤「(金田はもう当分はDランクかな…)」




